第7話 修羅場?
「それでアナタは、
「は、はぁ!? 友達? そんなワケないでしょ!」
かなり不機嫌な様子で否定した山岸。すると超絶美少女は少し目を見開いたかと思うとパチリと瞬きを一度して、瞬時に俺の顔を見た。
「では小野寺さん、教室に戻りましょう」
「あ、うん・・・」
大人しく超絶美少女の言いなりになり、
「ちょっ、ちょっと! 待ちなさいよ!」
その声が聞こえるや、超絶美少女は即座に振り返る。
「なんですか?」
無表情に近いような顔で言った超絶美少女。それに気のせいか、今の声からは、あの独特の甘さが感じられなかった。なんだか少し怖い。そんな彼女の言葉を受け、山岸が吠える。
「勝手に行くんじゃないわよ! まだ話があるのよ!」
「話? なんの話ですか?」
超絶美少女が小首を傾げた。すると山岸は更に声を荒げる。
「アンタには関係ないでしょ! アタシはソイツに用があるのよ!」
「ここには『ソイツ』なんていう名前の人はいません」
そりゃあ、そんな名前は聞いたことないけどさぁ・・・。
「行きましょう、小野寺さん」
「え? あ・・・、うん・・・」
なんとも気丈に振る舞う超絶美少女。初めて会ったときとは、まるで別人のように見える。そんな彼女の姿に俺はすっかり
「待てって言ってんでしょ!」
山岸により、俺の体は止められた。彼女に右腕を掴まれたのだ。すると超絶美少女までもが俺の左腕を掴む。
「しつこいですね、アナタ。ワタシと小野寺さんは教室に戻るんです。邪魔をしないで下さい」
またしても強く出た超絶美少女。その表情は些か険しい。
「先に邪魔したのはアンタでしょ! ワタシが小野寺と喋ってたのに!」
負けじと山岸が怒鳴った。すると超絶美少女は俺の腕をグイッと引っ張る。それにより、俺の体は彼女の元へと引き寄せられた。結構な力強さだ。
「アナタは小野寺さんのお友達ではないんですよね? だったら、なんの話があるのですか? さっきから大きな声を出して、小野寺さんに迷惑を掛けないで下さい」
「なっ!? 迷惑って───」
「ワタシは小野寺さんの友達です、アナタと違って。だから小野寺さんは、ワタシが守ります」
言うや、山岸の顔を強く睨んだ超絶美少女。どうやら彼女は本気のようだ。本気で俺のことを守ろうとしているようだ。そんなに俺のことが大切なのだろうか。
「ま、守るって・・・。アタシは別に───」
「友達が変な人に絡まれていたら、ワタシは全力で助けます」
「【変】って、なによ! アタシは変じゃないわよ! 変なのは、アンタの方でしょ!」
「ワタシのどこが変なのですか?」
キリリと凛々しい超絶美少女の横顔を見て、俺は思う。
いや、変だよ。自分のことをクソビッチとか言ってるのは・・・。
いやいや、そんなことを思っている場合じゃない。なんだか
自称クソビッチである超絶美少女は、『仲良くして下さいね』と俺に言っていた。一方の山岸は、中学時代に俺に告白をしてきた。そんな二人が俺の左右の腕をそれぞれ引っ張り合っているとなると、これは本当に修羅場になっているんじゃないのか。
いやいや、超絶美少女はともかく、山岸はもう俺のことなんて好きじゃないだろう。色々とあったワケだし・・・。とにかくまぁ、ここは、なんとか穏便に片付けないと。
「ま、待って、待って! 俺と山岸は友達なんだよ! だから話をしてたんだよ!」
「・・・え? ・・・そうなのですか?」
超絶美少女はキョトンとして、山岸の顔を見た。そこで俺も、すかさず山岸の顔を見る。そうして目で、なんとか訴えかける。
友達だと言え! 友達ってことにしとけ! そうじゃないと、ややこしいことになる!
すると俺の気持ちが通じたのか、山岸は言う。
「あ、あー・・・、そうよ。アタシは小野寺の、と、友達よ・・・」
釈然としない様子を見せた山岸。しかし、これで騒ぎは収まるだろう。
「それなら、どうして先程はウソをついたのですか?」
「え? そ、それは、その・・・。じょ、冗談よ!」
どんな冗談だよ・・・。
「あぁ、なるほど、冗談でしたか。これは失礼しました、とんだ
両手を体の前で重ね、深々と礼をした超絶美少女。その姿に山岸は戸惑う。
「な、なんなのよ・・・、アンタ・・・」
すると超絶美少女はニコリと笑って、言う。
「ワタシは、完全なクソビッチです」
・・・いや、山岸はそういうことを訊いてるワケじゃないと思うけど・・・。
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