第40話◇優奈の気持ち 小雪の強さ◇

 いやぁ、素晴らしかった。小雪はちるるに扮して自分の殻を破るためにフィーバーし、優奈もそれに追従して俺にサービスしてくれた。


 妖精さんの作り出した特殊な空間だったとはいえ、彼女達の本質が変わるわけではないから、アレは二人の心からの奉仕ということになる。


 具体的にどういう事が起こったのかは、エッチすぎるので省略するとしよう。


 小雪こゆきによる疑似バーチャル配信プレイは大成功を収め、妖精さんは大いに満足してくれたらしい。


 だったら最後のセックスまでさせてくれたっていいようなもんだが、残念ながら空間が時間切れとなって終息した。

 

 次回は絶対2人の処女をもらい受けるからな。だがここまでいけば普通に受け入れてもらえそうなもんである。


「ふにゃ?」

「あ、あれ? 私、きゃっ、な、なんでこんな格好をっ」


 犬耳メイドコスチュームを着たままだった2人が正気に戻る。


 ピコピコと動いていた耳や尻尾はたらんと垂れ下がり、普通のアクセサリーと化している。


 そう、妖精さん空間では犬耳カチューシャは本物のケモミミとなり、尻尾は生きているかのようにフリフリと動いていたのだ。


 しかも根元を掴むと可愛い声で……。おっと、思い出したら再び滾ってしまいそうになる。


「いや、お礼のコスチューム、たっぷり堪能させてもらったよ」

「ふぇっ⁉ わ、私、何をしたんですか」

優奈ゆうなお姉ちゃん、小雪こゆき達、コスプレしてダンス踊った。優奈ゆうなお姉ちゃん、恥ずかしがりながらダンスする姿、とっても可愛かった」

「あ、そっか……そういえばそうだった。って、私、スパッツ履いてないっ⁉ っていうことは、せ、先輩ッ⁉」

「いやぁ、結構なお点前てまえでした」

「は、うううっ」

優奈ゆうなお姉ちゃんの生パンツ、とっても可愛かった。後で動画見よう」

「ろ、録画してたのっ⁉ っていうか生パンツってっ!」


 どうやら妖精さん空間での出来事はコスプレダンスという記憶とすり替わっているようだ。下着を見られた、あるいは見せたという事実も都合の良い記憶にすり替わっている。


 それでも相当に恥ずかしがったらしく、部屋の隅っこで小さくうずくまってしまった。


「亮二お兄ちゃん、小雪こゆき達のお礼、喜んでくれた?」

「ああ、とっても可愛かったよ。また見せてくれるか?」

「うんっ。小雪こゆき、お兄ちゃんならいつでも大歓迎だよ」


 言っておくがここで見せて欲しいっていうのはパンツの話ではなくダンスの話だ。勘違いしないようにな。


 勘違いしないようにな!!


「こ、小雪こゆき……先輩に随分気を許したんだね」

「うん。小雪こゆき、亮二お兄ちゃんのこと、好き。恋人になりたい。お兄ちゃん、さっきの話、本当に叶えてくれる?」

「さっきの話?」


 記憶は書き換わっている筈だが、どんな風になっているのだろうか。

 

小雪こゆきのこと、彩葉ちゃんや初音お姉ちゃんと一緒に恋人にしてくれるって」

「ああそのことか。もちろん大丈夫だぞ。小雪こゆきなら皆も大歓迎だろう」


「えっ⁉ こ、小雪こゆきなにを言っているのっ⁉ 恋人は普通1人でしょ?」

優奈ゆうなお姉ちゃんこそ何言ってるの? 亮二お兄ちゃんくらい素敵な男の人なら、だよね?」


「あ……そ、そう、そうだよね。そんな当たり前のこと、どうして分からなかったんだろう?」

「それは、多分小雪こゆき達が恋に免疫がないからだと思う」


 やはり、種付けで洗脳した訳でもないのに彼女達の常識が書き換わっている。


 これは新しい現象だ。俺のパワーアップによるものか、あるいは妖精さんの都合なのか……?


「まあまあ。いいじゃないか。俺は小雪こゆき大歓迎だぞ。優奈ゆうなはどうする?」

「わ、私ですか⁉」

小雪こゆき優奈ゆうなお姉ちゃんと一緒にハーレムやりたい」

「そ、そんなこと言っても」


 どうやら記憶の書き換えができている部分と今までの常識がせめぎ合って混乱しているようだ。

 

 この辺の書き換え具合は本人の理性とか、意志力とかの問題なのかもしれないな。


 小雪こゆきの場合、もともと意志が弱くて他人に依存しやすい性格の影響で、今回の事件で依存対象が主人公から俺に変わったのだと思われる。


 しかし、その反面思い込みの強い性格は、一度依存対象を固定するとグイグイとそれを押し進める強さを持っている。


 今の小雪こゆきは俺という受け皿に収まったことで、凄まじい勢いで霧島亮二という人間にぬまり始めているようだ。


 主人公に対する態度が煮え切らなかったのは、踏み出すきっかけの問題だったのだろう。

 一度完全な依存対象である俺にハマることで、これまで曝け出すことのなかった本当の自分が解放されたと見える。


優奈ゆうなお姉ちゃん、どう?」

「う、うん。正直、亮二先輩との恋人を皆でやるのは、楽しいと思う。でも、ごめん、ちょっとだけ考えさせてください」


 優奈ゆうなの完全攻略まではあと一歩という印象だ。

 ここはもう一手、なにか仕掛けてみよう。


「ああ、俺は決して無理強いはしないから。でもそうだな。優奈ゆうな

「は、はい」

「今度俺とデートしてくれないか?」

「で、デートですか?」

「ああ。俺は優奈ゆうなさえ良ければハーレムに入ってほしい。だけど決めきれないなら、一度俺という人間をじっくりと見せてプレゼンさせてくれないか」


「ぷ、プレゼン……ですか」

「言うなれば自己アピールだな。俺は優奈ゆうなにハーレムへ入ってほしい。でも君自身はまだ迷っている。だったら優奈ゆうなの背中を押すために俺自身が頑張るのは当たり前じゃないか」


