第18話 空前絶後の大工事

 島は、温泉開発と旅館建設のための関係者で、手狭になった。


 仮設のキャンプ地には、多くの人間に加えて、オーク族、オーガ族、ゴブリン族、リザードマン族、悪魔族、ドワーフ族、エルフ族、スライム族、亜人、魔族、獰猛な魔獣に数体の像まで……


 種族も民族も多種多様、総勢、810名の人々が揃った。



 俺は、それらの人々の一番上に立って、大規模工事の指揮を執った。


「アリマ、ハインケル様が視察をしたいと、お手紙預かりましたよー♪」

「監督、この周辺の地盤が弱いらしい。どうする?四階建ては厳しそうだ」

「アリマ、休憩にコーヒー牛乳でもどう?」

「アリマくん、瓦ってのは、どれぐらいの固さなんだ?」

「手すりのデザイン、教えてください~」

「アリマ様、島の南方で、新たな源泉が湧きました。どういたしましょう?」

「監督、柱の感じ、どうでやんすか?」



 過労も過労……休む暇にも、新たな問題や、対応しなければならない仕事が舞い込んでくる。しかし、この多忙は、工事が順調に行われている証拠だと自分に言い聞かせて、今日も現場と小屋と村と王国本土と……東奔西走する。


 巨体のオーガ族やゴブリン族、巨人族が岩石や巨木を運び込み、手先が器用な人間、ドワーフ族が中心となって加工が施される。寸分の狂いも許されない、細緻な技が必要とされる工程だ。



 それから、スライム族たちが、加工済みの建材を包み込んで高所まで運び込む。屋根の上で待機していたドワーフ族や人間たちの技術者グループが組み立て、溶接、接着等をする。


 水辺での作業は、元来、湿地で暮らしているリザードマン族が。


 功労者たちの食事を用意してくれたのは、エルフ族と、村の人々。


 ドワーフ族たちや各種族の魔法使いたちは、建材に湿気耐性と塩害対策を施す。


 俺は、あまりの仕事の多さに殺されて、道端で倒れる。


 溶接作業の過程で発生した火災を、水竜遣いの人が鎮火する。



 紆余曲折ありながら、苦節、約1年……



 ついに、夢の、異世界温泉旅館が完成した。



……俺も、もう三十路みそじかぁ。

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