第14話◇ゲームシステムに干渉できるか?◇

 思わぬ課題が浮き彫りになった通学路。

 まさかゲーム転生がこんなところで効いてくるとか。


 ゲーム内に存在する会話には、どうやっても介入することができなかった。


 口が開かないのだ。会話に入ろうとすると、喉に何かが詰まったような感覚になり、喋ることができない。


 反対に、彼らの会話に入ろうとさえしなければ行動に制限は掛からなかった。


 ゲーム内で好感度がどう動くのかは目視することはできない。


 彼らの会話における主人公の選択肢でプラスかマイナスがされていき、好感度は上下する。


 しかもゲームなら俺が主人公を操作するので誰のエンディングなのかコントロールすることができるが、この世界では誰狙いで進めているのか全く不明。


 それらを鑑みると、一刻も早く彼女達の気持ちを俺に向けないといけない気がする。


 万が一バッドエンドルートに入ってしまったら手遅れになりかねない。


 さて、とりあえず現状の把握も済んだことだし、昨日植え付けた種がちゃんと機能しているのかの確認作業に入ろう。


 会話を続ける六人は既にゲーム内テキストにはない言葉を使い始めていた。


 確かこのシーンは「俺達は学校に到着するまで楽しく会話した」というものだった筈だ。


 と言うことは今はまだゲームのシステム支配下ということだろうか。


 そこに介入することができるかどうかの実験だ。


「……」

「……ぁ」


 俺は既にラブラブセックスで色んな意味で種付けをした舞佳まいかの方をジッと見つめた。


 しばらく眺めていたけど気が付くことはなく、やはりダメかと思われた頃、途切れた会話の途中で舞佳まいかが俺の視線に気が付く。


 するとどうだろう。思った通り、俺の植えた種が発芽して欲情の顔を浮かべ始めた。


※主人公「どうした舞佳まいか?」

舞佳まいか「ぁ、いえ、なんでもないんです」

※主人公「そうか? 熱とかあるんじゃないか?」

舞佳まいか「なんでもありませんってば」

※主人公「ひょっとしてあの日か? 体調悪いならちゃんと言えよ」


 おいおいおいおいおいおい……。女の子対してそれ聞くのかよ……。


 しかも女の子にとってすりゃ、好きな男の子からあの日の事情なんて聞かれたくない質問トップ5だろうが。


 こいつ本当にデリカシーがないな。しかも自分のこと面白いこと言える奴とか思ってる節があったから嫌いなんだ。


 ゲーム的な評価としては、主人公とヒロイン達の漫才のようなやり取りが面白いという高評価だったのだが、ヒロインに感情移入しすぎてしまった俺としては、彼の言動は逐一不愉快だった。


 顔に出ないように聞こえないフリをし、舞佳まいかから目を逸らした。


優奈ゆうな「ちょっとラクト。その質問は流石にデリカシーなさすぎだよ」

※初音「さ、流石にそれはよくないと、思うよ」

小雪こゆき「お兄ちゃん……、メッ」


※主人公「じょ、冗談だよ。冗談ッ。悪かったって」


 女性陣からは非難囂々ひなんごうごうだった。普段主人公のことを滅多に否定しない小雪こゆきと初音までもがドン引きしている。


 恐らく好感度はだだ下がりだろう。

 どうやら舞佳まいかを真っ先に攻略したことが功を奏したらしい。


 ゲームの内容に干渉しているとみて良さそうだ。

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