第15話◇どうやら舞佳はなんとかなりそう◇


「あ、あの、霧島君」

「おう、宮坂……さん。どうした?」



「ふふ、どうしたんですか。さん付けなんて霧島君らしくありませんよ」

「まあ、そうか。でも、昔はなんて呼んでたっけか?」

「そういえは名前で呼ばれた覚えがありませんね」



 電車から降りて学園までの道のりを歩いていると、前を歩く主人公達の輪から離れて舞佳まいかがこちらに話しかけて来た。


 そして俺の姿を視認しているので性的な興奮がトロ火のようにくすぶっている筈だ。


 頬を赤くしてモジモジと目を逸らした。


「まあ、スタンダードに宮坂、でいいか?」

「そうですね。いいと思います」


「およおよ? あ、そっか。亮君と格闘少女はジムでの昔なじみだったよね。あれ? なんで今まで忘れてたんだろ」

「俺がジム破門になったからだろ」

「そういえば、そんなこともありましたねぇ。でも、霧島君、なんだかあの頃より雰囲気が柔らかくなった気がします」

「そうか? まあ変わったって感じるんだったら変わったんだろ」


 実際中身別人だしな。


「およよよ? なんだいなんだい? 亮君と舞佳まいかちゃんってそんなに仲が良かったの?」

「いや別に」

「そういえばジムの中で話しかけたことはあんまりなかったですね」


 あの頃の霧島こいつは相当に荒れていたようだ。

 母子家庭で独りぼっち。荒れる要素はふんだんにある。


 破門になったのもその頃だったな。


「そういえば、彩葉いろは先輩はどういうお知り合いなんですか?」

「私達、幼馴染みなんだよねぇ」

「え、そうだったんですか?」

「まあ、事実ではある」

「なによー。事実は事実でしょー」


 ぷーぷーと抗議の拳を脇腹に突き刺してくる。

 とはいってもポムポムと軽い音しかしないじゃれ合いのようなパンチだ。


 しかし彩葉いろはの奴、昨日と今日で大分態度が違うな。

 昔の状態に戻りつつあるのと、ベッドの中では甘えん坊だ。


 この落差は俺だけが知っている彼女の魅力だな。


「なんか、凄く仲が良いんですね」

「ん、そうだね。最近までちょっと疎遠だったんだけど、昨日、ね」


 おっ。現在舞佳まいかの中で嫉妬のような感情がモヤモヤと雲を作り始めている。


 自分はらっ君が好きなはずなのに、どうしてこの人が気になるんだろう、的なヤツだ。


「へぇ。あ、そうだ。霧島君、昨日はすみません」

「おう、何が?」


「えっと、多分昨日の帰り、話しかけてくれましたよね。舞佳まいか、ちょっとその後の記憶が曖昧で、無視しちゃってたらごめんなさい。話しかけられたことは覚えてるんですけど」

「ああ、特に問題はないよ」


 処女まで頂いてしまったしな。何も問題はない。


 今現在、舞佳まいかの中にあの時の記憶は残っていない筈だ。


 自分が俺に処女を捧げたことも忘れている。


 しかし、フラッシュバックのように断片的に感覚を思い出す種だけ植え付けてあるので、俺の顔を見る度にそれを思い出している。


 今は楽人らくひとに向けている恋慕の情も、そのうち俺への気持ちに切り替わっていく筈だ。

 

 これから毎日のように顔を合わせ、フラッシュバックの頻度を少しずつ高めてみよう。


 時々追加のセックスもいいな。彩葉いろはと一緒に3Pとかも夢が広がる。


 まだ二人の調教が終わっていないタイミングでは危険度が高いプレイは避けるべきだ。


 一応彩葉いろはの方の下地は整っているが、舞佳まいかの方をこれから仕込むとしよう。


 よし、今日の放課後は舞佳まいかに追加イチャイチャ決定だな。学園内のどっかでやっちまおう。


◇◇◇


「おい、何やってるんだお前ッ」

「あ?」


 そろそろ正門に差し掛かろうと言うところ、それをくぐり抜けた瞬間、それまで幼馴染み達とのお喋りに夢中になっていた主人公アホがこちらに向かってツカツカと近寄ってきた。


 どうしたんだ急に?

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