第4話
本気で付き合っていた彼氏に三股をかけられた上に捨てられ、精神的に堕ちるところまで堕ちていた私
そんな私に突然のしかかってきた解雇によって自分で自分の手首を切るリストカットにまで手をそめたけど死にきれなかった私
電車への身投げを試みようと日曜日の早朝、最寄りの駅から2つ離れた、知人がいなさそうな駅に歩いて向かう。
昨日までの大雨が嘘のように、その朝の空は雲ひとつない澄んだ青色。
チチチと小鳥のさえずりがかすかに響いていた初秋の朝。
そんな気持ちのいい朝だったけれど・・・
人生に行き詰まったと思い込んでいた私は死へ向かって歩き始めていた。
駅に着いた私は切符の自動券売機で160円切符を買おうとした。
チャリーリーーーーン
自動券売機に入れ損なった50円玉が指をすり抜けて床の上に転がり落ちた。
それを拾おうとした私の右手はかすかに震える。
やっとの思いで50円玉を拾い上げ、切符を買った私はようやく自動改札を通った。
階段をゆっくり一歩ずつ昇っていく先には、リュックサックを背負った4人の親子連れが楽しそうに話をしながら昇っていた。
父親、母親、小学生位の男の子、幼稚園位の女の子の4人家族。
今からハイキングか動物園にでも出かけるんだろうか。
傍から見ていても温かみのある家族の姿。
1才から母親とふたりぼっちで、母親が亡くなった18才からはひとりぼっちになった私には眩しすぎる光景。
彼らの足取りにつられ、私も階段を昇りきってしまい、右手に握られていた160円切符もじっとりと湿る。
私にはあの温かい家族も
包み込んでくれる彼も
私を必要とする人も
誰もいない
だから、これでいいんだ・・・・
私はようやく覚悟を決めて駅のホームの白線まで近付く。
「間もなく、電車が参ります。白線の内側まで下がってお待ち下さい。」
低いしゃがれ声をした駅員のアナウンスが響いた。
けれども、覚悟を決めていた私は白線の内側から外側へと跨ぐ。
「危ないですよ!!!!下がって下さい!!!」
駅員のアナウンスが大声になっても私は怯むことなく前へ進もうとした。
あと、2、3歩前へ行けば楽になれるはず
真里、ゴメンね。明日、新栄のカフェでランチする約束してたのにね・・・・
かけがえのない大学時代を送る事ができたのは真里がいてくれたお陰だよ
お父さん、お母さん、ゴメンなさい
本気で付き合ってた彼氏に三股かけられてて、おまけに解雇までされちゃった
それまでの人生、筋書き通り完璧だったのにね
今になって壁にぶつかりまくりだよ
自業自得なこともあるけどね
もうどうしていいかわかんなくなったから
私も今からそっちへ逝くね
怒らないで、温かく迎えてくれるよね?
だから、そろそろ、一歩前へ・・・
「・・・・・・・・お前・・・・何やってるんだ!!!!!!」
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