第3話 そっちじゃないから!

「あの・・・、お名前は?」


 自称クソビッチ───いや、美少女が首を傾げた。その姿は、なんとも可愛らしい。いやいや、なにもしていなくても、充分に可愛いのだが。


 そんな美少女の姿にほだされそうになった俺だが、ふと思う。人に名前を尋ねるときは、先に自分の名前を言うのが礼儀じゃないのか───と。


 しかしそんな堅苦しいモノは、高校生には不要かもしれない。というか、クソビッチを自称する相手に礼儀を求めても、仕方がないのかもしれない。礼儀やマナーなど、クソビッチには必要ないだろう。上等な礼儀やお堅いマナーよりも、上手な前戯や固いマラの方を欲していることだろう。彼女が欲しているのは、勃起しているモノだろう。


 ・・・あぁ、いけない。下品な考えが頭をよぎってしまう。とりあえず自己紹介をしよう。


小野寺おのでらだよ」


「なるほど、小野寺さんですね。覚えました」


 そりゃあ、まぁ、それくらい覚えられるだろうに。


 なんとも丁寧な報告をしてきた美少女。そんな彼女は、言葉遣いも丁寧だ。とてもクソビッチには思えない。しかしその直後───。


「小野寺さん。ワタシのことは、クソビッチと呼んで下さいね」


 だから呼べるかよ!!


 ニコニコと笑いながら、再びとんでもない【お願い】をかましてきた美少女。


 彼女は一体、なんなのだろうか。物腰は柔らかいのに、突然とてつもない爆弾発言をしてくる。とんだ爆弾少女だ。


 いや、地雷か。踏んだらヤバそうだ。いやいや、踏んだりしないけど・・・。とにかく、あまり関わらない方がイイかもしれない。そうじゃないと俺の高校生活が、平穏無事に済まないかもしれない。


 そんなことを考えていると、美少女は不思議そうな顔をして、再び首を傾げた。おい、可愛いぞ!


「どうしました? ・・・あ!」


 ハッとした表情を見せた直後、口を隠すように右手を動かした美少女。その仕草も、やはり可愛い。


「呼び捨てに抵抗があるなら、クソビッチさんと呼んで下さい」


 抵抗があるのは、そっちじゃないから! クソビッチの方だから!


 なんだろう、なんなんだろう、このコ・・・。


 俺は戸惑いながらも、美少女の顔から視線を外せなかった。・・・だって、美少女だから。


「あの、小野寺さん・・・。もし良かったら、えと、あの・・・。ワタシと、お友達に───」


「うん、イイよ!」


 即答してしまった。無意識に、即答してしまっていた。というか、食い気味に答えてしまった。思わず、食いついてしまっていた。少し前に『あまり関わらない方がイイ』と思ったのに、脊髄反射的に食いついてしまった。しかし仕方がない、相手は美少女なんだから。更にいえば、彼女は自称クソビッチだ。クソビッチの美少女と友達になるということは、それはつまり・・・。


 あぁ、もう! 俺の高校生活、バラ色かよ!! 食いついちゃうぞ!!


 そんな俺の欲望のことなど知るよしもない美少女は、なんとも嬉しそうに無邪気な笑顔を見せる。


「ほ、本当ですか!? ありがとうございます」


 いやいや。こちらこそ、ありがとう。


「じゃ、じゃあ・・・。これから、仲良くして下さいね」


「う、うん・・・」


 仲良く? 仲良く・・・、なにするの? ナニをするの? クソビッチだから。




 その後、自分の左隣に着席した女子生徒にも、美少女は挨拶をしていた。例のごとく、『ワタシは、完全なクソビッチです』と。


 いやいや。そのアピールは女子にはしなくてイイんじゃないのか?


 そんな疑問に答えるかのように、挨拶をされていた女子の顔は引きつっていた。


 まぁ、そうなるよな・・・。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年11月30日 07:10
2024年12月7日 07:10

俺の隣にはクソビッチがいる @JULIA_JULIA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画