第13話 まさか

 私は麻美さんと一緒に博多から快速電車に乗って、「戸畑」で電車を降りた。

 戸畑駅前から若松に若戸大橋を渡って走るバスの中には、私の実家のすぐ前で停まるバスがあった。

 私はそのバスに乗って、麻美さんと一緒に実家に帰った。


 私は、両親とおじいちゃんに麻美さんのことをあまり詳しく話していなかったが、三人とも麻美さんを一目見るなり、彼女のことを気に入ってくれた。


「わざわざ来てくれてありがとう」

 私の母親がそう言って、お茶と「栗饅頭」を出すと、

「有難うございます。お会いできて、良かったわ」

 と言って、麻美さんはほほ笑んだ。


「撮夫から、お父さまとお母さまを交通事故で亡くされたって聞いたけど、お気の毒に」

 私の母親が麻美さんにそう言った時であった。

 彼女がその事故の状況を話し出した。

 私も彼女から『両親を交通事故で亡くした』とだけしか聞いていなかったので、私は、その話に耳を傾けた。


「私が短大の2年生だった5月、私が授業を受けている時に警察から短大に電話がありました・・・『渡辺通り一丁目の交差点で、ご両親が軽自動車でスリップ事故を起こしてバスに衝突して、お亡くなりになりました』って」


 私は、まさかと思った。


 それは私の乗っているバスに軽自動車がスリップして突っ込んで、乗っていたご夫婦が死亡した事故と状況がまったく同じだった。そして、その現場の写真をいち早く撮ることができたので、私は事故担当のカメラマンに抜擢ばってきされたのだった。


「それって、もしかしたら、今から三年前の五月二十日の・・」

 私がそう言うと、麻美さんは、

「そうよ、あなたに言っていなかったっけ?」

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