第3話 俺の嫁

 アンネリースは、最後まで戦わずにあがいたロックに興味を持つ。この者はこれまでの人間たちとは違う。この者なら我を退屈な日々という泥沼から引き上げてくれたのだろうか。

 いや、所詮、人間は短命だ一緒に過ごせるのは一瞬だろう。どちらにしろヒールしても助からぬ・・・・・

 この者を魔族にしてしまえばどうだ。我と永劫ともいえる時を過ごすことが出る。2人で退屈な日々を過ごすのか・・・・・

 違う。この者は我を幸せにすると言っていた。伴侶として生きていく悪くないかもしれない。

 アンネリースは、決断すると右手の人差し指を牙で噛みあふれる自分の血を口に含む。指のキズはすぐに消える。

 彼女は口に含んだ血を口移しでロックに飲ませる。ロックは薄れゆく意識の中で柔らかいものが口に触れるのを感じる。

 彼は、「これは僕のファーストキス。それもアンネリースとだ。死ぬ前に良いことがあった。」と考え失神する。

 アンネリースは、ロックに血を飲ませ終わると彼女の血が彼の体を作り変えることを待つ。そして、彼女が右手を横に振るとロックに刺さっていた数十本の剣が消え、全身から血が噴き出す。

 しかし、出血はすぐに止まり、傷口が消え始める。ロックの体が魔族化した証拠だ。しばらくするとロックは目を覚ます。アンネリースが声をかける。

 「気分はどお。」「膝枕をして欲しい気分です。」

 「お前様は、我の膝を枕にしたいのか。」「はい、男のロマンです。」「よくわからんが良かろう。」

アンネリースは正座するとロックの頭を膝に乗せる。ロックは幸せを感じる。アンネリースの膝は柔らかくていい香りがする。

 「これでいいのか。」「これがいいのです。」

 「我は、お前様の申し出を受けることにした。伴侶となろう。」「いやったぞー、僕は幸せ者だー」

 「嬉しそうだな。これからどうする。」「アンネリースと静かに暮らします。」

 「そうはいかんだろ。お前様は勇者で王に勅命を受けて来たのだろ。」「そうでした。仲間もいるし・・・・、リース、リースと呼んでもいいかな。」

 「お前様のすきなように呼べばよい。」「リース、魔王は倒したことにして、リースは助けたことにしよう。」

 「お前様、そんな話が通ると思っているのか。」「きっと大丈夫だよ。それより、さっきから僕のことお前様と呼んでいるけどロックでいいよ。」

 「ロック、伴侶になったのだ。ロックはお前様だ。」「そお、まーいいか。」

 「お前様、起きられるか。」「名残惜しいけど、大丈夫立てるよ。」

ロックは立ち上がる。アンネリースも横に立つ。

 「我は、ただの魔族のリースで通すぞ。」「分かった。まずは仲間を説得するよ。」

2人は魔王の部屋から出る。するとティアナがロックに抱き着く。

 「ロック、生きていた。うれしいよう。」

彼女は涙を流しながら言う。彼女にアンネリースの姿は見えていない。ロックしか見ていないのだ。

 「お前様、この馴れ馴れしい女はなんじゃ。」「彼女は、ティアナ、ヒーラーだよ。」

 「ロック、この女はなーあーに?」「リース、僕の嫁だよ。」

ロックの言葉にティアナは凍り付く。私、プロポーズしたわよね。ロックは考えてくれると言った。嫁?嫁って結婚したの。いつ・・・・・

 「ロック、私のプロポーズは何だったの。」「ごめん、運命の出会いがあったんだ。」

 「この女、魔族よね。」「種族は関係ないよ。僕は懸命にプロポーズして受け入れられたんだ。」「そうなんだ・・・」

ティアナはショックを受ける。3人は魔王城の外に向かって歩いて行く。ティアナの足取りはフラフラである。


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