第35話◇呆れる幼馴染み達◇



 亮二の立ち去った後の小雪こゆきの家は最悪の空気になっていた。


 イライラの収まらない主人公に呆れ顔の優奈ゆうな


 怒り心頭の彩葉いろはは「呆れたもんだね少年」と睨み付け、バツの悪い顔をした彼に引き続き説教を続けた。


 舞佳まいか初音はつねは既に主人公に対しての想いなど全て吹き飛んでいた。


 例え亮二に想いを上書きされたとしても、初恋の思い出はなくならないし、友人としての情は失っていなかった。


 彼女達の全員が主人公を嫌いになった訳ではなかった筈だった。


 しかし今の態度を見て何も思わないほど盲目的ではない。


 これまでにもこういうことは何度もあった。

 今までは仲の良い幼馴染みだからこそ、その態度も苦笑しつつも流すことができた。


 盲目的だったのは今までであり、既に目の覚めた2人には彼の姿が単なる痛々しい癇癪かんしゃく持ちにしか映っていない。


 そしてここにもう2人、目を覚ましつつある女がいた。


「お兄ちゃん……」

小雪こゆき優奈ゆうな、お前らは俺の味方だよなっ⁉ 俺は間違ってないってアイツも言ってたじゃないかっ!」


「ラクト……お願い、これ以上失望させないで」

「……」


「なんだよ……なんだよっ! 皆して俺のこと責めやがってっ。今まで上手くいってたじゃないかっ。アイツが俺達の輪の中に入ってきたんだっ!」


「それはきっかけに過ぎないよ。今まで上手く行ってるように見えたのは、それがなかっただけ」

優奈ゆうな……」

「ごめんラクト。正直、私達、今はラクトに優しくできない」


「少年……いや、もういいや。好摩こうま君、今日は帰りなさい。今ここに君の味方になってくれる人はいないよ。頭を冷やして自分の行いを振り返るんだ。そうじゃないと、本当に全部失っちゃうよ」


舞佳まいかも、今日から好摩君って呼びます」

「わ、私も……。君が反省するまで、幼馴染みをやめるね」


「クソッ! クソがッ! なんなんだよ皆っ! 小雪こゆきッ!」

「ひっ……ッ!」


小雪こゆきはどうなんだよっ。お前まで俺を否定するのかっ」

「やめてラクトッ。小雪こゆきが怖がってるのが分からないの?」

「こ、小雪こゆきは……小雪こゆきはお兄ちゃんのこと……。ごめんなさい」

「なんだよ、ハッキリ言えよ」


「ラクト、いい加減にしてッ! はぁ、もういいっ。悪いけど、ラクトとはしばらく距離を置きたい」

「なんだと?」

彩葉いろは先輩の言うとおりだよラクト……ううん、好摩君。頭を冷やして」

優奈ゆうな


「お兄ちゃん……小雪こゆきも、今のお兄ちゃん、怖い」

「……ちっ。分かったよ……」


 全員の冷たい視線に耐え切れなくなった主人公はその場を飛び出し、後に残された少女達の気まずい沈黙が流れる。


「えっと、なんか、ごめんなさい。私が」

初音はつね、謝っちゃダメ。全面的にあの子が悪いんだから。それに謝ったら亮君を否定することになる」

「そ、そうだね。亮二さんが小雪こゆきちゃんのために提案してくれたんだもんね」


「え? どういうこと?」

「先輩……が?」


 初音はつねは今回に至った経緯を話し始める。

 小雪こゆきが悩んでいるように見え、亮二に相談したこと。


 まずは信頼関係構築のために食事会を提案し、初音はつねがセッティングしたことを話す。


「そうだったんだ。私がラクト……好摩君に声かけちゃったのがマズかったかな」

「ううん。事前に事情を相談しなかった私が悪いから」


初音はつねお姉ちゃん……小雪こゆきの為に、ごめんなさい」

「ううん、小雪こゆきちゃんのせいじゃないから。私がお節介を焼いただけ」


「ふう……とりあえず好摩こうま君のことは置いときましょうよ。舞佳まいか小雪こゆきちゃんが心配です」


 舞佳まいかは既に主人公の事などどうでもいいと言わんばかりに話題を切り替える。


 優奈ゆうな小雪こゆきも思うところがないわけではなかったが、彩葉いろは初音はつねも話題の切り替えに反対しなかった。


小雪こゆき、最近元気がないように見えるんだけど、何かあったの?」


「う、うん……実は……」


 小雪こゆきの語り始める悩みの理由が、彼女達を驚愕させることになる。


――――――――


※後書き※

何をとは言いませんが、別の世界線で1位を獲得することができました。

こっちの世界線も盛り上がってほしい★


お読みくださり誠にありがとうございます!

執筆の励みになりますので、続きが気になる!と思った方は是非とも+ボタンで☆☆☆を★★★に。

ご意見ご感想、レビューなどしていただけたら幸いです。

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