第32話 新たな対策案
薬問屋ビルで煎じ薬を飲んでいた所、アワユキたちを探していたかのように現れた管理者ゼンザイとシルコ。管理者は、ラクガンの捕獲を依頼してきた。
アワユキはゼンザイにラクガン捕獲を無理な話と返答した。
「ま~、確かにアタシの店や隣の診療所を壊されたので、黒いヤツをどうにかしたいですよ。飛び回る物をビターン!て、叩き潰すのは無理だし、カルカンのオート三輪でぶつけても、車の方が壊れるでしょ」
「無理無理。ジブンが運転したところで、装甲付けても壊れるっしょ」
「発掘現場で見た作業ロボでは、どうにもならないのかい?」
「シルコさん、動きが違いすぎますよ」
「アワユキ、それ違うぞ~」
「なんでよ、カルカン」
「崖の街にある作業ロボが旧型。ウチのアクマキ車両整備は、何年も前から改造と改良を加えている。ちょっと電話してくる」
何かを思い出したかのようにカルカンは、店の電話をかりている。
「管理者の方々って、作業ロボのような人間が乗り込めるものを用意するってのもダメなんですか?」
「駄目だ。提供したところで、我々が関わった場合、設計ミス等で完成しない様、相反する力が働いてしまう」
「ボクは何度か試していたけど、設計主任から淡々と叱られたねぇ」
カルカンがテーブル席に戻ってきた。
「聞いて、アワユキ。対抗策ある!浮遊ロボを破壊可能!」
「え、そうなの?」
カルカンの話を聞いて、ゼンザイとシルコは席を立つ。
「どうしたんすか?お二方」
「我々が関わると、その対抗策に関連するものが壊れてしまう可能性がある。念の為、具体的な話には立ち入らないようにする」
「ボクらは、先に崖の街で潜んで待っている」
そう言うと、ゼンザイとシルコは外に出て行った。
「はぁ、勝手だねぇ」
「厄介な存在にアタシも関わっちゃてさ、望んでねぇっての!」
「あの連中がいないなら、ウチに帰って続きを話すよ」
「了解。ほら、カルカン、ヘルメット忘れないように」
アワユキとカルカンは、アクマキ車両整備に戻り、事務所に入った。
その2人を無事帰り着いた事を確認する姿が、アクマキ車両整備近くのビル屋上にあった。
「ラクガンの息のかかった機械たちが、あの2人に何かしてくるかと思ったけど違ったか」
「シルコよぉ~、さすがに機械文明は人間に危害を加えないって仕組みになってるから、そこを書き換えないでしょ」
「しかしゼンザイ、その仕組みは我々にも関係するから、人間たちに頼む事になってるんだぞ」
「『人間は、戦うという発想をもたない』『機械文明は、人間に危害を加えない』『管理者は、見守る事しかできない』管理者は以前違ったのにね。管理者は見守るものって言い出したのはラクガンなんでしょ?」
「そうだ。ゼンザイが管理者になる前の話。いずれ自分の欲を吐き出すために、そういう細工をしたんだろうな」
「ボクが管理者になる前から考えてたなんて、長い時間、計画してたわけか」
「そのせいで、人間たちに頼むことになった。実際の意味は理解出来ないからな。人間が機械文明に戦いを挑む、争いを起こすとも取れる。しかし、ラクガンを取り込んだ浮遊ロボをそのままにしている方が、火種が大きくなり、紛争になる。我々が望むのは、自然環境と共に徐々に人間の割合が減ること」
「でも、ここ最近で出会ったあのお嬢さんと周りの人間は穏やかだ。思考の制限や取り除いた結果が活きている」
「それを踏まえて思うことがあって、人間の存続も、実は割合が保たれていれば、余計な争いが起きないのではないか、と」
「割合?人間が言う"善と悪"みたいなこと?」
「そうだ」
「あ~それねぇ、人間の思考だと違うんだよ。勝てば善、負けたら悪。歪んだ思想でも強大な力で抑え込めば、正しいとされてきた。だから、人間の思考に制限が加えられた」
「制限がかかっているが、管理者からの頼みは受け入れてくれて、機械文明に立ち向かってくれる・・・か。矛盾したことを人間にさせてしまうな」
「その分、ボクらが支えてあげることだと思うよ。同じ管理者の失態をね。お嬢さんたちは、『ラクガンを助けなきゃ』と思ってくれているはず」
「救助のための行動。そうだな、私利私欲の頼まれごととは、また異なる。はぁ~しかし、考えると腹が減るな。そこの屋台街ビル行こうか」
「え~、上層階にしてよ。下層は、すごく臭う」
ゼンザイとシルコは、屋台街ビル方面へ姿を消した。
アワユキとカルカンが帰宅し、事務所内に入ると、難しい顔をしたゲタンハがいた。
「おう、お帰り」
「ただいま」
「ただいま、戻りました」
「ちょっと座ってくれるか。カジャクが戻ってきたら、話するから」
5分ほど待つと、カジャクが髪をタオルで拭きながら、事務所に入ってくる。
「いや~、サッパリしましたよ。アレは気密性が高くて汗だくになるんで、長時間は無理ですね」
「カジャク、それを踏まえて、今から話し合いをする」
「待たせたね、話をしようか。まず、崖の街から連絡があった。浮遊ロボの衝突が激しくなり、とばっちりを受けた建物が増えつつある。相変わらず、人間や建物への直接傷付ける行為はないそうだ。ただ、黒くなった浮遊ロボをどうにかしないと、崖の街が住めなくなるため、急ぎで作業ロボと一緒に戻ってきて欲しいと要請があった」
「それは、カジャクさんが作業ロボに乗って、取り押さえるってことですか?」
「いや、アワユキさん、あんたも乗るんだよ。人手が足りないからね。カジャクから聞いてるよ、操縦できるんだってね」
「一通り発掘作業が出来るから、大丈夫だろ、アワユキ」
「アタシが乗って何するんです?これまで岩どける程度ですよ。カルカンは操縦できないの?」
「ジブンの場合、修理した部分を確認する程度だもの。あと、操縦席って微妙に手足が届かない。小型化するには資金も必要なんす」
「ちゃんと考えてあるんだわ、アワユキさん。すでに改造したものがあって、カジャクがほぼ活躍するだろう。アワユキさんは、別の作業ロボに乗って、動き回ってくれれば、撹乱できる作戦」
「オレが人型ロボに乗り込んで、アワユキが鳥型の作業ロボに乗る」
「へ?あのダチョウみたいな足が逆関節になったやつにアタシが乗るんですか?」
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