第7話 勇者失格
ニコル王が大声で怒鳴る。
「「「これは何事かー、なぜ魔王アンネリースを連れている!」」」
ニコル王が激怒して顔を赤くして血管が切れそうだ。ロックはなぜばれたと思う。ディートハルト、ヨーゼフ、アデリナ、ティアナは、驚いて言葉を失う。アンネリースは平然としている。
ロックが事情を話す。
「僕は魔王にひと目惚れしたのです。命がけで口説いて妻にしました。彼女が魔王と言うことは隠して、倒したことにして、静かに暮らそうと考えていました。」
「アンネリースと妻にーーー、何とうらやましい、いや破廉恥な。勇者は縛り首。アンネリースは地下牢に幽閉する。」
「あなた、なぜ魔王を殺さないのですか。」「それはだな。そうだ、人質にするためだ。」
アンネリースがゾフィーに言う。
「ゾフィー様、そこの豚は私の肖像画を寝室に持ち込んで夜な夜な私に劣情を抱いていたのです。」
「あなた、あの肖像画を寝室に持ち込んだの。」「いや、それは・・・」
ゾフィーはパンパンと手を叩くすると執事がやって来る。
「奥様、いかがされましたか。」「ニコルの寝室にある。アンネリースの肖像画を持って来てちょうだい。」
「お前、そこまでしなくてもいいだろ。」
ゾフィーはニコルを睨みつける。ニコルは小さくなる。一同は突然始まった夫婦げんかに唖然となる。執事が肖像画を持って戻って来る。肖像画には白い服を着たアンネリースが描かれている。
ゾフィーはニコルに言う。
「これを見て欲情していたのですか。」「は、はい。すみません。」
ゾフィーは肖像画を踏みつけて壊し、執事に捨てさせる。
「あーあ」
ニコルとロックがハモる。アンネリースがゾフィーに言う。
「そこの豚も縛り首にしますか。」「縛り首になるのはあなたです。あなたが縛り首になれば魔王を討伐したことになります。」
「我は魔王をやめているぞ。今はロックの妻じゃ。」「それは屁理屈です。」
ディートハルトが助け舟を出す。
「魔王はいなくなったので、ロックとアンネリースは縛り首にする必要はないと思います。」
アリソンとセリアはここぞとばかりに母にせがむ。
「ディートハルト様は正しいと思います。大きな心で考えてください。」「分かりました。まず、魔王は名を捨てなさい。」
「了承した。アンネリース・アレクサンダー・フォン・ヴァルタースハウゼンは名乗らぬ。今からリースじゃ。」「勇者ロック、あなたの罪は重いです。まず勇者失格とします。」
「分かりました。」「そして2人をオルドビスの森に追放します。オルドビスの森から出ることは許されません。」
「分かりました。」「ロック、オルドビスの森を知っているの。」
「知らないよ。」「ゾフィー様、オルドビスの森はあんまりです。せめて国外追放にしてください。」
「勇者の罪は重いのですよ。これでも寛大な処置です。」
ティアナの懇願は聞き入れられない。リースは平然としている。ロックは気になりティアナに聞く。
「オルドビスの森とは、どういう所なの。」「魔境よ。人が近づくことはないわ。」「俺らでも入ったら生きて出て来れるかわからんところだ。」
ヨーゼフが補足説明する。ロックはますいことになったと思う。リースを守って生きて行かなくてはならないのだ。リースが微笑みながらロックと手をつなぐ。
リースの柔らかい手が「何も心配いらない」と言っているように感じる。
こうしてロックとリースは馬車に乗せられて騎士団の監視付きでオルドビスの森へ送られることになる。
ニコル王は隠居することになり、ゾフィー女王が誕生する。ディートハルト、ヨーゼフ、アデリナ、ティアナは、おとがめなくしばらく城に滞在することになる。
これは、アリソンとセリアの母へのおねだりが効いていた。
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