第32話◇薄い本みたいな展開◇

初音はつね……」

「りょ、亮二、君……?」

 

 【催淫】を発動させ、彼女の性的欲求を高める。

 前にも言ったが、このスキルの難しい所は、目の前の相手がセックスしたいと思える対象でなければ強い効果を発揮しない。


 正確に言えばムラムラしたからと言って誰彼構わずセックスしてしまうようなスキルではないということだ。


 あくまで目の前の対象――この場合は俺が、初音はつねにとってセックス対象として満たされていないといけない。


初音はつね……」

「ぁ……りょ……」


 顔を近づけ、唇を寄せる。以前と違い、彼女は抵抗することなくキスを受け入れた。


「柔らかいな。初音はつね、可愛いよ」

「亮二君……私、ファーストキス……あげちゃいました」


 実際には既にもらっているが、彼女の認識の中では初めてだ。


 どんな形であれ、女の子の初めてをもらえるのは嬉しいに決まっている。


「嬉しいよ。もう一度」

「……頭がぽわぽわしますぅ……」

「委ねてくれ。俺に任せろ」


 男の体に興味津々なのだろう。恐らくもともと潜在的な性欲の強さはそうとうなものだったと思われる。


 ゲーム内における初音はつねは、引っ込み思案な挙動をしておきながら、恋愛や男女関係における興味は人一倍強いという側面を持っていた。


 ようするにムッツリスケベなのだ。間違っても口にはしないが、それを解放した時の乱れ具合を想像すると気分が高まるってもんだ。


初音はつね、もう一回、キスしようぜ」

「は、はい亮二君」

初音はつね、好きだぜ」

「で、でもぉ」

「いいんだ。俺が一方的に初音はつねが好きなだけだから。お前は自分の想いを捨てなくていい。今も俺が無理やり迫ってるだけだからな。事故みたいなものだと思えばいいんだよ」


「事故……、これはぁ、事故……仕方、ないこと……」

 

 免罪符を手に入れたことが功を奏したのか、初音はつねのキスが一層深くなる。

 

「不思議、です…全然、嫌じゃない。むしろ、嬉しい、かも、です」

「そうか。俺も嬉しいよ。ちゃんと気持ち良くしてあげるからね」


 嗚呼ああ、やべぇな。ゆったりまったりラブラブな初めて。これもいい。だが、俺は初音はつねをむちゃくちゃにしてやりたい衝動に駆られ始めていた。


 このムチムチの体を好きなだけ揉みしだき、押さえ込み、絡みついて噛み付いて、全ての体重をかけてやりたい。


『ここで耳寄り情報でーす☆ 初音はつねちゃん、なんと乱暴にされる妄想しながら発電するのが日課なんですよ~♪』


 顔も知らない妖精さんがゲス顔をしているのが分かる。

 大声じゃなくて囁くような声でリークしてくるところが真実味を帯びていた。


 だが、あくまで好きな相手に強く求められたいという願望の裏返しなのだ。

 

 そして、その相手は現在進行形で俺にシフトしつつある。


 もう少し心を解きほぐす必要があるだろう。焦ってはダメだ。


『更に更に妖精さん耳寄り情報でーす☆初音はつねさん、かなり焦れてますねぇ。もういっその事一気にガバッといっちゃいましょう♡』

 

 それって妖精さんが見たいだけの願望なんじゃないか?

 

 だがそれが事実だとしたら俺にとってもの凄く都合が良い。


 よーし、だったら乗っかってやろうじゃないか。


初音はつねッ」

「んちゅっ⁉ ふわぁっ、りょ、亮二君ッ⁉」


 俺はゆったりとキスを続けていた初音はつねの体をいきなり強く抱きしめる。


「強い、れしゅっ」

「もう我慢ができねぇ。初音はつね、俺の女になれ。幼馴染みはすぐに俺が全部塗り潰してやるよ」

「ふわぁ、 亮二君ッ♡」


 ブルマ姿の扇情的な際どさが興奮を加速させ、俺は初音はつねを競技用のマットの上に押し倒す。


 走り高跳びに使う膝の高さくらいまである分厚いアレだ。


 高さや柔らかさは足りないが、ベッド代わりにこれ以上の丁度良さはない。


 そして流石は妖精さんの作り出した特殊空間だ。

 ほこりっぽさはなく、変な匂いもしない。


 強いて言うなら体育倉庫独特の籠もった感じがする程度だ。


 あまりほこりっぽさが目立つと不衛生さに意識が削がれるからな。


 俺は興奮と衝動に任せるまま、初音に覆い被さった。


◇◇◇


「はう……すっかり、あなたの虜です♡ 亮二、どうか、これからも可愛がってください」


 初音はつねは完全に堕ちた。俺への二人称が「君」から「さん」に変わっている。


 これは十数回にも及んだ睦み合いの中で、彼女がとんでもないドMであり、奉仕体質であることを開花させたからだ。


 自らの跪き、俺を上位の存在に定め、自らへりくだることで恍惚の表情を浮かべる。


 まさかあの初音はつねがこんなM奴隷体質だとは思わなかったが、興奮不可避である。


『本当は普段からご主人様と呼びたいです♡』


 なんてことを言うくらい、初音はつねの性癖は極まっていた。

 ゲームではこんな彼女を見ることはできない。主人公では、彼女の深層意識に眠っていた本来の姿を引き出すことはできなかっただろう。



 初音はつねはやはり生粋のドMだった。

 ゲーム内にそのような兆候を示す要素はさほどない。


 しかし、主人公に対しての気質と、俺に対して見せた気質は全く違うのも当然だ。


 恐らく、初音はつねのアレは彼女本来の願望なのだ。主人公とは最終的に結ばれて幸せになれたが、それが最高の形だとは限らない。


 なぜなら妖精さんのスキルは心の中身を映し出す。つまり彼女のドM気質は、心の奥底に眠っていた本音ということだ。


 主人公と結ばれた先でこの本音が引き出される可能性は低いということになる。まあ将来的には分からんけど。


 どっちにしても心に訴えるチートスキルで引き出した本音だから、あれが初音はつねの本気の本気で願っている性癖となる。



 大満足の睦み合いはなおも続き、辺りはすっかり夕方になっていた。


◇◇◇



「おっ! 初音はつね~、とってもいい顔になったねぇ」


 妖精さんの特殊空間から解放されたのは、全ての授業が終わった放課後になってからだった。


 いや、というより俺が初音はつねを離さなかったので空間の解除を引き延ばしたのだろう。


 一番のお気に入りである初音はつねとの濃厚セックスに張り切ってしまったのは否めない。


 さくさくでキャラの中でもトップレベルにエロい初音はつねの体は実際に触ってみれば俺自身が夢中になってしまった。


 スキルの影響とガッツリ回数をこなしたことによって初音はつねはすっかり俺の虜になってくれた。


 いやぁ、最高だった。


「おやおや~? 亮君の顔色がツヤッツヤになってるねぇ。さてはとってもいい事があったんだな?」


「おう、彩葉いろは。新しい仲間だ。週末にでも歓迎会やるぞ」

「あ、じゃあんだね」

「え、じゃあ……」

「まあまあ詳しい事は帰り際話すからさ。今日はお赤飯かな?」

「も、もうっ、やめてよ彩葉いろはちゃんっ」

「んで? どうだった、亮君は?」

「えっと……とっても、最高でした♡」

「ほらほらぁ。やっぱりそうなるよねー♡」


 仲良きことは睦まじきかな。週末は舞佳を交えて4Pパーティーだな。


 これからじっくりとそれらを引き出す為のセックス三昧の日々が始まるのだ。



――――――――――


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