第5話 電話

『明日も先輩に会えるの楽しみにしてます!』

『あと、「木下さん」じゃなくて美咲って読んでください!名字呼び好きじゃなくて』

『あ、夜遅くにすみません!おやすみなさい!』


「木下さんって、こんな積極的な人だったっけ??」


 俺の記憶では木下美咲の印象は内気だったため結構意外だった。

 綾華と恵以外は大体名字呼び捨てか、さん付けにしていたため、急に誰かを下の名前で呼び捨てするのはむず痒さがあるが、お願いされたら仕方ない。


『あー、ごめん!昨日眠たくてすぐ寝ちゃった笑

 名字呼び嫌だったんだね、知らなかった。

 じゃあ次から美咲って呼ぶことにするね〜』


「送信、っと…ってうお!?」


 秒速で既読がついた。

 慌ててトーク画面を閉じる。


 ピロン♪


 美咲からの返信かと思って、謎にオドオドとしながらトーク画面を見ると


『ちょっと今から電話できる?』


 綾華だった。

 謎の安堵感を感じながら返信する。


『おう、俺もちょっと話したいことあったからちょうどいいわ』


 返信をしてからすぐ電話がかかってくるため、応答ボタンを押して、すぐにスピーカーにして携帯をテーブルに置く。


『やっほー、さっきぶり!』

「おう、話したいことってなに?」

『少しぐらい雑談してから本題入ってもいいじゃん、そんなに急かさなくても』

「へいへい、雑談の内容でもあるんですか」

『一切考えてないわね』

「なんやねん!」

『あはは、じゃあまあ、本題に入るんだけど…』


『悠斗、木下さんと連絡先交換したって聞いたんだけど、そうなの?』


 若干、綾華の声のトーンが低くなる。

 別に俺が後輩と連絡先を交換することは珍しくないと思う。実際、仲のいい後輩は多いし、綾華もそのことは重々承知しているはずだ。

 

 なのになんで、若干責められるような口調なんだ…?


「う、うん。昨日急に美咲から連絡が来たからね」

『ちょ、ちょっとあんた、いつの間に木下さんのこと下の名前で呼ぶほどの仲になったのよ!?』

「いや俺が人をなんて呼ぼうが勝手だろ」

『…自分が彼女持ちなことを理解した上での発言?』

「それ言ったら、お前のことも下の名前で呼んでるじゃねぇか」

『それは恵が私たちの仲を容認してくれた上で、でしょ?』

「た、確かになぁ…」


 だから、責めているような発言をしたってわけか。


『あんたねぇ、後輩と仲良いのはいいことだし、部活が吹奏楽である以上しょうがないことだとしても、女子との関わり方は考えたほうがいいわよ』

「そんなひどい関わり方してるか?俺」

『逆よ。

 悠斗はすごく後輩のことを見てあげてるし、頼れる本当にいい先輩。ただ、だからこそ好きになっちゃうような子もいるのよ。人によってはその行動を「思わせぶり」って感じる人もいると思う。』



『その上、あなたたちは付き合ってることを、後輩には知られないようにしてるんだから、もっとタチが悪いと思われるのよ』

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ヤンデレ後輩が噂を流し続けるせいで、俺の高校生活がピンチです ゆうくん @yuchan8

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