第10話 エスリムの訓練始まる

 ロックが目覚めるとリースの寝顔がある。美しい寝顔だ。毎朝見ているが、見るたびに自分は幸せ者だと感じる。僕の嫁は最高だ。リースが目を開ける。

 「おはよう、リース。」「お前様は、毎朝、我の寝顔を見て飽きたりしないのか。」

 「飽きるわけないじゃないか。毎朝、幸せを感じているよ。」「ならよい。」

 「何か心配事でもあるの。」「お前様が我に飽きてしまうことが怖いのじゃ。」

 「僕は、いつもリースに感謝しているよ。僕を選んでくれてありがとうてね。」「そうか、うれしいぞ。」

ロックとリースは口づけをする。ロックは最近やっと自然にキスをできるようになった。それまでは緊張でカチコチになっていた。

 すでにログハウスに住み始めてから1カ月が経っている。ロックは相変わらず基礎体力の訓練を続けている。

 甲冑の重さは300キロになり、彼を追うソードボアは5匹に増えている。

 ロックは、上り坂をドドドドドドドドドーーーーーーと音を立てながら駆け上がる。彼を追い立てるソードボアも追いつけない。

 しかし、2時間も続けると疲れが出てくる。ロックのスピードが落とすとソードボアが長い牙で後ろから突き上げてくる。

 ロックは横に飛んだりして、牙をかわしていく。そのうち、かわす体力も無くなる。

 そして、5匹のソードボアにいたぶられて坂を転げ落ちていく。甲冑を着ていてもさすがに命がやばい。グラムがフールを呼ぶ。そして、いつものようにヒールで復活する。

 「婿殿、かなり私の出番が減りましたね。」「フールさんのおかげで生きていられます。」

ロックは心の底から感謝する。グラムは、このまま基礎体力の訓練を続けるか、別メニューを加えるか考える。そして昼食の時、グラムはエスリムに相談する。

 「婿殿はかなり仕上がってきている。そこで、攻撃回避の訓練を始めたいのだが頼めないか。」「そうですわね。胸を揉ませるというのはどうかしら。」

 「エスリム、まじめな話をしているんだ。」「私は真面目よ。胸を揉むのはご褒美、水の斬撃をかわして私の所まで来ないと胸は揉めないわ。」

話を聞いていたロックが正直に言う。

 「僕は別にエスリムさんの胸を揉みたくありませんよ。揉みたいのはリースの胸です。」「お前様、今から揉んでみるかの。」

 「いいえ、言い過ぎました。揉みたいですけど、そんな神聖なものに触れるなど・・・」「お前様は奥手じゃのう。」

 「婿殿、本番のためにも私の胸で訓練をするべきです。」「そうだよな。リースに失礼があつてもいけないし・・・」

グラムとエスリムはロックを説得しようと頑張る。フールとパイロウスは、ばかばかしい話についていけないと黙っている。

 エスリムは、粘ってロックに胸を揉むというやる気を起こさせることに成功する。

 午後になり新しいメニューの訓練が始まる。ロックは重さ300キロの甲冑を着て、東にある泉を目指す。途中、魔獣が出るが攻撃をかわさなくては泉にたどり着けない。

 泉にはエスリムがロックを待っていて、ロックが近づくと水の斬撃を振るって近づかせないようにする。ロックはそれをかわしてエスリムの胸を揉めば訓練達成である。

 ロックは、上り坂をドドドドドドドドドーーーーーーと音を立てながら駆け上がり、オルドビスの森に入る。森は木々が生い茂り暗いがロックはスピードを落とさない。

 彼は巧みに木を避けてスピードを落とさず、ドドドドドドドドドーーーーーーと音を立てながら駆けて行く。野生のソードボアが出てくる。

 ソードボアはロックに飛び掛かって行く。突然のことでかわすことが出来ず。ロックは右腕を振りソードボアを振り払う。

 ソードボアは弾き飛ばされ木を2本へし折り3本目の木にたたきつけられて動けなくなる。

 ロックは「僕はこんなに強かったかな。筋力がついているし偶然だよな。」と考える。彼は強くなっている自覚は全くない。

 それを見ていたパイロウスは、ぼそっと言う。

 「食材ゲットー」

彼は手際よく、ソードボアの血抜きをして炎の魔法で丸焼きにして、宙に浮かせてログハウスに運んでいく。

 ロックは、ドドドドドドドドドーーーーーーと駆けて行くと大木の上から巨大なストーンスネークが襲って来る。

 ストーンスネークは毒はないが岩のように硬いうろこでおおわれ剣が通用しない魔物で20メートル位まで成長し冒険者殺しの異名を持っている。

 ロックはストーンスネークの攻撃をかわすことに成功するが、ストーンスネークはロックを獲物に定める。ロックは森の中を全力で走って行く。ストーンスネークはそれについて行く。

 エスリムが待っている泉にたどり着くと、エスリムはロックに水の斬撃をを繰り出す。ロックは姿勢を低くして初撃をかわす。次の斬撃は飛び上がってかわす。

 ロックは飛び上がった勢いのまま、エスリムに迫る。しかし、水で弾き飛ばされる。ロックは丸い硬いのものに当たる。何かと確認すると八つ裂きにしたストーンスネークの死がいだった。

 水の斬撃は、剣が通用しないストーンスネークを易々と切り刻んだのだ。これは、ロックが着ている甲冑も難なく切り裂くだろう。

 ロックはエスリムの周りを走り始める。今の自分に出来ることはスピードを生かすことだけだと判断したのである。

 水の斬撃が来る。加速してかわす。さらに斬撃が来る、今度は飛び上がってかわす。ロックは斬撃を目で追うことはできるが体がついて行かない。

 今度は2つの斬撃が襲って来る。ロックは木の幹を蹴り、後にバク転してかわす。しかし。足が止まる。そこを水で打ちのめされて飛ばされる。ロックは木を3本なぎ倒して地面に転がる。

 エスリムが少し慌てた様子で言う。

 「やりすぎちゃった。フール、いるでしょ。婿殿が大変なの。」「今のは即死コースでしたよ。」

 「まさか死んでいないよね。」「死んでいたらヒールはできません。何とか生きていますよ。」

ロックは瀕死の重傷からフールのヒールで復活する。フールがロックとエスリムに言う。

 「今日はここまでにしましょうか。」「そうですね。エスリムさんに全く近づけませんでした。」「斬撃を見てから反応しては遅れるわよ。見ると同時に動くようにしなさい。」

エスリムの指導が入る。この時、茂みから男が出て来て泉の中に倒れ込む。ロックは慌てて助け出す。

 「フールさん、ヒールをお願いします。」「仕方ないですね。婿殿の頼みですから。」

フールは男にヒールをかける。男は元気になる。

 「助けてくれて、ありがとうございます。」「どうしたのですか、こんなところで。」

 「私は、バシュラール王国と言う所で召喚されたのですが高齢者はいらないということでこの森に捨てられたのです。」「なんでまだ勇者召喚をしているんだ。」

 「分かりません。森に来た時には3人だったのですが2人は大蛇の化け物に飲み込まれてしまいました。」「僕は蜂須賀六郎、ロックと呼んでください。」

 「私は橋本喜一はしもときいち、刀鍛冶をしていました。」「僕たちと一緒に来ませんか。」

 「ありがたい。このままでは魔物の餌か野垂れ死ぬだけですから。」「では戻りましょう。」

ロックは、バシュラール王国の勇者召喚が気にかかったが、同じ日本人に会えたことがうれしかった。

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