第8話
ずっと捜していて、でも全く見つからなかった彼女
もしかして彼女に似ている人物かもしれない
もう随分会っていなかったんだ
その可能性だってある
でも、目の前にいる彼女のその目鼻立ちは
俺の記憶に鮮明の残る彼女の母親に瓜二つ
こんな偶然な出来事に、ふわふわと地に足が着かなくなりそうな自分がいる
とりあえず今は彼女を助けることが先だと自分に言い聞かせ、救急車の手配を依頼しながら、彼女の身体の状況を把握することに集中することにした。
そんな中見つけた。
彼女の左手首に貼り付けられている絆創膏の下に刻まれていた、まだ赤味の残るリストカットらしき傷跡。
彼女をここまで追い詰めたモノは
いったいなんだったんだろう?
なんで俺はもっと早く彼女を
この手で見つけ出してやれなかったんだろう?
ココロもカラダも
こんなにも傷付く前に
もっと早くに・・・・・
冷静でいなくては・・・と到着した救急隊員に彼女の状況を伝えながらも、自分のココロの中は揺れていた。
医師になってからもう何年経つのだろう?
緊急時にこんなにも揺れる自分がいるのなんて初めてだ
同乗した救急車の中で、乗せられた担架に横たわる彼女を見つめる
涙の粒が睫にひっかかったままぎゅっと閉じられた目
濡れた頬は赤味なんか一切なくて
救急車内の車内灯で見ても、顔色の悪さは明らか
お腹を擦る右手はまるで腫れ物を触るような手つきで
『今から僕が勤務している病院へ向かうから、今から聞く事に答えてくれるか?』
そうであって欲しくはないけれど、確認せずにはいられなかった
ぎゅっと閉じたままだった目をおそるおそる開いて俺のほうを見つけた彼女に
『伶・・・いや、君は・・・お腹に子供いないか?』
もしかして妊娠しているかもしれないという事実を
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