第5話

「あ~、で、何?」



とうとう1対1

般若と・・・いえ、岡崎先生と

しかも、あたし、オリエンテーション、聴き始めるところだったのに

逆質問



『えっ、その・・・』


「なんだよ、やる気、あんのか?」


『・・・・・あっ・・』


「しょーがないな。それ、見せろ。」



オリエンテーション資料、没収?!

しかも、岡崎先生、斜め読み?!



「あ~、一から十まで覚えてねーよ。」



えっ?



「あ~、そこに書いてあるようにやれ。あと・・・」



没収された資料を無事返却してくれた岡崎先生はようやくあたしのほうを見た。


般若顔、3割減だけど、まだ怖い

目が鋭いから・・・

顎のラインまでも鋭い

肩幅も広くてがっちりしていて

腕組みしているから怖さ倍増


やっぱり怖い

小さく開いて何かを言おうとしているその口も



「俺はアルファベットしか読めない。」


『・・・はい?』



驚きすぎたあたしは疑問形の返事が口から出た。



「だから、レポートで長い日本語は書くな。」


『…日本語、ダメなんです・・・か?』


「尺側手根屈筋を横文字で言え。」



しかも、筋肉名を横文字で言えって・・・・

尺側手根屈筋って・・英語でなんていうんだっけ?

しかも、その筋肉、どこの筋肉だっけ?



「言えないのかよ?」


『ひっ!』



恐怖心を隠し切れずに両肩をすくめたあたしを

今度は座ったまま足を組み替えてギロリと睨む岡崎先生。



「ひっ、じゃねーよ。カンファレンスでわざわざ尺側手根屈筋なんて言ってくれる医者はいねーぞ。」


「は、はい・・勉強してきます・・・」




臨床実習初日。


逆指名を受けたあたしは

般若顔のどS臭がぷんぷん漂う岡崎先生にどうやら目をつけられたらしい。


無事に実習終了できるのだろうか?

いや、生きて岐阜に帰れるのだろうか・・・?



「わかったら、すぐに見学行け!」


『は、はい!!!!!』



あたしは殆ど説明をしてもらえなかったオリエンテーション後に、緊張しすぎて眩暈を感じながらもリハビリ見学をして初日を何とか終えた。

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