第13話◇思わぬ課題◇
「亮君、今日は帰ったらお夕飯の前にお部屋の掃除しよっか」
「すっかりお嫁さんだな。じゃあ一緒にやるか」
「うん♪ そうだね♪」
俺としてもあの半ゴミ屋敷状態は早めに解消したい所だったので丁度良い。
虫でも出てきそうだし、女を連れ込むのに適した衛生環境ではないからな。
いっそのこと引っ越しできればいいのだが、そんな金の余裕もないし、早い段階でなんとかしないと。
解決する方法には2つ心当たりがある。
一つはサブヒロインの金持ちお嬢様。取り込めば経済的な問題はほぼ解決する。
もう一つはヒロインの一人に高級マンションで一人暮らしをしている女がいるはずだ。
この段階だとまだ登場していない。彼女の登場は5月に入ってからだ。
実はそいつは隠しヒロインとして、全員のエンディングを見た後に攻略キャラクターとして登場する。
それまでは5月の冒頭に引っ越してきたことが示唆され、サブヒロインとしてちょこちょこ物語に顔を出すものの、ほとんど登場しない。
まあ彼女のことはその時が来たらゆっくり語るとしよう。
ここは俺にとって、前世の俺にとって非常に馴染み深い名前の駅だ。
到着した電車の扉が開き、見知った顔が入ってくるのが見える。
(お。主人公ご一行のご到着か)
一段と目立つ美少女四人とその他一人の男。
言わずと知れたヒロイン達と主人公だ。
「私、行かなきゃ……」
「え?」
すると、
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※主人公「モテてませんから。俺はいつも通りですよ
いきなり始まった怒濤の会話。まるでそこに俺がいなくなったかのように、
だが一瞬の驚きの後に、頭の中で蘇ってきた記憶で納得がいった。
そうだ。これはゲームの序盤で繰り広げられる会話だ。
ゲームだと一画面に登場人物が多すぎてテキストだと整理が大変なので、立ち絵と共に名前が表示される。
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※主人公「いやいや、
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※主人公「ほほう。ではその理論でいくなら
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※主人公「昨今は女性にもセクハラが適用されるとご存じないのですか?」
※
※主人公「横暴だッ!」
※
なんて会話がラリーのように続いていく。
しばらく眺めていたが、会話に入り込む隙間が存在しない。
やはりこの世界はゲームなのだ。目の前の会話に割って入ろうという気がまったく起こらなかった。
いや、できなかったと言う方が正しい。
これは、思ったより由々しき問題かもしれない。
ゲームの会話に入れないということは、イベントや好感度変動に介入できないことを意味してしまう。
イージーモードかと思われたゲーム転生にも、思わぬ落とし穴というか、課題が存在したことを知らしめられた。
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