第※※話 俺の楽園を乱すあいつ

【side楽人らくひと


 くそっ。あいつ一体なんなんだっ。

 突然現われたと思ったら俺達の輪の中に割って入りやがって。


 あいつ、上級生の中でも札付きのワルで有名な霧島亮二だ。


 噂じゃ学園には滅多に来ないし、町を歩き回っては女を引っかけてホテルに連れ込んでいる。


 学園内でもアイツにいかがわしい事をされて転校を余儀なくされた女性生徒がいるとか。


 そんな噂が絶えないクズ野郎だ。知り合いの上級生に聞いた話だと、たまに学園に来ても午前中には帰ってしまうらしい。


 噂がどこまで本当なのか分からないが、金髪に染めてピアスは開け放題。シャツに隠れている部分には夥しいタトゥーが入ってるって話だ。


 既に学園をやめた後にヤクザに就職が決まっていて、転校しちまった女子生徒は風俗に売られた後だって噂もある。


 そんな奴と舞佳まいか彩葉いろは先輩が仲よさそうに話している所を見たら、いてもたってもいられなかった。


 俺が彼女達を危険から守ってやらなくちゃ。


 どうやら彩葉いろは先輩に関しては幼馴染みだって事だけど、きっと騙されているに違いない。


 舞佳まいかだってあんなチャラついた野郎と本当に仲良くなんてするはずないしな。


優奈ゆうな舞佳まいか。あの男にはもう近づくな。そばに寄ってきても無視しろよ」

「ねえラクト。いくらなんでもそれは失礼すぎない? 霧島先輩、だっけ? 確かにちょっと見た目は怖いけど」


「あの見た目が全てを物語ってるだろっ!」


「らっ君ッ。舞佳まいかもあれはないと思います。見た目で全部決めつけて喧嘩ふっかけてどうするんですか。それに彩葉いろは先輩の幼馴染みですよ?」


舞佳まいか彩葉いろは先輩もあいつに騙されてるんだ。きっとそのうちボロを出すに違いないよっ。危険な噂ばっかり付きまとう奴なんだぞ。火のない所に煙は立たないだろ」


舞佳まいかはそれには全然賛同できません。すくなくとも、今朝話した限りでいっても霧島君はそんな悪い人じゃないです」


優奈ゆうなはどう思ってるんだよ」

「え、私? そんなこと言われてもよく知らない人だし。だけど、彩葉いろは先輩が心を許してる人だし、悪い人には思えなかったんだけど」


「そうですよらっ君」


「騙されてるんだよ。とにかくアイツにはもう近づかない方が良い。小雪こゆき初姉はつねえにも言っておかないと」


「やめてくださいらっ君。今のらっ君には全然賛同できません。小雪こゆきちゃんや初音はつね先輩に先入観を植え付けないでくださいね」


「なんだよそれは。舞佳まいかはあいつの肩を持つのか?」

「少なくとも、今のらっ君の味方はできません」

「なんだよそれはっ」


「とにかくちょっと頭を冷やしてください。らっ君が反省するまで、舞佳まいかは君とお話するのはやめます」


「あっ、おい舞佳まいか


 そういって舞佳まいかは怒って自分の席に着いてしまった。


 なんだよクソ。俺達の輪の中に入ってきたのはあいつの方じゃないか。


 悪いのは霧島なのに。どうして俺が全部悪いみたいな風に言われなくちゃいけないんだ。


「ねえラクト。私もあれはよくないと思う」

優奈ゆうなまで霧島の味方するのかよ」

「そうじゃないって今朝も言ったじゃない。どうしちゃったのよラクト。霧島先輩が現われてからなんか変だよ?」


「とにかく小雪こゆき初音はつね先輩に優奈ゆうなからもいっておいてくれよ。あいつには近づくなって」


「もうっ。またそれ。……分かったわよ。舞佳まいかちゃんにも私から仲裁しておくから、後でちゃんと謝りなさいよ」


 俺はその問いかけには返事しなかった。


 なんで俺が謝らないといけないんだ。悪いのはアイツだ。

 噂なんてなんの根拠もなく立つわけないし、俺達の輪の中に入り込んできたあいつが悪いんだから。


 俺が謝る理由なんてまったくないじゃないか。


 くそっ。俺は皆の為を思って言ってるのに。誰も俺を理解しようとしない。


 今までこんなこと一度もなかった。やっぱり間違ってるのはあいつで、俺は絶対に正しいはずだ。


 なんとかしてアイツを排除しないと。俺の学園生活が脅かされる。


 覚えてろよ……。



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