駐輪場

あらひねこ

第1話

会社の同僚が「友達から聞いた話」という体で話していた内容の書き起こしです。

そのため一部文章的におかしな部分がありますが、書き起こしを正確に残そうという主旨のため、ご容赦ください。


以下書き起こしです。


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えっと、この話していいはかわかんないんだけど。


その人、家から駅までが遠いらしく駅まで自転車で行ってるらしいんですが、そこの駐輪場でたまに「見間違い」をするんだそうです。


視界の端に入ったものを何かに見間違えることってあるじゃないですか。虫だと思ったら糸くずだったり、猫だと思ったらビニール袋だったとか、そういうやつ。


ただその駐輪場の場合はちょっと変で、見間違いするときはいつもローファーと見間違えるそうなんです。女学生が履くような、黒や焦げ茶色のやつ。


それも特定の地点がローファーに見えるとかじゃなくて、雨水のしみ、誰かが落とした折り畳み傘の袋、そういう一見そうには見えないものも駐輪場だとローファーと見間違えるらしいんです。

まぁでも、だからなんだ、って話でそいつは気にせず使っていたんですって。


それがある雨の日。退勤後に駐輪場で自転車にまたがってスマホアプリに熱中してた時なんですが、駐輪場の電気が突然消えたんです。


モーションセンサーって言うんでしょうか、人の動きを感知して電気のオンオフをするシステムだったんだと思って、仕方なく腕をブンブン振ったところ、電気がついて。


そしたら真っ黒な人影があったんです。もう目と鼻の先ちょうど15センチぐらいのところ。

近すぎてもう声も出せなくて、なんていうかそれどころじゃなかった、みたいな。


髪の毛のだったりシルエットから女子高生っぽいな、と思った時にはまた電気が消えて、また真っ暗になっりました。


もう一度ブンブン腕をふってつけようとしたんですが今度はなかなかつかなくて、諦めてスマホのライトを使おうと下を向いたら、その人気づいたんです。

今まで見てきたローファーって、あの黒い人影のやつなんだーって。


そしたら真っ暗で何も見えないはずなのに、なぜか目の前に奇麗にそろった一組のローファーがあるって思ったらもう電気とか自転車とかどうでもよくなって逃げ出したって。


その時、めちゃくちゃに人の靴を踏んだ気が感触があって、それからもう、その駐輪場は使ってないって。


んでこの話の何が問題かって、これを聞いてから俺も最近見間違えするようになってるんだよね。

いまはまだローファーには見えてないんだけど、いつかローファーに変わるような気がしてて、やだなぁって。


それだけの話。

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駐輪場 あらひねこ @VelbetCat

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