第31話◇密室の体育倉庫◇
壁から生えた初音の尻をたっぷりと堪能した後、気が付くと俺達は薄暗い体育倉庫に二人きりの状態で移動していた。
不安気にキョロキョロと回りを見回す初音を安心させるため、俺は努めて冷静に状況を確認する。
まあ原因作ったの俺なんだけどね。完全なマッチポンプだよ。
「あ、あれ? ここって……?」
「どうも体育倉庫みたいだな……どれ……」
案の定というか、やはりここは普通の場所ではない。
窓の外に見える校庭には誰もいない。
人の気配が全くないのだ。
「扉が開かないな。窓もダメみたいだ」
「あう……また不思議なことが起こってます……。霧島君は、冷静なんですね……」
「まあ、あんな不可思議な状況を経験してしまったらな。何が起こっても不思議じゃないというか。俺が狼狽えたら
「ぁう……霧島君」
「亮二だ。俺も名前で呼ぶからそう呼んでくれないか」
「は、はい。では、亮二君……っ♡」
なぜか
……あ、そうか。【魅惑ボイス】のスキルが自動的に発動してたのだ。
俺が
「仕方ない。誰か来るまで待つか」
「そうするしか、ないですよね」
「そうだな。とりあえず大人しくしていよう。まだ授業中だしな。人が来るのはあんまり期待できそうもない」
「そうですよね……ぁう」
実際は違う。これは妖精さんが人払いをしているに違いなかった。
周りからは人の気配はおろか、遠くの方に誰かがいる様子もない。
恐らくここは現実とは違う空間ではないかと思われる。
「んっ……」
「寒いか? 上着でも持ってくればよかったのだが」
「っ……ふぅ、へ、平気です」
「平気そうには見えないな。仕方ない。緊急事態だ、こっちにおいで」
密室空間なので空気の流れはない。
俺は倉庫に置かれたマットを敷いて壁にもたれかかり、
「えっと、亮二君?」
「とりあえず温度の高いものって俺の体くらいしかないからな。俺も寒いし、温め合おう。『おいで、
「はう♡ は、はい。よろしくお願いします……」
かなり俺に対する気持ちが傾いてきている。
幼馴染みへの想いは忘れてはいないものの、この特殊過ぎる状況が
ムチムチの体を抱き寄せ、体温を堪能させてもらう。
ちょうど心音が聞こえる位置で頭を抱きしめ、
「んっ、ぁ、亮二君、温かいです」
「筋肉多めだから体温の高さには自信がある。
「あう……頑張ってダイエットしてるんですけど、中々痩せていかなくて」
「いいじゃないか。
「ふふ、なんだか変な感じです。先日知り合ったばかりの男の人と抱き合ってるのに、全然嫌な感じがしません」
「すまんな、好きな男がいるのに」
「ふぇ⁉ な、なんのことですか?」
「あの幼馴染みのことが好きなんだろ? 見ていれば分かる」
実際は知っていただけだが……。
「はう……でも、きっと叶わない恋なんです」
「そうか? 俺は
「そ、そんなこと……。私なんて」
以前のおっぱいチャンスの時もそうだったが、彼女は自分の体に強いコンプレックスを持っており、とても自己評価が低い。
だからこういう場合、強く否定も肯定もしてはいけない。
「だが気持ちは分かるよ。俺もあまり自分に自信のある方ではないから」
「そ、そうなんですか? 亮二君は、とても格好いいと思います」
「そうか? こんな厳つい見た目をしてるのに?」
「確かに、始めは怖かったですけど、よく見ると優しい目をしてるし、不安な私をこうして気遣ってくださいます」
フルリと震えた体を抱きしめる。
「温かい……それに、亮二君、心臓がドキドキ言ってます……」
「
「はう♡」
彼女の緊張はかなり解けてきており、トロンとした目付きで頭を擦り付けてくる。
静かな時間が流れていき、段々と俺達の心の距離は縮まってきていた。
そろそろいいだろう。初音ちゃん、いただきます。
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