第2話 入院


 熱は、39度。頭はボーッとしている。何と言うかキツくはないが、ダルイ感じだ。

 それは、突然の明け方に起こった。


「たぶん、私はすぐまた眠っちゃうから、大樹は普通に仕事に行ってね」


 アレード発病して熱のある者は、その間大半が眠って過ごす。たまに24時間以上起きない者もいるが、熱が引けば、体に異常は無い。こういった患者をずっと診てきたのだ。


 そして、私はいつの間にか眠ってしまい、目が覚めたのは、午前3時だった。


「朱里? やっと起きたか、心配したぞ、もう大丈夫なのか?」


 まだ、私は寝ぼけていたのか、ボーッとしていた。


「あ、大樹。おはよ、今何時? 会社は?」


「もちろん行ってきたよ。夜中の3時だ。それより平気なのか?」


「えっ? 3時? あれ私はどれくらい寝てた? まさか、1日以上じゃないよね? 今日何日?」


「俺が仕事行く前に寝ちゃってそれから起きて無かったとしても24時間は経ってないよ」


 そう言うと彼は、水と体温計を持ってきてくれた。私のおでこには、アレード専用の熱を冷ます湿布が貼られていた。

 夜中3時まで起きて看病してくれてたんだと実感し、ボーッとしながらも幸せを感じていた。


「まだ、39度あるじゃないか! もう一度寝てな」


「……んー、お腹すいたー、何か作ってー」


「ああ、わかった。お粥とかでいいか?」


「もー、何年私の彼氏してるの? アレードは普通に何でも食べれるよー。んー……、ラーメンとチャーハンが食べたい」


「そか、ごめんごめん。了解」


 大樹は、嫌な顔一つせずに冷蔵庫に向かった。

 それをボーッと眺めていた私は、どんな前世の記憶がとかよりも、体はダルイのに大樹に感謝しかないとそんな事を考えていた。


「ダッシュでコンビニ行って来るね」


「夜中だし、そこまではいいよー」


「いいから、いいから。他に欲しい物ある?」


「じゃあ、プリン。……ごめんね、ありがとう」


 それから、4日が経過し、まだ熱は引かない。


「朱里ー、そろそろ発熱してから5日じゃないのか? 俺有給とったから一緒に病院行こう」


「あー、うーん。そうかも……、ちょっと私

の病院に電話してみる」


 そして、自分の勤務先の病院に入院する事になった。

 まさか、私がここに寝る事になるとはなぁ……。やっぱ考えちゃうよなぁ、前世の事……。どんな人だったんだろ?

 人の記憶が戻って来る人は300人に1人と言われているが、ここから退院する人は、ほぼほぼ前世の人の記憶を戻して行っている。私の予想では100パーセントだ。中には人の記憶が無いと言って退院する人もいるが、何らかの事情でその記憶を隠してると私は思っていたからだ。

 

「朱里ー、久しぶりー、元気ー? あはは、入院して元気はないかー……」


「だね、ダルイよ。やっと患者さんの気持ちがわかったって言うか……」


 この部署唯一の同期の立川茜たちかわあかね、である。彼女は同期だったが、この部署に来たのは去年から。


「さっき一緒に来てたの同棲してるって言う彼氏でしょ? 前にチラッと見た事あったけど、やっぱりイケメンじゃん! いいなぁー、いつ結婚するのー?」


「ありがと、早く仕事戻らないとチクッちゃうよー」


「もー、わかったよー。まあ、どんな前世だったとしても友達でいてよ。仕事戻るね」

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