第24話◇舞佳を完全攻略せよ◇

 彩葉いろはのアシストのおかげで舞佳まいかを自宅に呼ぶことに成功した。


 気になるのは俺が舞佳まいかを狙っていることを彩葉いろはが理解してアシストしている節がある点だ。

  

 彼女には【複数の女を愛することが男の甲斐性】という価値観を植え付けてある。


 だが俺が舞佳まいかをハーレムに加えたいことはまだ伝えていない。


 にも関わらず確信犯で舞佳まいかを誘ったとしたら、彩葉いろはの手駒としての能力は思った以上に優秀だったということだ。


 それを示すように、先ほどから【褒めて褒めて】という心の波動をバシバシこちらに向けながら、素知らぬ顔で舞佳まいかとの談話に興じている。


 恐ろしいことだ。こいつが味方で本当に良かったと思える。


 とりあえず彩葉いろはの手を握り返してグニグニとイジってやった。


 表情こそ変えていないのに、彩葉いろはの欲情レベルがググッとアップしたのが分かる。

 

 これは帰ったらご褒美をあげないと拗ねてしまうかもしれないな。

 



「ひえー。本当に凄いゴミ屋敷状態ですねぇ」

 

 舞佳まいかが家までやってきた。本当はそのままエッチに持ち込んでも良かったが、どうも俺自身もゴミ屋敷では精神衛生上よくない。


 先に片付けをしてしまおう。エッチは明日にでもお礼に食事とか適当な理由を付けて呼び出せば良い。


「さーて、張り切って片付けるぞーっ」

「なんだか彩葉いろは先輩の方が気合い入ってますね」

「だって幼馴染みの家がゴミ屋敷じゃ気楽に遊びに来れないじゃん」


 誰よりも張り切っているのは彩葉いろはだった。

 そのおかげもあってかテキパキと動いて指示を出してくれる。


 そうして時間はあっという間に過ぎていき、二時間もしないうちに片付け終わってしまったのであった。


◇◇◇


「凄いな。これが俺の家だとは信じられねぇ」

「何言ってるのよ。昔はこのくらい綺麗だったじゃない」

「うんにゃ、昔より綺麗だ。二人のおかげだ。ありがとな」


「お役に立てて良かったです」


「よーし、そんじゃあ汚れちゃったし、お風呂入ろっか。っと言っても、男の人の家でお風呂は流石に抵抗あるよね」

「あはは、そうですね。流石にちょっと恥ずかしいです」

「私の家がこの近所だから、今から入りに行こうよ。ついでに着替えも貸してあげる。その後で夕食作るから」


「え、でもいいんですか? お邪魔ですし、日を改めてでも」

「いいのいいの。ね、亮君」

「ああ。俺は構わない。是非食っていってくれ」


「それじゃあ、お言葉に甘えて……」


 色々と強引に押し進めていく彩葉いろは。心の波動はやはり【褒めて】だった。


 これはもう舞佳まいか攻略の準備に取りかかっていると見て良いだろう。


 俺は2人を見送り、家に入ってから彩葉いろはにメッセージを送る。


――『タイミングを見て舞佳まいかと二人きりにして欲しい』


 簡単にこれだけだ。すると直ぐに返事が返ってくる。


――『了解☆』


 やはりだ。彩葉いろはは俺の心情を理解した上で行動している。

 言葉での確認は必要なさそうなほどだ。


 やがてしばらくの後、俺が簡単にシャワーを浴びて時間を潰していると、風呂でさっぱりとした2人が家に戻ってきた。


「お? どうしたその格好」

「せっかくだから私のお気に入りの服着せてみたの。どうかな」


 白のブラウスに薄いピンクのミニスカート。

 プリーツになっていて舞佳まいかの溌剌としたイメージにピッタリと合っている。


「うん、凄く可愛いな。宮坂のイメージに合ってる」

「そ、そうですか? 舞佳まいか、あんまりお洒落に気を遣ったことがないので、分からないです」


「よく似合ってるぞ。自信を持っていいと思う。素材が極上だからな」

 

 髪色がライトグリーンの影響か明るい色のコーデが非常にマッチしている。


 ゲームの世界ならではの光景だな。


「とりあえず入れよ。お茶煎れる」

「お、お邪魔します」


「あ、じゃあ私がお茶煎れるねー」

「場所分かるのか?」

「というか、この家お茶とかないじゃん。私が持ってきたから」

「そうか。すまんな」


「いえいえー。幼馴染みですからー」


彩葉いろは先輩、なんだか嬉しそうですね。やっぱりお付き合いされてるんですか?」

「うん、まぁね♡ それより、舞佳まいかちゃんの方はどうなんだい?」

「へ? ま、舞佳まいかですか?」

「そうそう。少年との恋は実りそうなの?」


「あう……舞佳まいかなんかじゃ無理ですよ。ライバルが強すぎます」

「ライバル、というと、あれか? 彼の周りにいる」

「はい。初音はつねお姉ちゃんに小雪こゆきちゃん。何より優奈ゆうなちゃんがいますもん」


 確かゲーム内において、優奈ゆうなは主人公を幼馴染み以上には感じていなかった。


 これから一年かけてじっくりと好感度をアップさせ、クリスマスイベントを経て気持ちの変化を自覚していく筈だ。


 ちなみに攻略のしやすさをランク分けすると……。


 easy 舞佳まいか 小雪こゆき

 normal 初音はつね

 hard 優奈ゆうな 隠しヒロイン

 

 という感じになる。これはちょっと好みや条件による所もあるだろうが、俺の体感でも大体こんな感じだった。


 主人公が仮に優奈ゆうな狙いだとすると、好感度の上がりにくさから言っても優奈ゆうなをラスボスと定めても問題ないだろう。


 舞佳まいかは今日で完全に堕としてしまおう。

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