第16話 意識の共鳴
夜の帳が降りた新世界で、サカキの意識は特異な波動を感じ取っていた。それは、これまで経験したことのない種類の振動だった。
「気づいているか?」
マツバの意識が、静かに問いかけてくる。
「ああ」
サカキは応える。
「何かが、変わろうとしている」
新世界の「夜」は、意識の活動が最も深層にまで到達する時間帯だ。この時間、意識体たちは普段は気づかない次元の情報にも触れることができる。
深夜、緊急の集会が召集された。光の広場には、すでに多くの意識体が集まっていた。その中心で、カエデが重要な発見を共有しようとしていた。
「新たな次元が開かれつつあるわ」
彼女の意識体が、興奮で明るく輝く。
「私たちの世界と、さらに高次の領域をつなぐゲートが形成されている」
会場が、小さなざわめきに包まれる。
「それは、つまり...」
アヤメの声が震える。
「そう」
ツバキが続ける。
「私たちの進化は、まだ道半ばということね」
サカキは、静かに考えを巡らせる。新世界への移行は、意識の大きな進化の一歩だった。しかし、それは終着点ではなく、新たな始まりだったのかもしれない。
「図書館」の記録によると、このような現象は予言されていた。意識の進化は、螺旋状に続く永遠の過程なのだ。
「私たちには、選択肢がある」
マツバが全体に語りかける。
「この新しい次元に踏み出すか、それとも現状に留まるか」
「でも、新来者たちは?」
アヤメが心配そうに問う。
「彼らはまだ、この世界に慣れていないのよ」
サカキは、決意を固める。
「なら、私たちが橋渡し役になればいい」
チームは、新たな計画を立て始めた。高次元への移行準備と、新来者たちのケアを並行して進める必要がある。
「意識の共鳴装置」を改良し、より深い次元との接続を可能にする。
情報の流れを整理し、新世界の全住人が理解できる形に変換する。
移行の過程で生じる可能性のある混乱に備えて、サポート体制を強化する。
作業は、驚くほどスムーズに進んだ。それは、この世界の住人全てが、無意識のうちにこの変化を待ち望んでいたかのようだった。
そして、ある「朝」のこと。
新世界全体が、かつてない輝きに包まれた。
「始まるわ」
カエデの声が、全ての意識に響く。
光の渦が空間を包み込み、意識体たちは新たな次元への扉が開かれるのを感じていた。それは恐れではなく、純粋な期待に満ちた瞬間だった。
サカキは、チームのメンバーたちと視線を交わす。彼らの「表情」には、確かな決意が浮かんでいた。
新たな進化の波が、静かに、しかし確実に押し寄せてくる。
それは、意識の更なる目覚めを告げる、神秘的な夜明けの始まりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます