第22話 当主
「エルデールだと?」
「ザイレムの当主だ..... あの方は.... 恐ろしい方だ.....」
キニオスが語る
「なぜ?」
「俺は、あの方の怖さを知ってる.... エルデール様は魔術師だ..... あの方は異質な力を持ってる... まるで悪魔のような力をだ...」
キニオスが苦々しい顔をする
「まさか..... 貴族が魔術を?」
カリサがつぶやく。アルカンやオーティリア周辺国では、上流階級が魔術師を抱え込んでいることはあるが、貴族自身が魔術を扱うことはほとんどない。国境を超えて広がるアズラク信仰では、魔術全般は卑しく穢れた術とされていた。
「あの方は、異質だ... 恐ろしい方だ.....」
キニオスの言葉が響く
「他に知りたいことは?」
カリサが2人に聞く。
「ここから北に数日の距離にあるザイレム領に近いボラの村は知っている?」
ユリアが聞く。
「ボラ...?いや知らないな」
「不思議な力を持った巫女がいる村よ。」
「巫女?...あぁ、何年か前にエルデール様がその力に興味も持っていた」
「確か間者が送られたはず....。しかし、戻っては来なかったと聞いている」
「その間者は誰の配下で、なんと言う名前なの?」
「....いや、俺はそこまでは知らない...」
「そう....」
「なぁ、もういいだろ!俺は助けてくれ!」
「そうね。傷つけてごめんなさい。治療をしましょう」
そう言ってユリアは手当を始めた。
「どうせ殺す相手じゃないか?」
カリサが聞く。
「両目を潰されてはもう何もできないわ。助けてあげましょう」
そこにラシャが戻ってくる。
「どうでした〜?」
「エルデール・ザイレムは魔術師だそうだ。裏の顔を調べる必要があるな」
カリサが答える。
「貴族が魔術を!?それはまた〜......。もしかするとアズラク信仰の教権地域以外の出身者ですかね〜?でも、それだと長年続くザイレム家の当主であるはずがないですね〜」
「それで調査隊はどうするんだ?」
「隊長さん、調査は打ち切って帰っていただけますか?」
ラシャがキニオスに聞く。
「あぁ、もちろんだ。俺は国に帰る」
「もう来ないでもらえます〜?」
「俺は来ない!しかし、どうせエルデール様の命令で調査隊はまた来るさ!」
キニオスをテント近くで解放し、調査隊の撤退を見届けてから4人はミドスに帰った。
ラシャとともに、オリスたちもギルドに報告を行った.....。
「エルデールが魔術師だと...?」
ギルドマスターが驚いた
「まさか貴族が..... やはり、ザイレム家には何かあるのかもな...。アルカンの辺境貴族ではあるが元を正せば今の王族に繋がる血筋らしい。そのため、中央の政権に戻りたいところがあるのだろう。一方ではるか遠方のモルグラスの商人がザイレム領には頻繁に出入しているらしい。モルグラスの商人に化けた他国のものかもしれないが....。」
「モルグラス連合王国だと厄介ですね〜。」
「そうだな。あそこは....」
「では、エルデールは魔術師として調べていくとしましょう〜」
ラシャとギルドマスターが頷く
「オーティリア公国は動いてくれるのか?」
カリサが口を挟む。
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