第3話

「ねえ、真緒~、松浦先生・・・カッコいいよね?」



やっぱり

臨床実習初日に緊張感なし、イケメン探しする余裕のある絵里奈をギロリと睨まずにはいられない




「でも、松浦先生、あたし達ふたりとも、指導してくれるのかな?」


『えっ、わからない・・・』


「レポート、ふたりぶんとか見るの大変じゃない?」



実習初日で緊張しっぱなしのあたしは指導者の手間とか気にかけている余裕なんてない



「絵里奈は~、松浦先生がいい!」




自ら指導者を選ぶ余裕もない


先生達とどう話をしたらいいのか

自分がどこにいたらいいのか

どうやって治療現場で見学すればいいのか

どうメモを取ればいいのか

昼食はどこで食べればいいのか

トイレはいつ行ってもいいのか

実習課題はどうやったらいいのか


言い出したらきりがない疑問や不安に押しつぶされそうになっていたから



「伊織・・・前から言っておいただろ?」


「俺がバイザーやるんですか?」


「ああ、上からの業務命令だからな。」


「マジっすか。」




廊下から聞こえてくる男の人達の声。

説得している人と説得されている人のやりとりが。




「お待たせしました。もうひとりの実習指導者です。伊織、自己紹介して。」


「・・・あ?俺が?」


「そうだよ。」


「・・・あ~、岡崎です。それじゃ。」



あたしの目の前で、椅子に腰かけることなく、肩幅の広い大きな体を少し屈めてぶっきらぼうに挨拶して立ち去ろうとした岡崎先生。


でも


「おい、オリエンテーションも一緒にやるんだよ。」


「あ~マジっすか。森村先生にオペ見学呼ばれそうなんだけど。」



隣にいた松浦先生に白衣を引っ張られて、般若顔になっている



正直、怖い

第一印象、最悪

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