第15話

婿・・・か・・・




いつもは、”俺はそんな器とかじゃないですから”ってサラリとかわすのに、久しぶりに酒を飲んだせいか、そんなことが未だに頭に残ってしまう



結婚とか真面目に考えたことなかった


これだけ忙しくければ、それが現実味を帯びることなんてない



それにこの忙しさに嫌気が差したりすることもないぐらい、頭の中の大半は仕事で埋め尽くされている



でもなによりも


俺が守りたいのはたったひとつ



仕事で埋め尽くされている頭の中にずっと居座り続ける彼女

・・・・ただそれだけだ




それだけなのに


なんでそれがいつまで経っても叶わないのは


・・・・彼女の消息を未だに掴めていないから








『この世の中、32才ともなると、結婚とか考えなくてはいけないのか?』




溜息をつきながら、切符を購入した時にスラックスのポケットに入れておいたおつりを取り出して、自動販売機の硬貨投入口に入れた。




『やっぱ、無糖だよな。』




微糖コーヒーと間違わないように、もう一度目視で確認して、無糖コーヒーのボタンを押す。







ゴロゴロ・・・ガコン!



もうすぐ電車が来るという駅員のアナウンスと重なる缶コーヒーが自販機内で転げ落ちる音。



朝方は少し寒くなってきたせいか、少しひんやりする手を伸ばして、その缶コーヒーを取り出し口から取り出そうとした瞬間だった。

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