第9話 基礎体力訓練の開始
ロックが、目覚めるとリースが幸せそうな寝顔を見せている。彼は幸せを感じるが童貞を喪失したことを思い出し、理想と違ってリースが肉食だっため、涙が流れる。
もっと甘い雰囲気の中で童貞とさよならしたかったな。リースが目覚めるとロックに抱き着く。リースのいい香りがする。そして、昨夜のことを思い出し、腰を引く。
「お前様、今からもう1回やる?」「いえ、結構です。」
ロックはベットから飛び出る。リースはロックが奥手だと感じる。もっと積極的になってもいいのに・・・
ロックとリースが1階に降りるとリビング兼食堂にパイロウス、エスリム、グラム、フールが席に着いており、小人が食事を運んでいる。
「四天王の皆さん、おはよう。」「おはようございます。婿殿、リース様。」
グラムがロックに言う。
「婿殿の叫び声響いていましたよ。楽しい夜を過ごされたようですね。」「いやあ、初体験で思わず叫んでしまいました。」
リースが心配そうに言う。
「お前様、怖かったのか。」「そんなことないです。最高でした。」
「次からは、お前様からしてくれると嬉しいぞ。」
リースが顔を赤らめて上目遣いに言う。ロックは心臓を撃ち抜かれる。リースなんてかわいいんだー
「分かりました。努力します。」
初々しいカップルのやり取りに四天王は微笑んで見ている。朝食が終わるとロックはグラムに連れ出される。建物の東側の庭は斜面になっている。山を削ったのだろうか。
クラムはそこでロックに甲冑を渡す。グラムは軽々と持っていた。ロックはあまりの重さに落としてしまう。
「この甲冑何ですか。めちゃくちゃ重いですよ。」「あはは、50キロあるからな。」
「こんなもの着てどうするんですか。」「走るんだよ。ここに上り坂があるだろ。」「えっ。」
さらにグラムは使い魔を召喚する。大きなイノシシに長い牙が生えている魔獣である。
「こいつはソードボアだ。こいつは凶暴だから思いっきり走って逃げるんだぞ。」「ち、ちょっと基礎体力の訓練ですよね。」
「そうだ、初日だから軽くにしておこうな。」「・・・・・」
おい、これって死ぬよな、イノシシより早く走れるわけないだろ。それにあの甲冑は何なんだ。ロックはボー然とする。
婿殿は甲冑を着たことないのか。着せてやろう。ロックは無理やり甲冑を着せられる。
「では、始めるぞ。」「ま、待って。」
いきなり、ロックはソードボアに突き飛ばされる。甲冑を着ているため牙が刺さることはないが腹に大きな衝撃を受ける。
「だめだろ、ちゃんと走るんだ。」
ロックは必死に走る。後ろからソードボアにつっかれながら、命からがら。昼になって訓練が中止になる。この時にはロックは汗を絞り出しつくして干からび、体中あざだらけになっている。
「婿殿、ひどい有様だな。」「あんたがやったんでしょ。」
「おーい、フール来てくれ。婿殿が死にそうなんだ。」
フールがやって来る。ロックを見て言う。
「少しは強くなったようですね。ヒールしますよ。」
ロックのボロボロの体が治って行く。ロックは少し筋肉がついたように思う。フールがロックに質問する。
「どのような訓練をしたのですか。」「50キロの甲冑を着て、ソードボアに追われながら坂を走ったよ。」
「そんな軽いメニューでしたか。」「えっ。死にそうになったんだけれども。」
「婿殿は魔族の体になっているのですから、このくらいは楽にこなしてください。」「はあ。」
ロックには自覚がなかった。彼はリースの血を飲んで魔族となり、魔王の血を受けたことで並みの魔族では対抗できないほど強くなっていた。
昼食になり、リースがロックに質問する。
「お前様ならきっと強くなれると思いますが調子はどうですか。」「何とかやっているよ。」
「婿殿には魔王になっていただなくてはなりませんからな。」「魔王てどういうこと。」
「リース様が魔王をやめられたので、バシュラールに新たな魔王が必要なのです。」「それが僕なの。」
「その通りです。そのためには力を誇示してもらわなくてはなりません。」
ロックはえらいことになったと考える。魔王を倒そうとしていたのが、魔王にならなくてはならないのである。リースと静かな暮らしとは程遠い。
午後も同じ訓練が続けられる。ロックはフールに3回ヒールされる。そして、夕方には甲冑を着てソードボアから攻撃をぎりぎりで必死にかわしながら逃げ回れるようになる。
そして、翌日甲冑は重さ100キロになっていた。
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