第6話
「今から僕が勤務している病院へ向かうから・・・今から聞く事に答えてくれるか?」
救急車の中、ベットに横になっている私の目をじっと見ながら産科医師は問いかけた。
「伶・・・いや、君は・・・お腹に子供いないか?」
なんでわかるの?
産科医師だから?
でもまだお腹なんか出っ張ってないし
なんでだろう?
私はしばらく黙ったまま自分が妊娠してる事をなぜこの産科医師が察知したのかを考えていた。
「病院に着いたら検査しなきゃいけないんだ。妊娠してたらレントゲン撮れないから、答えてくれる?」
彼は真剣な眼差しで冷静な口ぶりで問いかけた。
『・・・・・・・・・・・は、、い。多分。』
「・・・・・やっぱり」
彼は額に手をあてながら目を閉じ俯いた。
「妊娠何週目かわかるかい?」
『・・・・・・わかりません。昨日、妊娠検査薬で調べたばかりだから。』
「お腹の子供の父親には連絡とれるか?もしかしたら、切迫流産してるかもしれないから。」
切迫流産?
何、それ
彼は再び私の目をじっと見つめて問いかける。
その目は鋭さを増しており、言い訳をする余裕すら私に与えない。
だから私は聞かれた事には正直に話す事にした。
『父親は・・・いません』
産科医師は目を閉じながら小さく溜め息をついた。
「とにかく、病院に着いたらすぐに超音波検査をするから、病院に着くまでは少し眠って休むんだ。」
彼は私にそう話しかけながら、そっと毛布を私の肩までかけてくれた。
救急車のサイレンが甲高い音でけたたましく鳴り響く中、毛布をかけられた私はなぜかすごくあったかいものを感じていた。
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