第10話

私は右腕を強く掴まれ右斜め後ろに引っ張られた。



その2、3秒後に感じたのは電車が運んで来た突風と雨上がり特有の線路の錆臭いニオイ。



私は全身の力が抜け、よろめきながらホームにしゃがみ込んだ。






また、死ねなかった・・・・




その瞬間、激しい嘔吐が私を襲う。






こんなにたくさんの人がいる所で吐くなんて

今までの私なら絶対に有り得ない様だよ


この場から逃げようとしても力が入らない


これこそまさに生き地獄・・・・・・・






「大丈夫か?!そのまま動くなよ・・・・すみません、救急車呼んで下さい。」



私を強く引っ張ったらしい男の人が近くで様子を窺っていた人達に声をかけた。


嘔吐で口元が汚れてしまった私は何も言えないままその男の人に自分の上半身を抱えられていた。




その人は躊躇うことなく、ポケットから取り出したハンカチでそっと私の口元を拭ってくれる。



そして、腕時計を見ながら私の右手首に指をあてつつ、私の左手首に無造作に貼ってあった絆創膏を見つけ、ゆっくりと剥がしとってしまった。





「・・・・・・リストカットもしてたんだ・・・・・・・・」

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