5 社畜の鏡 彼の人生は荒波の予感がします(改稿済)
『社畜の鏡 彼の人生は荒波の予感がします』
はい,麗目隆です。
目の前にはたくさんの人。
土下座の構えをする俺。
別にいじめられているわけではありません。
俺が何をしているのかというと…。
本日2度目の…。
「ほんっとうに申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!」
土下座です。
あの後,すぐに駆けつけてきた試験の代表者の人に事情を説明したところ,詳しい話をするために探索者協会?の会長室に連れてこられました。
代表者の人以外にもたくさんの関係者の方がいます。
俺が事情を説明したところ,みなさんなぜか唖然としたまま動かない。
『なんでだ?』
ちなみに俺も石狩さんも怪我はなかった。
まぁ一緒にいた石狩さんは衝撃で気絶して,今は探索者協会の医療室にいるんですけどね。
「い,いや,私としては怪我人や死人といった被害が出てないからいいんだけどね?そもそも大前提の話として,どうやったらダンジョンなんか破壊できのかな?」
そう代表者の方が言う。
彼女の名前は
この人もまた千早や石狩さんに負けないほどの美人だ。
腰まで伸ばした毛先を赤色に染めた髪に,女性にしては高めの身長で,いかにも強そうな雰囲気を醸し出している。
服装は布面積が微妙に少ないところが多く,特に健康的で,とても健康的で,素晴らしく健康的なお胸が目に毒だ。
まぁそんなことはどうでもいいのだが…。
「い,いやー。ちょっと殴るときに力みすぎちゃったみたいで…。」
そう言うが,周りから「そんなんじゃ壊れないだろう。」といった言葉と共にジト目を向けられる。
ですよねー。
流石に無理がありますよねー。
『いや!!ほんとに!!ちょっと力みすぎただけなんだよ!?信じて!?』
そう言ってみるが反応はあまり良いものではない。
むしろさらに疑いの目をかけられることとなった。
『嘘やん。』
俺が泣きそうになっていると,黒元さんの咳払いをした。
「ま,まぁこの世の中じゃ戦術は隠しておくものだしな。多少は目を瞑ろうではないか。」
「ありがとうございます。」
おそらくこれは黒元さんなりの気遣いなのだろう。
だって若干顔引き攣ってたし。
まぁ過ぎたことだから良いんだけどね。
何がともあれ…。
『黒元さんが優しい人で助かった!』
尊敬の眼差しで黒元さんを見ていると,彼女が1枚のカードを手渡してくる。
それは名刺サイズで右側に探索者協会のマークがついている。
その紙には探索者IDカードと書かれていた。
「探索者IDカード?」
「あぁ。会社で言う社員証みたいな物だな。ダンジョンに入るにはこれが必要になるし,探教と連携を取り合っている店では少し贔屓してくれるぞ。ちなみに君のランクはダンジョン破壊のことを踏まえた上でSSからスタートだ。」
彼女がそう言うと周りは何故か納得したような顔で頷いている。
いつの間にかその中に混ざっていた早野さんも苦笑いをしている。
嘘でしょ!?
早野さんまで!?
俺が必死に目線で「何かおかしなことしましたか!?」と訴えると…。
『👍』
そのサインを満面の笑みで返されました。
俺のガラスのハートが少しだけ砕ける。
『あー,これ絶対やらかしたやつだ。』
涙が出てくる。
やばいね。
俺涙脆くなったかもしれない。
だって今日だけでもう10回以上泣いてるんだよ?
思い出したくない…。
◇
黒元さんにもう一度謝罪をしてから探索者協会を後にした俺は,早野さんと一緒に車で会社に戻っている。
すごいよね。
俺運転できる女性って憧れるわ。
いまだに眠っている石狩さんは後で社長が迎えにいくらしい。
実は気絶したと電話した時,めっちゃ慌てていた。
社長の意外な面を見ることができて少し感動である。
ふと早野さんが言った。
「全く。入社早々ダンジョン破壊とか…。あなたも本当に人間ですか?」
少しだけ棘のある言い方をしてくるが,多分呆れによるものだろう。
なんか早野さんんの『も』ってとこに違和感を感じたが…。
気にしないでおこう…。
ちなみに俺がダンジョン破壊をしたことを社長に言うと…
『お!やっぱり人間やめていたんだな!
これからは
と言われたのでとりあえず会社に帰ってから一発殴る予定だ。
だって俺めっちゃ気にしてるし!
ダンジョンクラッシャーなんて名前で呼ばれたら恥ずかしくて死んでしまうわ。
「まぁ,社長が連れてくる人は大体馬鹿みたいに強い人ばっかなので薄々勘付いてはいましたが,ダンジョン破壊はあなたが初めてですよ。」
そう言って早野さんはため息をつく。
まぁ,あの人も人を見る目はありそうだからな。
まだ出会って少ししか経っていないが,あの人のオーラはうちの社長(淳二)と同等のものだ。
「なんか早野さんに申し訳ないです。すいません。」
これは俺の本心からの謝罪だ。
だってしょうがないじゃん。
この人ただでさえあの社長の面倒を見てたんだから。
これからは面倒な事を起こさないようにしよ…。
「いえ,ある程度覚悟はしていたので。それと,これから私のことは千早と呼んでいただいて構いません。敬語も入りませんし。」
少し顔を赤らめながら言う彼女に「やっぱり美人は絵になるな。」と思う。
実際のところどれくらい美人かというと,早野さんは街中の人がちらほら視線を送るぐらい美人なのだ。
俺は恋愛をしたことがわからないのでなんとも言えないが,おそらく学生時代もモテていたのだろう。
「わかったよ。会社では千早の方が上だから,今まで通りでいくけどいいかな?」
俺がそう聞くと千早は何かを堪えながら首を縦に振った。
大丈夫かな?
◇
しばらくして外を見ると,何故か俺の家の前についていた。
俺の家と会社の方向って真逆だったような気が…。
会社に行くのではないかと彼女に聞こうとしたが,それを塞ぐように彼女が口を開いた。
「今日はお疲れだと思うので家でゆっくり休んでください。会社への報告は私がしておきますので。」
彼女に気を遣わせているんだなと若干罪悪感を感じながらも,俺は言葉に甘えて車から降りる。
ここで引き下がらないのは逆に失礼だと思う。
うん。
これは大丈夫だよね?
「ありがとうございます。また今度,今日のことも含めてお礼をさせてください。」
「わかりました。楽しみにしておきますね。明日から出勤は8時30分になりますので遅れないように気をつけておいてください。それではおやすみなさい。」
そう言って彼女は会社に向けて車を発進させた。
彼女の車が見えなくなるまで見届けた俺は,家の中に戻る。
そしてご飯を食べながら今日のことについて振り返る。
なんか過去1濃い日だったような気がするな。
すっごい疲れましたね。
もう動きたくないや。
「さて,今日は早めに寝るとするか…。」
全てを終えた俺はベッドに入って目を瞑る。
それから意識が飛ぶまでに時間はかからなかった。
寒くなる季節。
俺はまた一歩,人間から遠ざかるのだった。
➖➖➖
もし面白ければ⭐︎や♡,コメントよろしくお願いします。
これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます