第8話 オルドビスの森の生活開始
馬車の中でロックはリースに謝る。
「ごめんな、リース。大変なことに巻き込まれちゃって。」「良いのです。お前様のそばに居られれば幸せです。」
「ありがとう。愛しているよ。」「我もじゃ」
見張りの兵が咳払いをする。内心、「いちゃつきやがって、俺も彼女欲しいよ。でもオルドビスの森はごめんだな。」と思っているが顔には出さない。
兵とリースの目が合う。リースはすかさず微笑む。兵は顔を赤くする。
リースは思念で配下に指示を出していた。今、オルドビスの森の中で新築一戸建ての建設が行われていた。
馬車は夜通し進んで行く。馬車のスピードはかなり速い。1日以上走っただろうか、馬車は急に止まる。そして、ロックとリースは馬車から降ろされる。
目の前にはうっそうとした森がある。兵が、ロックとリースに命じる。
「さあ、行け。出てくるんじゃないぞ。」
2人は森に入って行く。森の中は日中でも暗い。ロックはぼやく。
「歩きづらいなー」「お前様、もう少しです。」
「何かあるの。」「ついてからのお楽しみです。」
30分ほど歩くと森が途切れて開ける。そこでは小人たちが建築作業をしている。すでに大きな2階建てのログハウスが完成しようとしている。
その中に眼鏡をかけ執事の服を着たイケメンがいた。イケメンはロックたちに気づくと挨拶をする。
「いらっしゃいませ。我が主アンネリース様、婿殿。」「我はリースとなった。リースと呼ぶが良い。」
「はっ、リース様。」「これは何なの、リース。」
「配下に思念で連絡して用意させておったのじゃ。」「すごいなー、こんな大きなログハウスが出来ている。」
「婿殿、私の使い魔の小人は優秀です。このくらいは問題ありません。」「執事さんすごいなー」
「私は四天王の1人、風神フールでございます。」「えっ、僕が倒したし、巨大なバッタだったよね。」
「はい、擬態してました。あのくらいで死んだりしないので心配なく。」「もしかして四天王生きている?」
「もちろん、誰も死んでいません。」「良かった。リースの部下を殺すのは嫌だから。」
「婿殿はお優しいですね。ログハウスが完成したようです。中をご覧ください。」「ありがとう。」
ロックとリースは中を見る1階は広いリビング兼食堂になっている。2階には10部屋あり、5部屋は来客用だそうだ。すると5部屋は住人用?
僕とリース、フールの他に住人がいることになるな。ロックが疑問に思っているとフールが説明してくれる。
「この家には私たち以外に炎神パイロウス、水神エスリム、土の王グラムが住むことになっております。」「それって、四天王が一緒なの。」
「はい、我々がお世話をさせていただきます。」
ロックはリースと静かに暮らせるか心配になる。先ほどまでオルドビスの森でどうなるかと悩んでいたことは頭から抜けている。
色黒の筋肉質の男がやって来る。彼はおおらかにリースとロックに言う。
「アンネリース様、婿殿よろしくなー」「我は今後リースと呼べ。」「分かりました。リース様。」
「ロックです。四天王の誰かですか。」「わしは、土の王グラムだ。前会った時はゴーレムだったからわからないだろう。」
「はい、全く分かりません。」
次に魚を担いだ多量のスライムを引き連れた色白美女が来る。ロックはこの人は分かった。
「水神エスリムさんですね。よろしくお願いします。」「婿殿、挨拶ありがとうございます。」
最後にマントと帽子をかぶった魔法使いのような男が頭上に巨大なイノシシの丸焼きを宙に浮かせながらやって来る。ロックが尋ねる。
「もしかして、炎神パイロウスさんですか。」「いかにも、婿殿は洞察力があるな。」
ロックは4人目だから炎神パイロウスと言っただけだった。ちなみに炎神パイロウスは炎のオオカミとして、水神エスリムは巨大なサンショウウオとして勇者パーティーに対峙していた。
夕食は、エスリムの魚とパイロウスの丸焼きのイノシシが料理され出された。料理したのは小人たちだった。
夕食が終わるとフールが仕切って明日の予定を決める。ロックはグラムから基礎体力の訓練を受けることになる。
それが終わるとリースがロックを風呂に誘う。
「お前様一緒に風呂に入るぞ。」「えー一緒!」
この世界風呂があったんだ。それよりリースと一緒なんてどうすればいいの。リースがロックの手を引っ張って言う。
「悩んでいないで行くぞ。」「あれー」
ロックはリースに引っ張られていく。四天王は微笑む。リースが楽しそうだったからである。
ロックとリースは風呂に入る。リースがロックの背中を洗ってくれる。リースの手が体の前に回って来る。ロックは慌てて言う。
「前は自分で洗えるから。」「そお、私は全身を洗ってね。」
思わず血を吐きそうになる。全身、リースの腕、リースの足、リースの背中、これ以上は・・・・・ロックは目をつむって洗うことにする。リースがロックを軽くビンタする。
ロックは思わず目を開く、彼は顔をそむける。リースが聞く。
「どうだった。見えたでしょ。」「はい、素敵でした。」
「遠慮しなくても見ればいいのよ。」「それでは、僕の精神力が持ちません。」
ロックはフラフラになって風呂を出る。リースは満面の笑みを浮かべている。しかし、ロックの苦行はこれからだった。部屋が5つということはロックはリースと同じ部屋なのである。
ロックとリースの部屋からは「あれーーーー」と男の叫び声が響く。
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