第11話
「コレ、検査の写真。」
その声と共に検査室内に再び灯りが燈った。
写真を手渡そうとする産科医師の顔。
蛍光灯が燈されたこともあり、はっきりとわかる。
ついたさっき見せてくれたやわらかい表情から引き締まったものに姿を変えていたことが。
そのせいか喉の奥のほうが締め付けられるような違和感を感じる中、彼は口を開いた。
「おそらく・・・・妊娠13週目だ。」
私は恐る恐るその写真に手を伸ばした。
それを受け取ろうとしても手が震えて上手く写真がつかめない。
私の異変を察した彼は私の手を軽く支え、その写真を私の手に掴ませてくれた。
とうとう手の中に収まったその写真には楕円の中に小人のようなものが映っていた。
その小人のようなものには、頭と腕と脚らしきものがうすボンヤリと映し出されていた。
私の赤ちゃんだ
生きてるんだ
それを認識した私はただただ怖くなった。
私があのまま電車に身投げしていたら
この子を身勝手に殺してしまってたんだ
でもこの子は今
生きてる・・・・・・・・・・・
自分を、この子を殺そうとした私が
そんな弱い私が
たった一人でこの子を育てていけるんだろうか?
私は居ても立ってもいられず、左腕に挿し込まれている点滴を引きちぎって検査室を飛び出した。
そして私は病院の屋上へ向かった。
今度こそ・・・・・・・・
今度こそ死んでしまおう・・・と。
屋上のドアを開けると目の前には電車に飛び込もうとしたあの朝と同じような真っ青な空が広がっていた。
私はその空をじっと眺めながら、ゆっくりと前へ進んだ。
今度こそ
今度こそ
・・・・・前へ
歩を進める私は前から吹き付ける強い風に煽られよろめいた。
前に進む事しか頭にない私はなんとか立ち直って、更に前へ進み、防護フェンスに右手をかけた。
さあ、これをまたいで
もっと・・・・・もっと・・・・・
前へ行こう
このフェンスを越えてしまえば
私は今度こそ
楽になれるはず
私はフェンスを越えようとゆっくりと脚を挙げた。
その時だった。
「死のうっていうなら、好きにすればいい!!・・・でも」
聞き覚えのある叫び声がドアのある方向から聞こえてきた。
「でも、、、俺はお前のお腹の子をなんとしてでも、、、なんとしてでも 救うから!!!何度、お前が死のうとしても、、、、俺は何度でもその子を、、、お前を、、救うから!!!!!」
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