第16話◇突っかかる主人公◇
校門に到着した瞬間、いきなり
そしてもの凄い形相で俺を睨み付けながら、怒号のように声を張った。
「
「ちょ、ちょっとちょっと、どうしたんですからっ君」
「そうだぞ少年。顔が怖いぞー」
「何か気に障るようなことをしたか?」
「何かしたか、だと?」
何やら急激な喧嘩腰にムカつきよりも困惑の方が勝ってしまい、咄嗟の反応ができない。
恐らく今の俺は「キョトン」というオノマトペがピッタリのマヌケな顔をしているに違いない。
「お前、当たり前の様に俺達の後ろからついてきてるけど、一体何の用だよ」
「いや、行く方向が同じなんだから当たり前だと思うが……?」
本当にそんな程度の答えしか出てこない。
こいつは何が言いたいんだ? マジで分からん。
いや待てよ……。そういえばこいつ、校門に入った途端に何かが切り替わったようにこっちに向かってきたな。
「あ、そういうことか」
「な、なんだ急に」
こいつが俺に突っかかってきた理由がようやく理解できて思わず声に出てしまう。
「いや、気にしないでくれ。それで? 俺にどうしてほしいって?」
「だから、
「すまん、一体何故なのか、マジで分からんのだが……」
「お前、霧島亮二だろ?」
「そうだが?」
「粗暴でサボり魔で女垂らしで有名じゃないか。そんな奴が
やはりそうか。そしてコイツが急に幼馴染み達との会話を中断してこちらに意識を向けた理由もなんとなく分かった。
『俺達は学校に到着するまで楽しく会話した』、のシーンが終わったからだ。
ゲームのシステムから解放され、自由意志で動けるようになった主人公は、幼馴染みとその先輩の真ん中に堂々と歩いている見た目DQNを警戒したに違いない。
「ちょっとらっ君ッ。さすがに失礼だよそれはっ。確かに霧島君は粗暴でサボり魔で女垂らしですけどっ!」
「そうだそうだっ。確かに学園来ないし顔は怖いし女泣かせではあるけどっ」
おいこら、全然フォローになってないぞ二人とも。
「少なくとも大して面識のないらっ君がそこまで言うのは失礼ですよ。私達は昔なじみなんです。旧交を温めていただけですから」
「そ、そうなのか?
「私は亮君とは幼馴染みなんだ。確かにさっき言ったことは間違いではないけど、流石に幼馴染みをいきなりディスられるのは、いくら君でもカチンとくるね」
「な、なんだよ二人とも。そいつの味方すんのか?」
「別にどちらの味方とかそういう話はしてないけどね。君が失礼な事を言っているから、それを咎めているに過ぎないのだけれども」
【以心伝心】によると、
まあ彼氏がノーモーションでディスられたら腹も立つか。
それを考えるとちょっと嬉しくなるな。
自分がなんで
「気にするな。全部事実で何も間違っちゃいないからな」
「なっ」
「宮坂ももう行った方がいいぞ。幼馴染みが困惑してるしな。
「亮君の側にいるに決まってるじゃない」
嬉しいこと言ってくれるな。幼馴染みとはいえ、彼女はゲームのサブヒロインとして彼らとの絆があるものだと思っていたが、どうやら昨日の洗脳種付けの深さが功を奏しているようだ。
洗脳とは言っても、
彼女は洗脳する前から俺のことが好きだったし、昨日のセックスの回数は十数回に及んだ。
絆も深まった筈だ。
そのためか
「でも霧島君……」
「俺は気にしてねぇ。
「な……なんだよそりゃ」
「俺は
最終的に輪の中に残るのはお前一人になるだけだ……。
そういうのは輪とは言わないか?
「な、なんだとっ」
「ラクトッ。いい加減にしなよ」
「あ、あの……今のは、楽君が良くないと、思う」
「お兄ちゃん……謝ろ……ね」
「……チッ。悪かった」
「いいよ、気にしてない」
こいつ舌打ちしやがったな。だがヒロイン達からの株はだだ下がりだ。
果たしてこれがゲームシステムにどれほどの影響を与えるかは要観察だな。
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