第8話 友達

 山岸やまぎしが唖然としている。またしても超絶美少女からの【名乗り】を聞かされて、唖然としてしまっている。そして、周りにいる生徒たちは騒然としている。


 超絶美少女によるクソビッチ宣言。それは凄まじいまでの破壊力を有していた。まるで神のお告げのようだ。思いがけない宣言を聞いた生徒たちは、大いに戸惑いながら騒いでいる。そんな彼ら彼女らは、超ド級の宣言を聞き逃した生徒たちに神の言葉を伝えている。そうやってバケツリレーのようなモノが行われてしまっている。


 そんな中、非常に大きな声が響き渡る。


「おい、オマエら!! いつまで廊下にいるんだ! 早く教室に入れ!」


 現れたのは、複数の教師たち。その中でも、一際大きな体をしている教師が叫んだ。筋骨隆々の体躯たいくにジャージ姿、首にはホイッスルを掛けている。まず間違いなく体育教師だろう。


 とにもかくにも、そうして事態は収集し、俺や超絶美少女を含む生徒たちはみな、自分の教室へと戻っていった。その後、俺の教室では担任による程々に長い話があり、今日は解散。よって帰宅するために席を立つと、隣の席にいる超絶美少女から呼び止められる。


小野寺おのでらさん、一緒に帰りませんか?」


 穏やかな笑みと、甘い声。俺は二つ返事で対応し、二人揃って下駄箱へと向かう。その道中、見知った顔に出くわす。そう、山岸 香音かのんである。


「なっ!? ア、アンタたち・・・、一緒に帰る、の?」


 またしても唖然としている山岸の瞳は、ゆっくりと動いた。俺に向いたり、超絶美少女に向いたり。


「はい、勿論です。友達ですから」


 ニコリと笑い、言った超絶美少女。すると山岸はイラッとした顔を見せる。


「ア、アタシも一緒に帰る!」


 山岸の声は相変わらず大きい。そんな彼女の言葉を聞き、超絶美少女は不思議そうな顔をする。


「どうしてですか?」


「アタシも小野寺の友達だからよ!」


 いや、その設定はもうイイんだが・・・。


「そうですか・・・。でも、すみません。小野寺さんは今日、ワタシと一緒に帰りますので」


 ペコリと頭を下げた超絶美少女。すると、山岸の声は一層大きくなる。


「別に三人で帰ってもイイでしょ!!」


「それはダメです。小野寺さんが忙しくなるので」


「・・・はぁ!? どういうことよ?」


 うん、どういうことだ? 俺も知りたい。


「ワタシは小野寺さんと会話をしながら帰ります。それなのにアナタがいたら、小野寺さんはアナタとも会話をしなければなりません。そうなると、小野寺さんが大変です。それに、ワタシと小野寺さんの会話時間が短くなってしまいます」


 ・・・なにそれ?


「三人で喋ればイイでしょ!!」


「・・・なるほど。しかしワタシとアナタは友達ではないので、それはムリです」


 どういう理屈?


 そういえば入学式のあと、超絶美少女は同じようなことを言っていた。山岸に対して、『友達じゃないなら、なんの話があるのか』とか、なんとか。


「なんなの、アンタ!?」


「ワタシは、完全な───」


「それはもうイイ! アンタ、友達としか喋らないの!? どういうことよ!?」


「ワタシは、お友達を優先しますので」


「クッ!」


 苦虫を噛み潰したような顔をした山岸。しかしすぐにニヤリと笑う。


「じゃ、じゃあ・・・。ワタシとも、友達になればイイじゃないの?」


「えっ!? イ、イイんですか!?」


 両手を口元に添え、大きく驚いた超絶美少女。彼女の言葉を受け、山岸もまた、少し驚く。


「え? いや、それは・・・」


「あ、イヤなんですね・・・」


 なんとも悲しげな表情を浮かべた超絶美少女。すると山岸は慌てる。


「そ、そうじゃない! そうじゃないわよ! そうじゃなくて、アンタはイイの? アタシと、友達になっても・・・」


「はい、ドンと来いです」


 なに? その言い回し・・・。


 爽やかな笑顔で力強く自身の胸を叩いた超絶美少女。そんな姿を見て、山岸は戸惑っている。また、超絶美少女の返答内容にイマイチ釈然としてない様子。しかしながら、とりあえず二人は友達関係を結んだようである。


 この二人・・・、この先、大丈夫なのか・・・?



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