Reina's eye☆ケース2:差し伸べられた神の手

第10話

病院に到着した私は左腕に点滴が繋がったままストレッチャーに乗せられて超音波検査室へ連れていかれた。


「もう吐き気はないか?」


私を助け、ここまで同行してくれた産科医師はさっきまでとは異なり柔らかい表情で私に声をかけた。


なんだかホッとして、口の中がなんだか生臭かったが、私はゆっくり頷いた。




「じゃあ、ここに横になってお腹出してくれる?」


私は彼に促されるままにストレッチャーからゆっくりと起き上がり、検査室内のベットに横になる。



蛍光灯が消され、検査室内は超音波検査用のディスプレイだけが光を放っていた。


コレ、薬じゃないから・・・と彼は呟きながら、私のお腹の上にちょっぴり温かい青色のジェルを載せた。




生まれて初めて受ける超音波検査。

検査室内の静けさも手伝ってか私は緊張感を覚えずにはいられない。


彼はT字型の受信機らしき物を手に取り、それにも青いジェルをそっと載せてゆっくりと私のお腹にあてた。



電気が体に流れると勘違いしていた私は一瞬体を強張らせたが、ビリビリとかしないから・・・と言われ、ふうっと息をつく。



そして少しだけ余裕が出てきた私がこっそりと覗き込んだ超音波の黒い画面。


そこには白い影が絶え間無く動き続けていた。





『あの・・・・』


検査結果が気になる私は彼に話しかけた。



「ん?」



ディスプレイの光に照らされた彼は優しく微笑みながら私の方を見た。



その表情は駅で助けてくれた時とは別人のようにやわらかく感じられた。


「気分悪い?それともトイレ?」


そう問いかけるその声も。


私は小刻みに首を横に振った。



「じゃあ、今、大事な箇所を診ているから、ちょっとそのままでいてくれる?」


『ハイ』



私が頷きながら返事したのを確認した彼は再び黒い画面の白い影の行方を追った。


しばらくの間、検査室内は超音波検査機材の機械音だけがウイーンという音を立てて響き渡り、私も彼も黙ったままでいた。



何か話しかけるべきか

それとも

検査中だからこのまま黙ったままでいいのか

そう迷ったまま天井を見上げていた私。



「お腹、もうしまっていいよ。」



彼がようやく口を開き、私のお腹の上に残っている青いジェルを柔らかいタオルでそっと拭き取ってくれた。



横になったまま衣服を元に戻す。


その後、私に背を向けたままプリントアウトされている検査結果をじっと見つめているらしい産科医師の次の言葉を待っていた。





私は死のうとしていたのに

なんでこんなに検査の結果が気になるんだろう?


こんなにも気持ちの弱い私の中に

まだ赤ちゃんはちゃんといるんだろうか?

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