第6話◇憧れのゲームヒロインとあれこれする◇

 至近距離で向かい合う舞佳まいかの顔は、ゲームでは分からなかった細かな美しさが際立っていた。


 キメの細かい肌。意外に長い睫毛。整った眉目。

 興奮と悦びで目尻から零れてくる涙の滴すらも美しい。


(催淫効果が大分効いているな)

 だがまだ慌ててはいけない。この夢のような時間を少しでも長く続けたい。


(すげぇ……俺、宮坂舞佳まいかとキスしてる)


 画面の向こう側にしかいなかった憧れのヒロインの一人。

 健康的で、はつらつとしてて、がさつで乱暴で、だけど意外にデリケートで乙女チック。


 背景の一枚絵としてしか見たことのない舞佳まいかの自室にあるピンクのチェック柄のシーツが敷いてあるベッド。


 その少し固めの感触のスプリングがギシリと音を立て、二人分の体重を受け止めた。


「はうぅ、キス、しちゃいました。らっ君と、キス」

舞佳まいか、触るよ」

「は、はい……。でも、ゆっくり、お願いします」

 いよいよお許しを得てキス以上の行為を始める。


◇◇◇


 舞佳まいかは大人になった。いやまったく最高ですね。たまりませんでしたよっ。


『間もなくスキルの発動限界時間迎えまーす☆ 15分で認識改変のスキルが解除されるのでお急ぎくださいねー♪』


「なんだとっ⁉」

「ほふぇ? らっ君、どうしたのですか?」


 三回目を終えた直後、俺の頭の中に例の妖精さんがとんでもないアナウンスをし始めた。


 あと10分で全てのスキルが解除されるってことは、俺が主人公じゃないことが分かってしまう。


舞佳まいか、俺そろそろ帰るからよ。またエッチしような」

「はう♡ 帰っちゃうんですか?」

「ああ、ちょっと急用を思い出してな。大丈夫だ、


 【エロ同人】能力で俺が注いだ快楽は彼女の中に根付いている。


 再びスキルを発動させれば快楽を思い出すだろう。

 そうだ、霧島亮二の顔を見る度にエロい気持ちになる種を植え付けてみるか。


舞佳まいか

「んあ?」


 まだセックスの余韻でぼんやりしている舞佳まいかに更に催眠を掛ける。


 キスをしながらこのセックスの記憶を消し、快感の記憶と、それを与えた俺への想いの種を植え付けておく。


「……らっ君……、あれ……? ぁ、霧島……君? ん、ぁ……すぅ」

「お休み舞佳まいか。またな」

「すぅ……すぅ……」


 俺は舞佳まいかの衣服を直し、セックスの痕跡をすべて始末しておく。

 目を覚ました時、彼女はほとんどの記憶を忘れているので、謎の液体がこびり付いているのを見たら混乱すること必至だからな。


「これでよし。っと、早くこの家からも出ないと」


 今はスキルの影響で人払いができているが、それがなくなったら破門された男が跡取り娘の部屋にいる事になる。


 記憶の中の舞佳まいかの親父は娘を溺愛しているからぶっ殺されるに違いない。


「またな、舞佳まいか

 

 幸せそうな寝顔の舞佳まいかの頬にキスをし、彼女の部屋を後にした。

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