「……わ、分かりました。じゃあ今度の日曜日に」


 そういう訳でデートの約束を取り付けることに成功。

 今日で一気に決めてしまいたかったが、メインヒロインだけあって一筋縄ではいかないようだ。


「でも小雪こゆき、ラクトのこと、好きだったんじゃ」


 それを言われた瞬間、小春こゆきの顔が『スンッ……』と真顔になった。


「好摩君のことはもういい。今のあの人は、怖い……」


 困り顔でもなんでもなく、単純に嫌悪しているようにすら見える。


 小雪こゆきの感情は、驚くほど冷淡だった。


「まああんなことがあった後じゃな。それでも仲の良い幼馴染みだったんだ。時間を置いて仲直りくらいはしてやれよ」

「うん。お兄ちゃんの言うとおりにする」


 笑顔でそういう小雪こゆきだが、主人公に対しての感情が一切動いていない。


 死ぬほど興味がないって感じだ。しかし表面上は俺の言うことを聞く姿勢をとっている。


 恐ろしいな。小雪こゆきは鞍替えする前の対象に対して一切の興味を失っている。

 依存心が強いだけに、失望したらその感情の冷却具合はマイナス196度の液体窒素をぶっかけたように急激だった。


「よし、小雪こゆきは素直で良い子だな」

「ふにゃ♡ くぅん♡」


 撫で撫でしてやると仔犬のように目を細める小雪こゆき

 そして優奈ゆうなはそれを羨ましそうに見つめている。

 

 これは優奈ゆうなの理性を飛ばすにはあと一押しって所だな。


 今度のデートが楽しみだ。 

 だがその前に小雪こゆきを完全に俺のものにしたい。


 エロスキルを今すぐ発動させてもいいが、今は効果的じゃない気がする。

 

 これは言葉で説明するのが難しいのだが、俺のエロ同人というチートスキルは、どうも妖精さんのご機嫌次第で発動効果の強弱があるようだ。


 最近分かってきたのだが、妖精さんの性癖を理解して、彼女の喜ぶシチュエーションを作ってやるほどエロ効果が発現されやすい。


「まあ焦ることはないよ。恋人になるかどうかってのは重要な問題だ。だけど、俺は優奈ゆうなが欲しい。積極的にアピールさせてもらうよ」

「は、はい……っ、♡ えへ……はい」


 優奈ゆうなは嬉しそうだ。なんだかんだで積極的に迫られるのは嬉しいに違いない。


小雪こゆきもっ、小雪こゆきもお兄ちゃんとデートしたい」

「いいとも。それじゃあ今度でかけるとしよう。そうだな、恋人になった記念に揃いのアクセサリーでも買おうか。俺の女の印だ」


「嬉しいッ♡ 小雪こゆき、皆とお揃いがいいっ。あ、でも」

「そうだな。全部一緒というのも味気ない。イメージカラーで違いを出すか。小雪こゆきは、やっぱり白かな。そうなると舞佳は緑、彩葉は赤、初音は濃いめの桃色ってところか。じゃあ優奈ゆうなはショッキングピンクってところか」


 主に彼女達のイメージカラーは髪色に依存しているが、もう少しヒネってもいいかもしれない。


「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。先輩そんなに恋人がいるんですか? 彩葉いろは先輩はなんとなくそう思ってましたけど……まさか舞佳まいかちゃんや初音はつねちゃんまで……?」

「ああ、皆俺の可愛い恋人だ」


 今の彼女達の価値観は、『女の数=男の魅力』というものが擦り込まれている。


 妖精さんはどうもハーレムものが好きらしい。記憶の改ざんが元に戻っても、こういうところの価値観は元に戻らない所をみると、やはり俺にヒロイン達を侍らせたいとみえる。


 俺の願望もまさしくそれだ。価値観の一致がこの奇蹟を呼び起こしているのだ。


「凄いです先輩。うん、でも、やっぱりデートで決めますね」

「ああ、それでいい。優奈ゆうなが自分の意思で決めていいんだ」

「分かりました。デート、楽しみにしてますね」


 こうしてデートの約束を取り付けたことで、メインヒロイン攻略の足がかりを掴むことができた。


 その前に小雪こゆきの完全攻略を完了させないとな。


 あ、そうそう。もう触れることはないだろうからここで触れておくが、例のストーカーキモオタ二人。


 数日もしないうちに懲りずに復讐に乗り出したので、バカ共にも分かるようにしっかりと奴らの恥を拡散しつつ当局へ通報しておいた。


 あえなく御用となったアホ共は退学を余儀なくされ、大恥映像が実名付で拡散されてしまった為に地元にもいられなくなり、二度とこの町に帰ってくることはなかったのである。

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