第16話 皇后の帰還
――――後宮。
「帰って来たわね」
「あぁ、そうだ」
ルーに後宮に送り届けてもらえば、私の帰りを待っていてくれたみなが歓迎してくれる。
泣きながら私に抱き付くミア、無事で良かったと涙してくれる
ウーウェイもホッとしたように『お帰りなさい』と言ってくれて、あの時一緒に鍛練していた武官たちもわぁわぁと泣いて喜んでくれて。この場所も、すっかりホームみたいになっちゃったわね。本来なら殺伐とした欲望渦巻く女の修羅場……だったのは昔の話か。
「セナの剣が砕けて俺の剣が共鳴してな。何事かと駆け付ければ、まさに後宮武官たちが一斉蜂起しそうな勢いだった」
ルーがそう告げれば、武官たちが恥ずかしそうに口ごもる。ほ……蜂起って。でもそこまで私のことを思ってくれるだなんて、いい武官たちに恵まれたわね。彼女たちにありがとうを伝えれば、再び感涙の嵐であったが。
「あ……そう言えば剣……ごめんなさい。高いものよね……?」
「そんなのはどうだっていい。セナが無事だったんだから」
「ルー……」
「やれやれこの妹は……いつのまに成人男子用の剣を折るようになったんだか」
グイ兄さまが呆れたように告げる。
「ちょっとグイ兄さま!折ったのは私じゃなくてルン……!」
そう言えばルンはと言えば。あの誘拐の場に居合わせた武官たちは当初ルンの姿を見て警戒したのだが。
「ルー、スキ!……※※※スキ!」
何かそう言いながらルーの周りをパタパタしたり抱き付いたりしている様子やルーが気にもしていない様子に、警戒心がだいぶ薄れたようである。そしてルンがおもむろに私を指差して告げる。
「セナ!……※※※、スキ!」
そう告げれば、ルーがいきなり真剣な眼差しとなりルンに告げる。
「※※※……※※」
「……っ!」
何だかルンがショックを受けてないかしら……?
「……※※※、セナ」
「何かしら」
ルンがおもむろにこちらを見る。
「セナ、ルーがスキ!」
「よしよし、イイコだ」
いや、ちょっと待ってルー!?一体ルンに何を教えたの!?いや確かにルーのことは……好きじゃないと言ったら嘘になるが。そんなストレートに……。
「しかしこの棍……」
グイ兄さまがルンの棍をジーッと見る。
「今度こんなのが来たら一溜りもない。セナ、お前は北部の工房に剣を注文しなさい」
「……え……。その、実家の愛剣を取り寄せてよければそれでも……」
後宮に持ち込めるのなら愛剣を持ち込もうとも思ったのだが、妃が剣を持ち込んだら何か別の意味に取られるかもと思い身ひとつで来たのだ。グイ兄さまの場合は持たせない方が危険だが。
「だが折ったのは双剣なんだろう?弁償代を払うのなら、北部から同じ本数でそれ以上のものを納めなければ北異の沽券に関わる」
「へぁっ!?」
そ……それは確かに……そうだが。万が一お父さまたちの評価が落ちればグイ兄さまにお仕置きされるぅっ!!
ルーが特段罰を与えなくたって、周りの諸侯は皇帝陛下が罰を与えるまでもないその程度の存在と見なすだろう。誉ならまだしも……罰さえなく捨て置かれるのならお父さまたちの面目潰れである。それだけは阻止しなくては……!しかし双剣を注文するとは。普段使うのが片方だとしてもう1本は……?
まぁ、届いたら考えようか。
とにかく今夜は皇后の帰還祝いで宴会モードだしなぁ。私も主役として楽しむとしようか。
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