修学旅行前日に告って振られた話。
外見至上主義
始まりは2021年。僕が中学一年生の頃。僕は剣道部に所属していた。
ある日、剣道部の同期の女子と同じ電車になった時から始まった。
その女子のことはこれからNと呼ぼうか。
ある日Nと同じ電車になった時、若かった僕は何を思ったのか、そのNに話しかけてしまった。ここから悲劇が始まってしまうとも知らずに。
その時は意気投合して、それからはなんだかんだで1ヶ月に一回から3回。一緒に帰る仲になっていた。
夏休みが終わる頃には向こうから誘われるようにもなっていた。多分その頃は普通に関係が良好だったのだろう。
だが、その関係が揺らぎ始めたのは中1の12月辺り。Nが一人の男子生徒を連れてきたのだ。その頃の僕は今の僕のように邪の思考に染まっておらず、純粋な思考であったので、新しい友達と思い、その男子生徒と仲良くなったのだった。
今思えば、その男子生徒は多分Nが僕を遠ざけるために連れてきたのだと思う。
その頃の僕は純粋な思考を持ったストーカー予備軍であったため、全く気づくことはなかった。
中学一年生の春休み、中2の一学期。その頃はNとは週2くらいで一緒に帰っていた。
確か中2の夏から僕は本当にやばくなっていったのだと思う。
中2の夏の終わり。その頃には僕は完全な純粋な思考を持ったストーカーと化しており、Nは自分のことが好きなのだと完全に思い込んでいた。
今考えてみると本当に気持ち悪いと思う。
その頃にはNと帰る時間をあえて合わせたり、駅で待っていたりしていた。これが本当のストーカーというものである。
Nに引かれていることにも気付かないで僕はそんな気色の悪い行動ばかりしていた。
それから文化祭期間。僕は文化祭初日、Nに文化祭一緒に回らないか?とLINEで誘ってみた。
2時間の沈黙の末、既読がつき、OKのメッセージが送られてきた。僕はその瞬間、かなり舞い上がっていた。
今の僕は思う。あの時断ってくれていれば良かったのに。と。
多分Nの中では僕は自分についてくるストーカーであり、都合のいいおもちゃであったのだろう。多分文化祭回っていいと言ったのも多分友人と相談して、
「作者とかいうストーカー、ちょっとおちょくってみよう。文化祭一緒に回っていい。とか言ったらどんな反応するかな?」
レベルの思考だったのだろう。その判断が本当の化け物を生み出すとは何も知らずに。
今考えてみれば文化祭で一緒に回っている時、多分Nの友達がNと一緒に回っている僕をみて、多分笑っていたのだろうと思う。僕は多分彼女達のおもちゃであったのだろう。
それから二週間後、剣道部で一番仲の良い奴(S)に、
「お前Nのこと好きなの?」
と聞かれた。その頃、思考だけは純粋なストーカーであった僕はSにうんと答えてしまった。後から聞いた話によると、SはNに僕のことについて頻繁に相談していたのだという。
それから僕はそのSの「サポート」という名のからかいを受けた。
そして時は京都への修学旅行前日。僕はSに修学旅行前日にNに告白してみないか?と唆された。
Sの説得を受け、僕はNにLINEで告白。Sは僕にLINEの方が成功率が高いという嘘を吹き込んでいた。
それから僕はLINEで「ずっと前から好きでした。」とメッセージを送信。それから何を思ったのか、僕はもう一度同じ文面のメッセージを送信したのであった。今ではその僕の行動は『二回行動』と言われている。
そしてそのメッセージが送られてから3時間後。「ごめんなさい」というメッセージが送られてきた。
ちなみに僕の送った文面はNにスクリーンショットとして撮られて、学年中にばら撒かれたのは別の話。
それから修学旅行当日、Sに「残念だったな」と笑いながら慰められた。
そして時は進み二週間後。僕達剣道部は剣道についての発表をするため、パワーポイントでスライどを作ってほしいと顧問から頼まれ、剣道部全員で作業に臨んでいた。
そして僕が告白をしたという話が始まった。
剣道部全員がその事実を知っていたのだった。
その中でこの一年半の事実が明かされ、Sは、
「今までNからお前が気持ち悪いって相談を受けて大変だったよ。にしてもお前すぐ騙されるなー」
と言い、もう一人の剣道部員(M)は、
「そういえば、Nのことどこで待ち伏せてたの?Nからお前の告白のスクショが送られてきてさ、なんかお前のこと気持ち悪いって。それに作者のこと、女子の間では『キモメガネ』って呼んでてさ、他にも『ストーカー』だとか何だとか……
Nはもう話しかけないでって……」
その後、僕のスクショは学年中で広まり、中1の頃からの僕と本当に仲がいい友達以外は僕のことを侮蔑の対象とするようになった。
委員会の活動で女子と一緒になった時は、「気持ち悪い。話しかけるな。」と言われたり、何かの発表で前に出された時は「お前ダサいよ。」、「本当、キモいなー」とか言われたり……
そんな生活をしている時、ある日僕は、「モテる男がやっている7つの方法という動画と出会った。その動画では主に、
・高めの美容院で髪を切る
・スキンケアはしっかり
・服はマネキン買い。メガネはコンタクトに。
・動けなくなるまで筋トレをしろ
・一日一食
・香水
・生活リズムを整えよう
の7つが紹介された。
僕はその日からそれを全て実践した。ボクシング、空手、テコンドーなどを独学ではじめ、1日一食、美容院に行くなど。
その努力も実ってかそれから1ヶ月後、一部の人を除いて嫌がらせはなくなり、女子から『キモメガネ』と言われることもなくなった。何人かの女子からは向こうからラインが来るようになり、人生がうまくいき始めた。
それから半年後、Sと一緒に帰っている時、急に「ごめんな」と言われた。僕は告白の件についてはもう完全に許していたので、「別にいいよ」と言った。だがしかし、その「ごめんな」は告白の件について言われた言葉ではなかった。
バスから降りると、そこにはNがいた。Nはこちらへと近づいてくると、
「その……色々とごめんなさい。後、一緒に帰らない?色々と話したいことがあって……」
と言った。その時の僕はNのことが怖かった。またやり玉にあげられるんじゃないか、また「キモメガネ」と言われるんじゃないか、またいじめられるんじゃないかと。
僕はその時、「先約がいる」という理由をつけて逃げた。
その時の僕にとってNは恐怖の対象であった。
そして僕にとって女子と一緒に帰るということは完全なトラウマとなっていた。
それから2年後。剣道部をやめたり、彼女ができたり、その彼女を寝取られたり、とさまざまなことがあった。彼女が寝取られたことで完全に女性への恐怖心がMAXになっていた。
僕は今、Nに対して感謝している。彼女がいなければ、僕は今のように変われていなかったから。多分、彼女がいなかったら僕はまだ、「キモメガネ」のままだっただろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます