第4話 悠斗と恵
「あー、やっと終わったぁ」
部活が終わり、あくびをしながら恵と2人で駅までの道を歩く。
「そういえば、なんで今日遅刻してきたの?夜更かしでもした?」
「いやー、夜更かしってわけじゃないけどねー。
昨日夜中に後輩からメッセージが来て、返したのが12時前だったくらいだよ」
「後輩からメッセージ?」
「そうそう、木下さんが急にね」
「ええ!綾ちゃんが唯一連絡先交換できてない美咲ちゃんから!?」
「え、そうなのか?」
綾華は部長なだけあって、人脈がとても広い。
大体の人と連絡先が繋がっており、困ったら綾華に聞いておけば大体解決するほどだ。
そんな綾華ですら、木下さんと連絡先が交換できてないとは流石に驚きだ。
「もしかしたら、美咲ちゃんは悠くんのこと好きなのかもね!」
「あははー、んなわけないだろ。
ただ最近合奏で教える機会が多かったから、コンクールの結果を気遣ってくれただけだと思うわ」
「ふうん、だといいけどねぇ…」
「ま、俺には大好きな彼女がいるから関係ないな!」
「えへへ、よそ見したらダメだからね!」
「もっちろーん」
そうして、駅の前まで歩き着いた。
俺は徒歩通学だが、恵は地下鉄通学だからいつもここで別れることになる。
「じゃ、また明日な」
「うん!もう遅刻しちゃダメだからね!」
「わかったって…気をつけるから」
「よろしい!じゃーねー!」
◇◆◇◆
私は地下鉄のホームで彼のことを思い出していた。
さっきの話が気になる。
悠くんはああ言ってたけど、きっと美咲ちゃんは悠くんのことが好きだ。
このことにモヤっとしてしまうあたり、私はもう悠くんのことが好きになっているのだろう。
「はーあ、こんな気持ちになるくらいなら、付き合わなきゃよかったかな…」
数日前までは、確かに恋愛感情などなかった。
付き合ったのも、彼氏を作ってみたいという気持ちがあったからというのが大きい。
もちろん、彼のことをもっと知りたいと思ったからというのもあり、決して誰でもよかったわけではないが。
でも、好きになってしまったんだから、しょうがない。
今は私の彼氏なんだ。
「今は」じゃなくて「これからも」にするためにも、私は彼の気を引き続けなければならないな。
「…よし。」
◇◆◇◆
家に帰りつき、スマホを確認すると
「あー、そういえば忘れてたな」
木下さんからのメッセージが数件届いていた。
それに加えて、綾華からも恵からもメッセージが来ていた。
「こりゃ、もはやハーレムだな…」
なんて、他人事のように呟いていた。
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