初陣 会社はダンジョンですか?

1 社畜の鏡 彼は今日も休みを夢見てます(改稿済)

『社畜の鏡 彼は今日も休みを夢見てます』


 俺,麗目うららめたかしはどこにでもいる20歳の社畜だ。

誕生日は4月1日。

並行世界とこの世界が合併した日に産まれた。

物心ついた頃にはすでに父親はおらず,母さんと2人で暮らしてきた。

俺は一度だけ母さんに父さんのことについて聞いたことがある。

母さんは『いつか会えるよ。』と言った。

俺はその時の母さんの顔をいつまで経っても忘れることができない。

母さんは生活のために毎日フルで仕事をしていた。

そのため家に1人でいることが多かった。

もちろん寂しかったが,それ以上に感謝の気持ちが強かった。

そんな感じに小中と卒業した俺は高校に入ってからとある人に出会った。

酒呑さかの淳二じゅんじという男だ。

バイトの帰りに通り魔に襲われそうになったところを助けてもらったのだ。

俺は高校を卒業してからその人の会社に入社し,今は社畜だがそこそこの収入で何不自由のない生活を送っている。

いや…。

送っていた。


そんな俺にも人生の転機が訪れたのだ。

大手企業である『STEP UP株式会社』に勤務することになったのだ。


…。


…………。


………………………。


その理由は…。

まぁどこぞのバカ社長のせいだ。


もういいや!普通に喋っちゃえ!


急遽入社した会社での俺の仕事はたったの3つ!

1つ! 国内のダンジョン攻略!

2つ! 会社でのデスクワーク!

3つ! 週2でのダンジョン攻略配信と通常の配信!


この3つだけだ!

少ないだろ〜?

え,多いって?

はいごめんなさい。

めっちゃ大変です。

いや新人にやらせる量じゃないですよね!?

俺一応『日清社』と『STEP UP株式会社』に兼任してるんですよ!?

俺それだけで仕事量は普通の人の2倍ですよ!?

だから普通もうちょっと仕事の量は減らしてくれるはずだよね!?

え,そうだよね?

俺おかしくないよね?

とりあえず俺が言いたいのは「忙しい」ということだ!

まぁ,給料が良いのでオッケーです。

世の中金じゃオラー!

はいすいません。


もう入社してだいぶ経つけど,いろんなことがありましたね。

笑えるようなことから泣けるようなことまで本当にとありました。

なんなら世界危機に関わることまでありました。

そんな経験を得て今,俺はこう思います!


『           』と。


そんな馬鹿みたいに楽しく,馬鹿みたいに苦しい生活を見ていただけるとありがたいです。

とりあえずもう2度と経験するのはごめんですね。


俺は過去の思い出に更けながら,隣に座る貴方と暮れる太陽を眺めるのでした。



2023年


 今まで平凡な社畜生活を送っていた俺はある日,勤めていた『日進にっしんしゃ』の社長室に呼び出されていた。


「よく来てくれたね!麗目くん。」


この人は日清社の社長である酒呑淳二さんだ。

この人の見た目で最初に目が止まるのは髪色だろう。

真っピンクである。

そう。

真っピンク。

蛍光色なのだ。

どうやら幼馴染の人とお揃いらしく,結構思い入れがあるのだとか。

ちなみに顔は意外とハンサムで,イケおじというやつだ。

まぁ髪色で中和されているのだが…。


「えっと,今回はどのようなご用件でしょうか?」


正直嫌な予感しかしない。

いや,予感じゃない。

確信です。

社長が俺を呼ぶ時は大体変なことしか押し付けてこない。

アフリカへ2ヶ月の出張をさせられたり,喫茶店のオーナーを任されたり,入社1年目で次期社長候補まで地位を上げられたりと結構はちゃめちゃな人だ。

うん。

なんというか猪突猛進という四字熟語をつけるに相応しい人だと思います。

その社長自身も,実は世界各国を飛び回っているのだ。

社員にだけではなく自分もやるところは普通にすごいと思った。

人望はあるし,元々は小さな企業が大きくなったのもこの人のおかげだったりする。

何より,俺が通り魔に殺されかけた時に助けてくれた命の恩人でもある。


『なんだかんだ言って,いい経験しかなかったからこの人には頭が上がらないんだよな…。』


まだ1年ちょっとしか経ってはいないが,だいぶ濃い経験をしていると思う。

良い意味でも悪い意味でもね。


「いやはや,今回はとても大きなことをするぞ!」


「はぁ。それで,何をするんですか?」


もう何を言われても動じない。

そう心に決めました。

これは決してフラグではないからね。


「『STEP UP株式会社』を知っとるか?」


「ブフッwまぁ,知らない人はいないですよね。」


社長の言い方がどこぞのトナカイに似ていて吹いてしまった。

これは不可抗力だな。

しょうがないしょうがない。


「実はそこの会社の社長とワシは幼馴染での,君のことを話したら「是非ともうちに欲しい人材だ!」っていって聞かないのじゃよ。だから今日から君にはこの会社の社長兼,あっち側の部長を頼みたいと思う!」


なるほどなるほど。

この会社の社長とSTEP UP社の部長をやれと。

なるほどねぇ…

って


「はぁ!?」


何いってるんだこの人は!?

バカじゃないのか!?

話が地球一周して俺の後頭部に突き刺さったぞ!?

そして見事にフラグが成立したぞ!?

これで俺も一級フラグ建築士だ!

やったね〜。(泣)


「ちょっと社長!?あなた1回病院で診てもらったらどうですか!?話が突飛しすぎですよ!?てゆうかなんでそんなことを早く言わなかったんですか!?しかもなんで私が社長なんです!?あなたはどうするんですか!?」


「えぇー。ワシもう歳じゃし,そろそろ世界一周のバカンスに行きたいー。」


「アホですか!?あなたまだ50代でしょ!バカンスするなら定年退職してからにしてください!というかあなたほとんどの国に行ったことあるでしょ!」


「えー。確かに行ったけど,仕事じゃったしー。」


「職務放棄は許しませんよ社長。」


もうだめだ。

この人何言っても聞かねぇや。

最近社長の爆弾の対処の仕方について悩んでいるんですが良い方法を知っている方はいませんか?

なるべく警察に捕まらないことでお願いします。


「はぁ。分かりました。とりあえず社長の件は取り消すとして,『STEP UP株式会社』の件は引き受けますよ。ちょっとあっちの技術に興味もありますしね。」


STEP UP社はVtuber事務所である。

そしてこの日清社もVtuber事務所だ。

俺はエンジニアではないが,そっち系の技術はこれからの社会で覚えておいて損はないと思う。

だからこの件を引き受けることにしたのだ。

まぁ9割給料目当てなんだけどね。

しょうがない。

ご愛嬌ってことで。


「ありがとう麗目くん!それじゃあ頑張ってきてくれたまえ!」


「ちなみに何時に行けばいいんですか?」


「11時じゃ!」


俺は社長室の時計を見る。

この時代には珍しいレトロチックな時計だ。

木でできており,とても精巧に作られている。

値段もそれなりにするのだろう。

おっといけない,話が逸れた。

現在時刻は〜?


【現在時刻10時30分】


「本当にバカじゃないんですか!?もっと早く言ってくださいよ!それじゃあ行ってきます!」


「頑張ってのぉー。」


今になってこの会社の未来が不安になってきた。

そしてそれと同時に社長に対して殺意が芽生えだしていた。


『いつか絶対しばいてやる!』


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これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。

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