勇者失格宣告～魔王と静かに暮らしたい

第8話 リース、コシニア支店の準備を始める。

　試合後、バルテル伯爵邸でパーティーが行われる。今回は、ディートハルトと兵たちも参加している。ただし、兵たちは、二日酔いで試合に出たため、ディートハルトによって飲酒を禁じられる。

　兵たちは涙しながら食事に集中している。アーダルベルトはロックとリースに話しかける。

　「明日、物件をご覧になると聞いていますが間違えありませんか。」「はい、早く見てみたいと思います。」

　「では、娘のカリーナに案内させましょう。」「カリーナ・ド・バルテルです。よろしくお願いします。」

　「リースです。夫のロックとともどもよろしくお願いします。」「私は、私の名前のブランドで香水を扱っています。きっとお力になれると思います。」

　「店をお持ちなのですか。」「はい。２店舗でカリーナと言う香水を扱っています。」

　「素晴らしいですわ。ぜひお店を紹介してください。」「リース様にそう言っていただけて光栄です。」

リースとカリーナは明日、支店を出す予定の物件とカリーナの店を見て回ることになる。アーダルベルトがカリーナについて説明を加える。

　「娘は、小さいころから香水に興味があって１５歳の頃には自分で香水を開発するようになって、カリーナのブランドで香水を扱う店におろすようになりました。」

　「そして、売れた香水の代金で店を持つようになって、娘の香水は売り上げを伸ばして２件目の店を持つようになりました。」

　「すごいですね。カリーナさんの香水はブランドとして認知されているのですね。」

　「いや、親バカかもしれませんが娘は素晴らしいと思っています。」

アーダルベルトは、ロックに娘のカリーナを褒められて機嫌がいい。

　翌日、リースとカリーナは出かける。ロックもついて行こうとするとリースが言う。

　「お前様、商売は素人で主よね。」「そうだけど。リースも似たようなものじゃないか。」

　「我は経験が浅くても商売を成功させておる。お前様は留守番をしててください。」「分かったよ。ディートハルトと剣の訓練でもしているよ。」

リースは予定の物件はカリーナが見つけてきたのだと予想する。そして、カリーナは物件の持ち主から紹介料をもらう約束をしているだろう。カリーナがリースに聞く。

　「ロック様はどうしたのですか。」「あの者は留守番をしておる。商売は素人だからのう。」

カリーナは予定が狂う。彼女はロックを利用するつもりでいたが、リースを相手にしなくてはならなくなる。リースとカリーナを乗せた馬車は、一等地にある物件の前で止まる。

　物件の入り口には物件の持ち主が待っていた。

　「カリーナ様、おはようございます。」「おはよう。こちらがリース様です。」

　「お初にお目にかかります。ロック様はご一緒ではないのですか。」「はい、私１人です。」

　「そうですか。さっそく中をご覧ください。」「お願いします。」

　「どうです。街の中でも人通りの多い道に面していて日当たりも良好です。店の広さも十分だと思います。」「そうですね。この建物を買うことにしますわ。」

　「あの、借りるのではないのですか。この建物は３階建てですよ。」「ええ、存じています。」

　「カリーナ様、話が違いますよ。」「私に言われても。リース様この建物がいくらするかご存じですか。」「もちろん高額であることは知っています。これでどうでしょう。」

リースは、巨大なルビーを取り出す。しかもルビーの中には魔法陣が封じられている。カルーナはそれを見て驚いて言う。

　「これ、ルビーのタリスマンですわ。これは値段なんかつけられないわ。」「おつりはいりません。これと交換してください。」

　「タ、タリスマン、本物ですか。」「心配いりません。ロックの妻が偽物を出したりしませんよ。」

　「分かりました。建物をお譲りします。」「では手続きをしましょう。」

リースはその場で建物のオーナーになってしまう。こうして、２階のレストランと３階のエステサロンのオーナーになる。リースはレストランの従業員に挨拶してからエステサロンの従業員にも挨拶する。そこで指示があるまでこれまで通り営業するように説明して従業員が動揺しないようにする。

　リースとカリーナは昼になったので２階のレストランで食事をする。

　「カリーナ様、このレストランは、この街の中ではどうですか。」「そうですね。文句はありませんが普通ですね。」

　「これは、新しいメニューを加えて差別化を図らないよいけませんね。」「そうは言いますけど難しいですよ。」

　「何とかなりますわ。」

リースには異世界人のロックと中西の知識と言う秘密兵器があった。

　食事後、２人はカリーナの店に向かう。店の中は若い女性でにぎわっていた。リースがカリーナに聞く。

　「客層が若い女性に偏っていますね。」「そうなんです。お年を召したお客様にはこれまでのブランドが根強い人気を持っているのです。」

　「では、私の店に香水を置いていただけませんか。」「でも、売れないと思います。」

　「大丈夫です。私の店に合った香水を作ってもらいます。値段も少し高くしましょう。」「分かりました。扱う服のサンプルを貸してください。」

　「お願いします。」

リースはカリーナと商売のつながりを持つことに成功する。カルーナは新しい客層の獲得に力が入る。