第39話◇特等席で生配信◇

「おお、これが撮影機材か。結構本格的なんだな」

「はい……パパが、誕生日プレゼントで」

小雪こゆきのお父さんって娘めっちゃ愛してるのな」


「はわ」

「どうした?」

「な、名前……」

「ぁ、悪い。思わず」

 

 どんなプレイをするかあれこれ考え事をしていたら、小雪こゆきを下の名前で呼んでしまった。


「ごめんごめん。馴れ馴れしかったね」

「い、ぃえ……小雪こゆき、名前の方が、嬉しい……あの」

「どうした?」

「亮二、お兄ちゃん……」

「ん?」

「亮二お兄ちゃんって、呼びたい……です」


 おうおう、マジかよ。早くも主人公の特権である「お兄ちゃん」呼びを許されてしまったぞ。


 ここで小雪こゆきのパスが更に強化されたのが分かった。どうやらかなり心を許したらしい。


「いいよ。俺もその方が嬉しい」


「♡」

「(格好いい……やっぱりヒーロー)」

「何か言ったか?」

「ううん。なんでもない」


 よく聞こえなかったが、小雪こゆきの感情はドンドン俺に傾いている。


 相変わらずイージーモードだ。

 そして優奈ゆうなだ。彼女もまた、俺への感情がかなりの速度で上昇している。

 


「あ、あのね、亮二お兄ちゃん」

「なんだい?」

小雪こゆき、お礼がしたいの。何かできること、ない?」

「私もしたいです。小雪こゆきを守ってくれて、本当にありがとうございます」


 小雪こゆき優奈ゆうなに懐いている。幼馴染みであり、妹のような存在だったのだろう。


 ここはエロエロ空間だ。普通じゃドン引きするようなお願いもできてしまうだろう。


「それじゃあ、まずはスカートをまくってくれ」

「うん、分かった♡」

「わ、分かりました」


 頷いちゃったよこの子達。

 

 恥ずかしそうにする優奈ゆうなと、ハニカミながら、しかしあまり躊躇した様子も無くスカートをまくり上げる小雪こゆきとの対比が面白い。


「うう、先輩に見てもらうならもっと可愛いの履いてくればよかった」


 さすが妖精さんのエロエロ空間だ。たまりませんねこりゃ。


「二人とも可愛いのに中々エッチな下着を履いてるんだな。いつもなのか?」

「そ、そんなことないもんっ。お兄ちゃんが来てくれるから、可愛いの選んだだけ」


 もしかして、エロ同人スキルが発動する前から小雪こゆきは意識してた?


