第6話 最良のエンドロール

(一応、僕が証人として細田ほそだに付き添うことになったけど、これって、探偵の仕事ではなくないか? まぁ、二人の都合が付かなかったから、仕方ないんだけど……)


「自分がしてきたことのツケとはいえ、緊張します。最悪、殴られることは想定しておくべきでしょうか?」


「それは、白鳥しらとりさんの旦那次第だけど、細田は自身のSNSで、ファンに対する謝罪文を挙げたし、責任をとって、会社も辞職したんだろう?」


「はい、今や無職の貧乏人です。だけど、今時はフリーライターでも稼げますし、写真撮影の技術を磨けば、フリーのカメラマンとしても働けるはずなので、どうにかして、生活費を稼ぎます」


「以前と心持ちが変わったな。僕は、君のリスタートに興味はないけど......っと、着いたな。ここか」


 細田がインターフォンを押し、以下のように尋ねる。 


「細田と申します。穂奈実ほなみさんは、在宅ですか?」 


すると、彼女からの返答が響いた。


「は〜い、今開けます。夫はリビングに居ますので、上がって下さい」


      『お邪魔します』


 家の廊下を歩き、リビングに到着した時、細田と穂奈実の旦那が対面する———


「この度は、穂奈実さんの名誉を傷つける記事を作成してしまい、誠に申し訳ありませんでした」


「なるほど、貴方が例の記事を......本当なら、何かしらの形で報復をしたいという想いがありますが、止めておきます」


(予想外だ。僕はてっきり、細田が殴られるか怒鳴り散らされると想定していたからな。)

「自分が聞くのもあれですが、何故?」


「意味が無いからです。恨みで仕返しをしても、巡り巡って、わたし達のところへ帰って来てしまう。それよりわたしは、傷ついた彼女に寄り添って、愛を深める方を選びます」


「貴方......やっぱり、素敵な人ね」 


「いやいや、人を思いやれる穂奈実の方が、ずっと素敵だよ!」 


 夫婦のイチャイチャを間近で見せつけられ、若干複雑な気分になりながらも、用事を終えた度来わたらいと細田は、静かにその場を去った。


         ***


 穂奈宅訪問から、数週間が経過したある日。某病院にて——


「みなさ〜ん、こんにちは! 私は元アイドル、現ソロアーティストのほなみんこと、白鳥穂奈実で〜す☆そして、お次はこの方!」


「はい! 元アイドルで、現在は一般人のみほぽんこと、相田あいだ美保みほと申しま〜す。この二人の関係は、ほなみんが先輩で、うちが後輩、かな?」


「うんうん、合ってると思う! アイドル時代は、共演が少なかったから......って、いけない!話がそれちゃった。そろそろ本題に入らないと〜」


「分かりました! うちに任せて下さい。今日は、皆さんに、クラウドファンディングのお願いをしたいんです。あちらにいらっしゃる、細田 真希まきちゃんは、白血病を患っているため、現在治療中です」


「ですが、治療費が不足しているため、皆さんにご協力して頂きたいのです。どうか、よろしくお願いします。詳細は、ここに表示されているバーコードからチェックしてね! 以上、ほなみんと〜」


「みほぽんからのお知らせでした! ばいばい。」


(ほなみんが協力することは知っていたけど、まさか、なかじーの元推し、みほぽんまで協力してくれるなんて、予想外だったな。てか、二人の共演を生で見れるなんて、俺達は幸運なのかもな。)


「推しと推しの共演、ダメだ。幸せすぎて、鼻血が......」


「おい、なかじー! しっかりしろ〜」 


「あらら、大丈夫ですか? 私、ティッシュを持ってるので、どうぞ使って下さい」


「ほ、ほなみん。ありがとうございます」


「それと、あなた方に対する感謝の印として、これを......どうぞ!」


「なかじーは今手が離せないので、代表して俺が貰います。って、ソロライブのチケット!? しかも、最前列だ」


「はい。お二人には、近くで見やすい席を確保しました。後の二枚は......度来さんと、細田さんに渡して下さい。彼らには、後方の席を確保しました。私のライブに興味があるか分からなかったので、強要はしないようにしたくて......」


「ふぁ〜、良いな〜! うちはもう直ぐ日本を出るから見られないけど、今度、都合が合いそうな時に招待してくれますか?」


「勿論だよ! みほぽんも是非来てね〜」


「わ〜い、ほなみん、ありがとうございます!」


 その後、招待されたライブ会場にて、細田がほなみんのファンになったことは、また別の話———


            完

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相互救済 一ノ瀬 夜月 @itinose-yozuki

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