第23話◇彩葉のアシスト◇



 さて、見苦しい自己陶酔と自己弁護の一人語りはこのくらいにして、早速攻略キャラとの接触を計るとするか。


 今日は彩葉いろはと夕食の買い出しに行って一緒に部屋の掃除をする約束になっている。


 舞佳まいかと仕上げエッチをするなら放課後までに校内で済ませてしまおう。


 認識改変や常識改変は今の所女の子本人に対してしか使えない。


 もし舞佳まいかを混ぜて彩葉いろはと3Pをしようと思ったら、まずは舞佳まいかの好きな人、セックスしたい人を俺に変えてしまう必要がある。


 種付けし終わっている彩葉いろはに関しては心配ない。既に心の根っこの部分まで洗脳仕切っているので、俺のやりたい事には喜んで協力するだろう。



 それこそどこかのエロ同人みたいに、常識改変を学校全体にかけるとかできたら楽なんだがな。


 催眠にしても常識改変にしても、効果範囲が非常に狭いのが難点だ。


 これもそのうちパワーアップしてもらいたいもんだぜ。


 頼むぜー妖精さーん。


 ……


 ちっ。ダメか。ワンチャンアナウンスがあるかと期待したんだがな。



 もしかすると、まだレベルが足りないとか条件が揃ってないのかもしれないな。


 経験的に段階を踏んでスキルが増えている感じがするし、今持っているスキルを駆使して攻略する女の子を増やしたり、経験を重ねたりすれば新しいスキルが解放されているように感じる。


 まずはその仮説に従って色々と経験を重ねるしかないな。


(おっ、舞佳まいか発見)


 昼休み。彩葉いろはと一緒に昼食をとりに学食に走ると、いつもは幼馴染み達とグループで行動している筈の舞佳まいかが、何故か一人でメシを食っていた。


「なあ彩葉いろは、宮坂なんで一人なんだ?」

「さあ。一緒に食べよっか」

「だな。久しぶりに話してみたいし」

「うん、じゃあ声かけてくるね」

「ああ。B定食でいいか?」

「ありがとう。じゃあ注文お願いね」


 俺は彩葉いろはの分の注文も一緒に取り、二人分のお盆を持って席に着く。


「よう。俺もいいか?」

「あ、霧島君。どうぞどうぞ」

「亮君、舞佳まいかちゃんね、なんか少年と喧嘩しちゃったんだって」

「喧嘩? 好摩こうまと?」

「そうなんです……」


 一人だった理由は幼馴染みと喧嘩が原因らしい。

 どっちにしても一人のところを捕まえることに成功したが、こう人が多い所ではな。


 だが考えようによっては丁度良い。

 幼馴染みと引き離す手間が省けた。


「訳を聞いてもいいか? ひょっとして朝の俺が原因だったり?」

「あ、いえいえ。霧島君は悪くないです。あれはどっちかっていうとらっ君の方が悪いです……」


 舞佳まいかの話によると、教室に入った主人公はイライラが収まらなかったらしく、俺の悪口を言いながら二度と近づかないように幼馴染み達を説得していたらしい。


 まあ聞いた感じ、元の霧島の評判と相違ないレベルのことを口にしたらしいので的は射ている。


 だが舞佳まいか的にはそれが気に入らなかったらしく、霧島の悪口に対して酷く腹が立った。


「なるほど。まあ彼の言うことは一定数間違っていない。今までろくでもないことをしてきたのは紛れもない事実だからな」

「それでもっ、あんな言い方しなくたって」

「まあ許してやれよ。宮坂のことをそれだけ心配してるって証拠じゃないか」


「そうでしょうか……舞佳まいかには子供じみた癇癪かんしゃくを起こしてるように見えました」


 舞佳まいかが俺を擁護したがるのは無理もない。

 よほど物事を多角的に捉える思考の持ち主でなければ、その人の印象を決める材料は好感度だ。


 客観的にモノを考えろ、と人は簡単に言うが、文字通りそれは簡単ではない。


 誰しもが主観で生きているし、ましてや舞佳まいかのように感情優先の少女では尚更難しいだろう。


 舞佳まいかが俺に傾くのも植え付けたスキルの種によって、俺への好感度が無意識にアップしているからだろう。


 態度の善し悪しは確かに子供じみているが、つい先日までの俺の普段の行動を知っている人間からすれば、彼の警戒は至極当然の反応と言える。


「俺と交友を持つかどうかは宮坂自身が決めればいいと思うが、大事な幼馴染みとの関係性が悪くなるのは、なんか悪い気がしてな」


「霧島君、本当に変わったんですね。前とはまるで別人みたいです」

「いつまでも子供じゃいられないからな」


 繰り返すようだが中身が入れ替わっているので文字通り別人だ。


 舞佳まいかの俺への好感度がドンドン上がっているのが分かる。


 別に幼馴染みを嫌いになる必要はない。恋慕の情の対象が変わればいいのだ。

 

 だが一旦俺に完全に傾いてもらう為には、幼馴染みと仲違いしてもらうのが手っ取り早い。


 その後で関係性を修復するかどうかは舞佳まいか自身が決めればいい。


 このまま主人公が子供じみた癇癪かんしゃくを続けて起こしてくれれば、俺の計画も順調に進むだろう。


舞佳まいかちゃん、とりあえず気分転換でもしない?」

「気分転換ですか?」

「今日さ、亮君の家でご飯作るんだけど、良かったら一緒にどう?」

「え、舞佳まいかもですか?」


「でも今日はダメだろ?」

「あ、そうか。じゃあ明日はどう?」

「今日は何かあるんですか?」


「実はネェ。亮君の家いま半分ゴミ屋敷状態でね。私がお掃除手伝うことになってるの」

「あ、それなら舞佳まいかも手伝いますよ。色々迷惑かけちゃったし」


「気にしなくて良いが……。まあ手伝ってくれるなら有り難いな」


 予想外だったが、彩葉いろはのナイスなアシストによって舞佳まいかを家に呼ぶことに成功した。


 その時、俺の隣に座る彩葉いろはの指が俺の太ももをちょんちょんと触った。


(ん? なんだ?)


 すると、彼女は視線を舞佳まいかから外さないまま談話をしている。

 しかし手の指先が俺の太ももを何度も往復しており、何かを伝えていることが分かった。

 そして伝わってくる感情は「褒めて」だった。


(まさか彩葉いろはの奴……)


 俺が舞佳まいかを狙っていることを理解しているのだろうか?

 そうだとしたら手駒として思った以上に優秀だったことになるな。


 そして、それは事実であったことが発覚するのは、この数時間後なのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る