小雪こゆきは良い女だな」

「ほ、ほんと? 小雪こゆき、お兄ちゃんの恋人になれる?」

「いいぞ。だが1人だけは無理だからな。俺にはもう沢山の恋人がいるのだ」

「うんっ。小雪こゆき、平気だよっ」


「それなら、私もッ、私もなりたいですっ」


 なんということだろう。

 小雪こゆき優奈ゆうなの好感度が、あのたった一つの事件を解決するだけで傾いてしまうとは。


 特に小雪こゆきだ。彼女の初恋の相手は主人公だった筈。


 昨日のいざこざがあったとはいえ、こうも簡単に心変わりするとはな。


 エロ同人が働いているとはいっても、彼女達の心変わりは、やはり本心に寄るところなのだろう。


 しかもなんだろう。小雪こゆき優奈ゆうなもまだ洗脳前だというのに、複数の女をモノにしようってな価値観に対して忌避感はないらしい。


 いや、あるにはあるみたいだが、それを押してでも俺の女になりたいと思っているようだ。


 いいぞ、これで攻略ヒロインはコンプリートだ。


 このまま処女を頂いて……


『ざんねーん。本日はペロペロがコンセプトなのでエッチはお預けでーす☆ 守らないと空間が解除されて性犯罪者の仲間入りですよー♪』


 なんだとぅ⁉ くそっ、まさかコンセプトを守らないといけないとは。


 これはアレか? このボーナスタイムやラッキーちゃーんす☆は、妖精さんの欲望を満足させることが達成条件なのか。


 今までそれを無意識に達成してきたから問題なかったが、コンセプトを無視すると妖精さんは力を貸してくれないんだな。


 よーし、えっと、今日のタイトルは『君たち皆VTuber! エッチな衣装でペロペロ体験♡』だったな。


 とりあえずコンセプトにあう状況に持っていくか。


「なあ小雪こゆき、VTuberの衣装ってどんなだ? 本物を間近で見て見たいんだが」


「あ、それなら小雪こゆき、自分で作った衣装があるから」

「ん? 自分で作った衣装?」


優奈ゆうなお姉ちゃんの分もあるから、一緒に着替えよ♡」

「え、う、うん」


 クローゼットを開いた小雪こゆきは、中から取りだしたフリフリの衣装を優奈ゆうなに渡す。


 あんなものが丁度良くクローゼットに入っているものだろうか。妖精さん効果かもしれないな。


「お、それってもしかして、ちるると同じ衣装か?」

「そうなの。小雪こゆき、自分で衣装作ってみたの。はいこれ。優奈ゆうなお姉ちゃんの分」

「ふわぁ、フリフリだね」


「ぁ、で、でも……ここで?」

「パンツ見られてるから今更だよ優奈ゆうなお姉ちゃん」


 なんと、ことエッチなことに関して小雪こゆきの積極性は優奈ゆうなよりも進んでいるらしい。


 これはゲーム終盤で見られる反応だ(エッチなイベントがあるわけじゃないぞ)。

 

 主人公の手を引っ張って遊園地にでかけるデートイベントはさくさく屈指の名シーンだ。


 あのテンションでエッチな事をしてくれる小雪こゆきの可愛さに勃起不可避だ。


「ぁ……お兄ちゃん、それ」

「え? ひゃわっ! せ、先輩、それって」

「二人の可愛い着替えシーンなんて見たらどうしてもこうなるよ」


 息子がフィーバーしているのに気付かれてしまった。


「えへへ。小雪こゆき達、可愛いって」

「う。うん。じゃあ、私も……」


 小雪こゆきに勇気をもらったのか優奈ゆうなの着替える手つきに迷いがなくなる。


 よく見るとその衣装はちるるの衣装とは少しだけ違う箇所がある。


「あのねあのね優奈ゆうなお姉ちゃん、小雪こゆき、やってみたいことがあるの」

「え、どうしたの?」

「こしょこしょ……」

「ふんふん……ぇ、それ、ホントに?」


 何やら内緒話を始めた。きっとエッチなことに違いない。


(ん? おおっ、あ、あれは……)


 二人の衣装には犬みたいなフサフサの尻尾がついているのだが、なんとそいつがフリフリと左右に揺れている。


 まるで生きているみたいにだ。これも妖精さん仕様なんだな。

 たまらんね。


「お兄ちゃん、小雪こゆき、お兄ちゃんだけに特別なライブ配信してあげる」

「ほほう? それは中々胸躍るワードだね。楽しみだ」


「それじゃあ、小雪こゆき達の感謝の気持ち、どうか受け取って。小雪こゆき、豹変するからびっくりしないでね」

「ちるるになるんだな。いいぞ。小雪こゆきがどんな風になっても受け入れるよ」

「うん、じゃあ頑張る。優奈ゆうなお姉ちゃん、頑張ろ♡」

「う、うん。よーし、頑張っちゃうぞっ」


「それじゃあちるると優奈ゆうなのエッチなVTuberライブ、はっじまるよー☆」

「は、はじまるよー」


 急激に上がったテンションでしゃべり出す小雪こゆきに驚く優奈ゆうな


 だが妖精さんの作り出したエロ空間により、エッチなライブ配信なるものを始める小雪こゆきに反対はしなかった。


「今日はねーっ、ちるるの大好きなお兄ちゃんをペロペロするチャレンジに挑戦してもらちゃうよー」

「お、おー」

 

優奈ゆうなお姉ちゃん、お兄ちゃんの服脱がしちゃお」

「え、ふ、服を?」

「だってペロペロするんだもん。服の上からじゃできないでしょ?」

「そ、そうだよね。分かった。先輩、失礼します」


 おお、優奈ゆうなの良い匂いが間近に……。

 メインヒロインだけあって甘くて良い匂いが他の子より濃厚な気がする。

 

 今すぐ抱きしめてベッドに押し倒し、唇を奪って処女を奪いたいところだ。


 しかしコンセプトから外れる訳にはいかない。


「ふわ……凄い筋肉……。浅黒くて逞しい。先輩、鍛えてるんですね」

「ああ、まあな。デカい男は嫌いか?」

「分からないです。でも、先輩の胸板見てると、凄くドキドキします……」


「幼馴染みと比べてどうだ?」

「ラクトですか? ラクトは、子供の頃に一緒にお風呂に入ったりはしましたけど、特別な感情は全然」


「そうか。いいぞ、触ってみろ。小雪こゆき――ちるると一緒にペロペロするんだ」

「は、はい、失礼します……先輩♡」

「それじゃあちるるも頑張ってエッチになるね♡ お兄ちゃん♡」


 メインヒロインとマスコット的に小っちゃなヒロイン。

 二人の無垢なる少女達によるエッチなサービスは……。


 はい、たまりませんでした……。

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