第5話◇チートスキルを試してみる◇

 エロ同人というスキルには幾つかデフォルトの機能が備わっているらしい。


 それは昨日俺が意識を取り戻した瞬間から自覚しており、転生を直ぐに受け入れることができた理由でもある。


「らっ君が舞佳まいかの部屋に来てくれるの何年ぶりですかねぇ」

「ん~、二年前くらいじゃね?」


「いまお茶煎れてきますね。適当にくつろいでてください。あ、下着とか漁っちゃダメですよー」

「いやぁ、舞佳まいかの下着じゃな~」

「むきーっ、舞佳まいかのことなんだと思ってるんですかっ」


 なんてやりとりをしながら部屋の扉を出ていく姿を見送り、改めて部屋の中を見回す。


 ここは舞佳の自室の中だ。ゲームでは背景として描写されているが、実際に見るとそこかしこに見覚えのあるものが沢山ある。


 可愛いものが好きでぬいぐるみが飾ってあったり、机の上には写真立てが伏せられている。

 あれは主人公と幼馴染み達で行った小旅行の写真を、主人公の部分だけ引き伸ばしたものが填め込まれているのだ。


 この部屋に入った瞬間に慌てて写真立てを倒して見えないように隠したのを見逃さなかった。



「お待たせしました。らっ君グレープのジュース好きでしたよね?」

「お、サンキュー」


 舞佳まいかと主人公のエピソードは頭に叩き込んである。

 ここからは主人公として動かなければならない。


 だが大丈夫だ。舞佳まいかは現在、発動した催眠スキルの他に、エロ同人にデフォルトで付与されている能力が少しずつ効果を現している。


 まずは一つ目。【認識改変】

 今の舞佳まいかには俺の姿、声、匂いに至るまで、五感で感じるあらゆることが好摩楽人こうまらくひとのそれになっている。


「隣、座っていいか?」

「う、うん……」


 二つ目。【警戒心解除】


 長い事疎遠だった俺が舞佳まいかに話しかけても受け入れられたのは、このスキルが働いているからだ。


 幼馴染みとはいえ、同い年の男を部屋に入れて、あまつさえいきなり隣に座るなんて言いだしても受け入れてしまう。


「らっ君…」

舞佳まいか


 三つ目。【催淫】


 俺の半径数メートルにエロい気分になるフィールドを貼ることができるっぽい。


 舞佳まいかはムラムラしている事だろう。

 楽人らくひとに恋慕している舞佳まいかにとっては名前を呼ぶだけで欲情レベルが上がる。

 

「なあ舞佳まいか……俺さ、お前のこと、好きなんだ」

「ふぇっ♡ う、うそっ、でも舞佳まいかなんて」

「なんて、じゃないよ。舞佳まいかは可愛いよ」


 モジモジと太ももをすり合わせ始める。どうやらかなりエッチな気分が盛り上がっているようだな。


 だがまだ慌ててはいけない。


「う、うそっ、うそですよっ。だって優奈ゆうなちゃんや小雪こゆきちゃん、初音はつねお姉ちゃんを差し置いて舞佳まいかなんてっ」


舞佳まいかは可愛いよ。だって俺がこんなにドキドキしてるんだぜ」


 俺は舞佳まいかの手を取って心臓に当てさせた。

 本当な女の子がやるようなシチュエーションだが、ロマンチストな舞佳まいかには効果抜群だろう。


「は、はうぅ、らっ君…」


 まだだ。まだ慌ててエッチな行為をするべきじゃない。

 じっくり見つめて、じっくりと距離を詰めるんだ。


 舞佳まいかはチョロそうに見えて意外と身持ちが堅い。

 好きと伝えたその場で覆い被さろうもんなら、速攻で正気に戻って蹴りが飛んでくるだろう。


 格闘少女である舞佳まいかとガチバトルでもしたら間違いなくノックアウトされてしまう。


「はぁ、はぁ、らっ、くん……ぁあ、らっくん♡」

 

 そろそろ攻め始めるか。俺は慎重に頬に手を添え、真っ直ぐに舞佳まいかの瞳をのぞき込む。


(うおっ……これは)


 俺が舞佳まいかの瞳をじっくりと見つめていると、これぞ異世界チートスキルと言わんばかりの現実には有り得ない現象が目の前でおこる。


 なんと舞佳まいかの瞳の中に、薄桃色で半透明にぼんやりと光るハートマークが浮かび上がってくるではないか。


(なるほど、分かりやすいな)


舞佳まいか……キス、していいか?」

「ほふぇぇ?」

舞佳まいかとキスしたい。好きな女の子とキスしたいって思うのは、変か?」

「はう、はうぅ……変じゃ、ないれす……らっ君……」


 頬に添えた手をゆっくりと後頭部に回していく。

 牛歩の如く少しずつ距離を詰め、なおかつ逃げられないように体を前に倒していく。


舞佳まいか……舞佳まいかは俺のこと、嫌いか?」

「嫌いじゃ、ないれす……」

「じゃあ、好き?」

「好き……♡ 好き、好き好き、♡ 好き好き好きィ、♡ らっ、くんっ、らっ君好きれすぅ♡」


「じゃあ、キスしていい?」

「はう……ん」


 そうしてゆっくりとまぶたが閉じられていき、可憐な唇を上向けて体の力を抜いていく。


 俺はゆっくりと、そっと触れるようなキスをした。


「ん……♡ ふわぁ……らっ君と、キスしてる……らっ君、好きです……ずっとずっと好きでしたぁ」

「俺もだよ舞佳まいか。大好きだ」


 俺は主人公ではない。しかし舞佳まいかが大好きだという気持ちに一切の偽りはないのだ。


 まあ、普通の好きとは種類が違うかもしれんがな。


(よし、そろそろいいだろう)


「なあ舞佳まいか……いいか?」

「ほぇ?」


 トロンとした舞佳まいかの体をゆっくりと抱き寄せ、頬から後頭部、肩、背中、そして腰に手を這わせていく。


「んはぁ……ら、らっ君……したい、の?」

舞佳まいかが嫌ならしない」


「嫌じゃ、ないでしゅ……らっ君……と、したい」

「何を?」

「あぅ……意地悪」

「言わせたい。言って、舞佳まいか


「らっ君……と、エッチ、したいです。舞佳まいかの、処女、もらってください……」

 

 俺は密かにほくそ笑む。愛してやまないヒロインの一人である舞佳まいかと、いよいよセックスすることができるんだ。


 152㎝という小さな体。胸の膨らみは控え目だが、格闘少女だけあってしっかりとした引き締まった体をしている。


 キュッと締まったくびれは制服の上からでもちゃんと分かるくらい線が細く、スカートの下に伸びるニーソックスから覗く太ももはちゃんと柔らかい。


 興奮が最高潮に盛り上がり、俺の股間は早くも高熱を含んだ隆起をし始めていた。

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