第4話:誕生日のプレゼント。

跨線橋こせんきょうからダイブすることをとどまった向日葵ひまわり

アパートに連れて帰ったアフルレッドが言った。


「向日葵ちゃん・・・僕のことはアルって呼んでくれていいから、そのほうが

短くて呼びやすいでしょ?」


「分かった、アル」

「そうだアル、私、明日とりあえず学校に行ってみるから・・・」


「大丈夫なの?学校行けるの?」


「部屋にいると誰かさんがセックスさせろって迫って来たら困るし、何かして

たほうが気がまぎれるから・・・」


「分かった、明日は向日葵ちゃんの誕生日だから学校から帰ったらお祝いしよう」


「ほんとに、まじでなんで私にそんなに親切にしてくれるの?」


「言っただろ、向日葵にちゃんと向日葵ちゃんの生パンツに一目惚れしたって」


「あ、そんなこと言ってたね・・・でもね〜生パンツって・・・」


次の日、向日葵はアルをアパートに残してなんとか学校に行った。

淡々と授業を受けて可もなく不可もなく、なんとかアパートに帰ってきた。


「ただいま、アル」

「アル?」


返事がない・・・。


学校から帰って来たもののアルフレッドの返事も聞こえなければ姿も見えない。

私の面倒見るのに疲れちゃって出てったのかなって向日葵は思った。


「別にいいけど・・・死神になにか期待するほうがおかしいんだよ」

「でもお誕生日祝おうって言ってくれたのに・・・」


なんだかんだ言いながらでも向日葵が今頼れるのはアルだけだった。

結局その晩、アルは帰ってこなかった。


そして次の朝になってもアルは帰ってこないまま・・・。


「自分の世界に帰ったのかな?・・・いなきゃいないでちょっと気になるかな」


今日は土曜日だから学校は休み。

向日葵は今日、自分の誕生日だって分かってたけど、ひとりでお祝いをしよう

って気にはならなかった。

そう言えばアルが言ってた・・・私の誕生日にプレゼントが届くって。


そのことが、少し気になってなにが届くんだろうと思いながら時間を過ごした。

結局夕方になってもアルは帰ってこなかった。


「やっぱり誕生日、ひとりぼっちなんだ・・・」


向日葵はため息をついた。

だけどまた跨線橋からダイブしようとはもう思わなかった。


「どうかしてたんだね、私・・・正常じゃなかったんだ」


そして6時を過ぎた頃、向日葵の部屋に荷物がひとつ届いた。


宅配の人も大汗をかくくらいの大きさのダンボール箱。

向日葵も手伝って部屋までズルズル引っ張って運びこんだ。


「こんな大きな箱、なにが入ってるんだろ?」


そう思って向日葵はとりあえずダンボールを開けてみることにした。

ガムテープを剥がして、蓋をカパッと開けてみた。

そしたらいきなりだった。


「お待たせ!!向日葵ちゃん・・・お誕生日おめでとう」


そう言った人はパーンってクラッカーを鳴らした。


箱から上半身を起こしたのは、なんと小鳥遊 涼介たかなし りょうすけその人だった。


「はい、向日葵ちゃん、お誕生日の花束〜」


「あ、ありがとう・・・え?うそ涼介?・・・涼介よね・・・でもなんで?」


「向日葵ちゃんの誕生日にプレゼントが届くって僕、言ったでしょ?」


「僕?・・・僕って?・・・うそ、まさかアル?」


「ご名答」


「あなた、なに涼介になってるの?・・・どう言うつもり?」


「そう言うつもり・・・」

「向日葵ちゃんに喜んでもらうにはこれしかないと思って・・・」


つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る