一人目攻略 宮坂舞佳

第4話◇格闘美少女 宮坂 舞佳◇

【side舞佳まいか


 まったく。らっ君にも困ったものです。

 舞佳まいかのこといっつも子供扱いしてくれちゃって。


 楽人らくひと君とは小っちゃい頃からの幼馴染みです。ほんのりとした気持ちを抱いていることに気が付いたのは、最近になってから。


 舞佳まいかは町で武術のジムをやっているお父さんに鍛えられ、わんぱくで男の子と遊ぶことが多かったんですけど、らっ君と知り合ってから、女の子らしいことを意識するようになりました。


 優しくて、ちょっと優柔不断でデリカシーのないところはあるけど、一緒にいて楽しいらっ君のことが、舞佳まいかは好きになっていたのです。


 でも、多分それは叶わない恋なんです。

 だってライバルが強すぎるんだもん。


 家事完璧で料理上手。面倒見が良くて幼稚園からの幼馴染みの優奈ゆうなちゃん。

 か弱くて守りたくなっちゃう美少女の小雪こゆきちゃん。

 そしてエロと美少女を凝縮したような爆乳お姉ちゃんの初音はつねちゃん。


 こんな美少女に囲まれて、舞佳まいかの入り込む隙なんてどこにもないですよ。


「はぁ……今日もらっ君に話しかけるのが精一杯だったなぁ。舞佳まいかのことどう思ってるんだろう」


 やっぱり小雪こゆきちゃんみたいに小っちゃくて可愛らしかったら似合うんだろうけど……、舞佳まいかみたいながさつな女はダメだろうなぁ。


「やあ、宮坂さん」

「え? あ、霧島君」


 舞佳まいかがトボトボと家路を歩いていると、不意に知り合いが声を掛けてきた。


 昔ジムに通っていた一つ年上の元ジム生、霧島亮二君だった。

 態度が粗暴で暴れ回るから、お父さんが破門にしたんだった。


 正直苦手なタイプだ。ずっとジムで鍛え続けてきた今なら負けないだろうけど、体が大きくて目付きが怖くて、あんまり良い噂を聞かない人だ。


 周りに女の人がいっぱいで、学校にもあんまり来てない。

 でも今日は珍しく来てたな……。


(あれ?)


 前に比べると、なんだか目付きが優しくなってるような……。


 それに、いつもヒゲを蓄えてるのに今日はスッキリしてる。

 全体的に空気感が柔らかい……。


 それに、良い匂いもするような……。


 頭がぽわぽわして……なんだろう……?


「あ、あれ? らっ君?」

舞佳まいか


 たった今霧島君がいたような気がしたんだけど、まあいいや……。


 らっ君、やっぱり格好いいなぁ。抜けてる感じがまた良い。


「なあ舞佳まいか……」


 なんだか甘い匂いがする……。らっ君の声が心地良い。

 あれ? なんだろう……。腰の辺りがムズムズしてきた。


 あれ? あれ? あれ? なんでエッチな気分になってるの?


 らっ君と、エッチしたいなぁ。

 どうせ叶わない恋なら、せめて初めてだけでもらっ君にもらってほしい。


◇◇◇



 宮坂舞佳まいかは主人公の近所に住んでいる武術ジムの跡取り娘であり、自身も格闘技をたしなんでいる健康美少女である。


 人見知りをしない明るい性格で、お調子者で軽口を叩くけども、それは心を許した主人公に対してのみであり、周りからの評価はしっかり者の印象だ。


 自分の記憶の中で、彼女は霧島亮二とは顔見知りらしい。


 どうやら舞佳まいかのジムに通っていた時期があり、そこでは顔見知りだったようだ。


 とはいえ、それはその他大勢に対して示す反応と同じであり、主人公に対する特別なそれとは違う。


 まずは接点のある舞佳まいかから攻略していくとしようか。

 チートスキルの性能も試したいしな。


 その日の放課後、俺は早速舞佳まいかと接触するために以前通っていたジムの方へと足を向ける。


「やあ、宮坂さん」

「ん? あ、霧島君」


 ジムに差し掛かる帰り道の途中で舞佳まいかを発見し、俺は後ろから声を掛けた。


(さて、こっからが異世界転生のチートスキルの出番だ)


『スキル、エロ同人発動しますよー♡ 次のシチュエーションから好きな物を選んでくださいね~』


(来やがったなアホ妖精)


 頭の中に響き渡る無駄にハイテンションな声。

 俺は妖精さんと呼んでいるが、この頭の中で弦楽器を掻き鳴らすような甲高い声はなんとかならんものか。


 そして声に続き、頭の中に浮かんでくる選択肢。

 それがこれから始まるR18行為のシチュエーションを選択することになる。


『私のオススメは①番ですよー。舞佳まいかちゃんは結構スケベですからねぇ』


 ①認識改変催眠エッチ ②レイプ ③土下座で拝み倒す


 まず③は無理だろう。今の時点で舞佳まいかは主人公に対して思いを寄せており、頼んだ程度でセックスさせてもらえるとは思えない。


 ②は論外だ。俺はレイプが好きじゃない。

 確かにこれから俺は主人公から彼女達を奪い取る。


 そして意にそぐわない気持ちを強要することになるだろう。


 俺はそのことに対して躊躇するつもりはない。


 しかし、そこには幾つかのポリシーを持つと決めている。


 ・俺とのセックスがトラウマになるような行為は絶対にしない。

 ・手段や経緯はどうあれ、最終的にヒロイン達を幸せにする。

 ・主人公を積極的に不幸にはしない。


 細かいことはまたの機会に説明するとして、とりあえず今回は①の催眠エッチ一択だろう。


『はいはーいっ。それでは行ってみましょう♡ 催眠能力を付与しますよー。後は好きに使っちゃってくださーい♪』


(むむっ、これは……)


 自分の中に未知の感覚が入り込んでくるのが分かる。

 その感覚に従って意識を集中させ、目の前の舞佳まいかにエネルギーを向けて注入するイメージをする。


「ほえ?」


 あっと言う間に舞佳まいかの瞳がぼんやりと光を失い、意識を失ったかのように立ち尽くした。


 そして一瞬の後、舞佳まいかの認識は反転した。


「あ、あれ? らッ君」


 今の舞佳まいかには俺が主人公に見えている筈だ。

 さて、ここからがお楽しみだぜ。

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