第2話〜優しいお父さん降臨〜

「ただいま」

 と声が聞こえた。

 多分父親……えっと…名前忘れた!

 あとすごいイケボ。

 凄いタイプの声だ。

「イルマ、回復薬買ってきたぞー。起きてるか?」

 回復薬!

 ファンタジーだと総じて一瞬で傷が治るけど、あれ仕組みどうなってんだろうか。

 えってか私に対してのものだよね。

 どうして回復薬なんか買ってきたんだろう?

 そんなことを考えてるとお父さん(と呼ぶことにした)と目が合った。

「イルマ!」

 そういうと抱きついてきた。

 あぁ、温かい。

 死ぬ前(仮定)…ってかもう死んで転生したってことでいいよね。

 死ぬ前に感じていた寒さとは真逆の包み込まれるような温かさがある。

「大丈夫か!?どこか辛くないか?」

 何のことだろうか。別に元気ピンピンなのだが?

「えっと…大丈夫だよ!」

「そうか…よかった……よかった……」

 そう言ってだいぶ泣きそうになっていた。

 とりあえず状況を知りたいので尋ねてみる。

「何かあったの?」

「イルマ…?」

「ん?どうしたの?」

「あ、いや、なんでもない」

 やばい、不信感を持たれてしまったか?

 私はイルマの記憶も持っているし別に乗っ取ったってわけじゃないけど、経験は元の私の方が多いからな。今もこうして死ぬ前ベースに考えてる。

「うーんと、そうだな。イルマは今まで熱が出てたんだよ。頭あっつくなってたでしょ?」

 ほ、よかった。別に大丈夫そうだ。

 あと私熱なんて出てただろうか。今までの記憶が結構曖昧だからその期間に出てたのかもしれない。

「うーん、どうだったかなぁ」

「それにしてもイルマ、なんかいつもより頭良くなったか?」

 !?

 バレている…だと…

 正直に白状した方がいいのか…?

 えっと、えぇっと…

「イルマ、どうした?」

「あの、その、気づいてたの?」

「そりゃ気づいてるさ。いっつもイルマを見てる俺が気づかなくてどうする」

 す、すげえ。私ならすぐ指摘しちゃう自信あるね。

「お父さん…うぅ…」

 しかもどうしてか泣き始めてしまった。

「大丈夫だぞ。イルマは、いつでもイルマだ。次からは最初から言ってくれよ?俺も心配なんだ。」

「うん…お父さん」

 今泣いているのは…その、あれだ。

 私のイルマの部分が出てるだけだ。

 えーっと、ほら、私という記憶がいきなり入り込んできたらそりゃ不安になるでしょ。

 あーあー、相当泣いてて私も悲しくなってくるよ。

 そりゃ合体?してるから当たり前だろうけどさ。

 それより言い訳考えないと。

 いくら信じてくれそうとはいえ異世界で死んでこの体に記憶(魂かもしれない)が来ましたなんて言えない。

 ええっと、ああもう。

 泣きそうでうまく考えがまとまらない。


 大泣きした。

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