第36話 状況把握
店や診療所を破壊され、アワユキは感情をかき乱される。しかし、カルカンやサイプレスと会話することで徐々に落ち着きを取り戻した。
サイプレスは、アワユキが落ち着いたことを確認して、状況報告を始める。
「二人がビル街に避難した後なんだが、色違いの浮遊ロボたちがガツガツ大きな音を立てて衝突を始めた。その衝突は各階層で起き、競い合うようにして飛び交いながらぶつかるんで、曲がり角にある建物ほど損傷が激しい。そのうち低層階に集まりだし
たまに見ていた黒い浮遊ロボが人参色を引き連れて、地下の機械化石ノジュール発掘現場を拠点にした。オレっちの若い衆が確認しに行ったが、やはり人間に対して襲ってこない。今だけかもしれないな」
「・・・目的がなんなのか察しもつかない」
「管理者自体の目的は、人間よりも機械文明を優位にしたいから、機械文明たちをより知的にして、くすんだ緑色たちを淘汰したいんじゃないかな」
「なるほど、アワユキちゃんは何度も管理者たちと話しているから、そう言えるんだな。ただ、ラクガンって奴だけじゃなくて、他の管理者も同じ行動をするってことか?シルコが機械文明たちの色を変えるみたいな」
「他の管理者たちはラクガン捕獲をジブンらに頼んできたので、それはないはず。『ラクガンの独自行動』って言ってたんで」
「カルカンが言ったように、アタシたちに黒色の浮遊ロボを破壊して、ラクガンを元に戻ったら捕まえる仕掛けがあるそうです」
「しかしよぉ~、アワユキちゃん今の状態で作業ロボ乗れるのか?カルカンが乗ったらどうなんだ?」
「試運転を見たんすけど、ジブンよりアワユキの操縦が安定してます。それと身長差というか、手足の長さでレバー・ペダルの操作に差があります」
「アタシ個人として、やり返さないと納得できないので、酔い止め等を飲んで対応したいと思います」
「・・・酔い止め等の"
「えぇ、調合した薬を飲んできます」
アワユキは店内に入り、ビル街で買った薬草と合わせて飲むものを薬草棚から物色し始めた。
サイプレスとカルカンが外で待っていると、カジャクが近付いてきた。
「様子はどうだ?うわぁ、診療所は全壊か。アワユキは?」
「今、薬草飲んでるところだ。どうにか落ち着いてもらわないと、操縦できねぇし」
「それじゃ、アワユキが戻ってきたら、もう行くのか?」
「そうだな。地下に陣取っている黒いヤツを破壊するのは皆の共通意見だから、早く手を打つのがいいだろう。あ~、そうそう、カジャクの店は被害どうなんだ?」
「シャッターが壊れてるから、ありゃ~交換だな。他には、振動で物が落ちてるってくらいだ。やっぱり、こういう曲がり角にある建物は影響を受けやすいだろう」
「これ以上の被害を増やすわけにはいかない。対抗できる者が集まって一斉に抑え込まなきゃな」
アワユキは店内で調合薬を飲んでいる。酔い止め、疲労回復、痛み止めだが、一般客に出すより純度の高いものを自分用に調合。その飲んでいる姿をカルカンは、ドアの隙間から覗いている。
「おーい、カルカンよ。心配なんだろうが、覗くのは、いい趣味とは言えねぇぞ」
「うるさい、カジャク。アワユキが変なモノ飲んで、"ウキョキョキョッ"って叫びだしたり、妖精を追いかけたりしないか心配なんだよ」
「ビル街にはそういう薬出回ってんのか?怖ぇな」
「こら、カルカン!聞こえてた!その手のキノコを調合したものをスープにして飲ませてやろうか?」
「アァ~ワユキさ~ん、お車の準備が整っておりますので、地下へ参りましょうか~」
アワユキは、妙な心配するカルカンの頭を鷲掴みにした。その姿を見て、カジャクとサイプレスはアワユキが地下へ行けるだろうと理解し、それぞれが車両に乗り込んだ。カジャクは小型トラック、サイプレスはターレットトラック、アワユキとカルカンはオート三輪に乗り込み、車両用通路から地下へ下りていった。
先導するサイプレスに合わせ、慎重に地下に到着すると、以前の景色と違っていた。横穴等、機械化石ノジュールの発掘跡があったが、壁の役割をしていた岩石や土砂が削られ、ひとつの巨大な空間となっている。アワユキたちは、隠れて様子を見ながら接近することを想定していたが、出鼻をくじかれた。
通路沿いの壁に停車し、何かが見えるので凝視すると、人参色の浮遊ロボが大量に浮いる。また、少し離れたところに作業ロボが数機いるようだ。サイプレスが手招きするので、車を降り、皆が集まる。
「普段、発掘作業している者たちが作業ロボに乗って、一定距離を保って構えている。人参色の連中は奥にいる大きい機械を見せないよう壁の役割をしてるんだ。だから、黒い浮遊ロボがどこに潜んでいるか、誰も見ていない」
「そうか~、オレはここから作業ロボに乗り込んで、あっちの作業ロボに合流する。サイプレスとアワユキたちは、車両に乗って付いてきて危険なら退避。そして、住民に崖の街から避難するよう伝える。そんな感じでいいか?」
「了解。アワユキは鳥型作業ロボに乗り込んで、モーター温めつつ待機だね」
「ん、分かった。もう乗り込んどく」
カジャクは二足歩行の人型作業ロボを起動し、小型トラックから降りて、ウォォンガシャンと音を立てながら一歩ずつ歩みを進めていく。その前をサイプレスが歩きやすい場所を確認しながら、ターレットトラックで行き、最後尾をカルカンが行く。
先にいた作業ロボの集団まで行くと、人参色の作業ロボが完全に壁となって、何か隠していることがはっきりと分かる。
サイプレスが近くにいる作業員に声をかける。
「状況はどうなってるんだ?」
「あの壁のままですよ。こっちに何か仕掛けてくるわけでもなく、近寄ると壁が近付いてきて、離れると壁も下がる。何したいのか、さっぱり」
その会話を聞いて、カジャクが言った。
「あのさ~、オレが1機で行ってもいいか?その後を集団で付いてきてもらい、黒い浮遊ロボを見つける。あの壁になってる浮遊ロボを崩さないと、どうにもならないんだよな~?」
「カジャク、さっきの歩く速さで何が出来るんだよ」
「それじゃ、サイプレス、どういう計画であの壁崩すんだ?」
「・・・それが浮かばないんだよ。他の者も同じなんだけどさ、壊さなきゃいけないのは分かってるけど、作業ロボをどういう並びで向かおうかって考えると、ボーっとしてしまうんだよ」
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